自分さえ我慢すればいいと、心にフタをしていませんか?

 

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感情の対処にも役立つ自衛隊のルール

 

私は長年、自衛隊で数々のカウンセリングを行なってきました。自衛隊では、現場に出動したときに必ず言われる教えがあります。それは、「適切な道具を使いなさい」ということ。この教えは、感情に対処するときにもあてはまります。

 

「我慢する」「忘れる」だけでは心がすり減る

 

多くの人は、感情がコントロールできなくなると、「我慢する」か「忘れる」という方法で心にフタをしようとします。しかしそれは、ねじを外すのにドライバーではなく万能ナイフを使うようなものです。ドライバーを使えば最小限の力でスムーズにねじを外すことができるのに、万能ナイフではねじはつぶれ、ナイフも刃こぼれをして使えなくなってしまいます。

感情を整理するための「我慢する」「忘れる」という方法は、この例の万能ナイフのようなものです。人前で感情を爆発させないように、我慢や忘れることが一時的に有効な場面もあります。しかし、この対処法しか知らないでいると、二つの苦しみが生まれます。

 

感情を抑え込むと自信がなくなる

 

一つ目は、自信をなくす苦しみです。嫌な感情は、危険から身を守るために生まれます。「今すぐ逃げて!」「対応する準備をして!」と、せっかく危険を知らせてくれているのに、我慢して忘れようとすると、感情はますます声を張り上げます。すると、感情を抑え込めなくなり、「感情をうまくコントロールできない自分はダメだ」と自信をなくしてしまいます。

 

弱い自分がいてもいい

 

そのプロセスが「疲れ」という二つ目の苦しみを生み出します。力を振り絞って感情を抑え込むと、心身のエネルギーはみるみるなくなります。そして、「弱い自分は存在している価値がない」と自分をバッシングするようになり、さらに疲れてしまいます。

「我慢する」「忘れる」は、感情に対処する方法の一つであって、たった一つの方法ではありません。ほかにもたくさんの対処法があるので、自分に合った方法を見つけるようにしましょう。

 


 

「PHPスペシャル」4月号より

 

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本記事は、「PHPスペシャル」2020年4月号特集【すっきり! 気持ちを切り替える】より、一部を抜粋編集したものです。

 

【著者紹介】
下園壮太(しもぞのそうた)
1959年、鹿児島県生まれ。‚ 82年に防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊に入隊。心理幹部としてカウンセリングを担当。定年退官後はうつ、自殺予防、惨事対応、メンタルトレーニングなどのカウンセリングを行なう。『心の疲れをとる技術』(朝日新書)など著書多数。