お店で裸足で遊び出した息子さん。周囲の目が気になり、いたたまれなくなっていた山田さんの心を救ってくれたのは、ある男性でした。

 

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世界はやさしく、 あたたかい~負けそうな私を立ち直らせてくれたできごと

3歳の息子には、特性があります。
小さい頃から、人見知り・場所見知りがとても激しく、外出するのがとても億劫でした。
夫や私の実家に行っても泣きまくり、「帰りたい」の連呼。支援センターに行って、私の息抜きをしようとしても号泣し、嘔吐……。月齢を重ねるにつれ、いろいろな困りごとが増え、健診では毎回引っかかっていました。

幸いにも2歳の頃に、とても素晴らしい療育施設にめぐり逢え、今はぐんぐん成長しています。でも、息子の頑張りや成長とは反対に、周囲の目を気にしてしまう私がいました。
泣き叫び、自分の意思を通そうとする息子。それを上手に収められない私。買い物をするのにも毎回ひと苦労。単身赴任の夫には頼れず、日々疲れきっていました。
裸足で走りまわったり、大きい声を出したり。でも、それを怒るとさらに長引く……。だったら終わるまで待つしかない。きっと周りは何で怒らないの? と思っている……。もう嫌、帰りたい。外出したくない。そんな日々でした。

ある日の買い物中、とても機嫌の悪い息子に普段の倍以上のいらだちを感じてしまい、険悪なムードになっていました。なんとかいらだちを抑えつつ、ようやくレジへ。すると突然、息子が「靴は履かない! 抱っこして!」と泣き始めました。裸足にさせて抱っこをすると、今度は床に降り、裸足のまま遊び始めたのです。
他のお客様が並んで待つ間、笑われたり怪訝そうな顔で見られたり……。逃げ帰りたい気持ちでいっぱいでした。
そんないたたまれない状態の中、突然、前に並ばれていた50代くらいの男性がこちらを振り向いたのです。私はとっさに「謝まらなきゃ!」と身構えました。すると、その男性は、
「お! 兄ちゃんかっこよかね! 裸足は気持ちよかもんな! よかよか、子どもは元気が一番!」
と大きな声で話しかけてくれたのです。 
息子はすぐに笑顔になり、周囲の方もにこやかなムードに……。息子は上手に気持ちを切り替えられ、おとなしくレジを待てるようになりました。
男性は笑顔でバイバイしてくれ、颯爽と帰っていかれました。たいしたお礼もお話もできずに別れてしまいましたが、息子は一生懸命、その男性に手を振り続けていました。
本当は他の方も嫌な目で見ていなかったのかもしれず、私が作り出した負の感情が、周囲の方を悪いイメージにとらえてしまっていたのかもしれません。
逃げ出しそうになる私の心を、見知らぬ男性が救ってくださいました。そして、行動や言葉に出さなくとも、見守ってくれていた方々がいたことにも気づくことができました。

今でも、息子が言うことを聞かず大変なときに恥ずかしいと思ってしまうことはありますが、以前よりも、その時間を楽しめるようになりました。
息子も成長中、私も母親として成長中。周囲の方に助けられ、支援されながら、私たちも成長し、経験を重ねたいと思います。これから息子が羽ばたく世界は、やさしく、あたたかい世界でした。

山田清美(熊本県・33歳・事務職)


 

「PHPのびのび子育て」2月号より

 

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本記事は、「PHPのびのび子育て」2020年2月号特集【子どもの「心の荒れ」は3・7・10歳で変わる!】より、一部を抜粋編集したものです。