子どもにとって本当に必要な「考える力」とは、どんな力でしょうか。それは、ただ単にテストで高い点をとる力ではなく、「勉強しなさい!」などと言われなくても、自分から進んで学んでいく力ではないでしょうか。


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「考える力」を育てるアプローチ

「考える力」と聞いて、具体的にはどんな力を想像しますか?
いずれ小学校に上がったとき、「テストの問題を解く力」も必要になってくるとは思います。しかし、それ以前に、「ものごとを自分で判断し、自分で学んでいく力」を身につけるほうが先決であり、それこそが、幼児期の子どもにとって最も大事な「考える力」なのではないでしょうか。
自分で考えて学べる子は、かしこくて発想も豊かです。素直で努力家で、親が「勉強しなさい!」などと口うるさく言わずとも、どんどん自分から進んで学んでいく力が備わっています。
そして、そういった力を生み出すのは、もちろん「脳」であり、脳医学から導き出した、子どもの「考える力」を育てるためのカギは、ずばり「好奇心」です。
「知ることが楽しくてしょうがない!」という状態になった子は、勉強を勉強とすら思わず、知識をどんどん吸収していきます。
ほとんどの子どもは、生まれながらにして好奇心をもっていますが、残念ながら、子どもの好奇心を生かしきれていない家庭も少なくないようです。
そこで今回、好奇心たっぷりの脳を育てるために提案したいのは、「図鑑を与える」「体験させる」「楽器に触れさせる」という3つのアプローチです。

その1 図鑑を与える

幼児期のプレゼントは図鑑で決まりです。図鑑は脳の言語野だけでなく、図形や空間を認識できる領域を同時に活性化します。脳のしくみを考えると、できれば3~4歳ぐらいまでに図鑑を用意してあげたいところです。
子どもが好き嫌いを判断する前から、そっと身近に置いておくのがポイントです。図鑑が身近にあるだけで、自然と「文字」への興味が生まれますし、子どもが「なぜ?」と聞いてきたときに親子で調べるようにすることで、コミュニケーション・ツールにもなります。
幼児期から、ことあるごとに図鑑を開くようにしておくと、小学校へ進学したときに勉強をすらすらと理解できるので、「勉強が得意」「学校が好き」という気持ちを育むことにもつながります。
子どもが図鑑に興味を示さない場合は、親が楽しそうに読んでいる姿を見せましょう。子どもは親のことをよく見ていますから、親が楽しんで読んでいると、必ず横からのぞいて読み始めます。
子どもがまだ読めなかったり難しかったりするところは、親がかみ砕いて説明しましょう。

その2 体験させる

図鑑でアゲハチョウを見つけたら、虫取り網を持って公園に探しに行く。公園でモンシロチョウを見つけたら、図鑑でモンシロチョウを探す。電車が好きな子なら、カメラを持って電車を撮りに行く。お花が好きなら、虫メガネを持って観察に行く......など、必要な道具を与えて、親子で実物に触れましょう。
最初はお母さんやお父さんに、「これは何?」「どうして?」と聞いてくるかもしれませんが、根気よく一緒に図鑑を開きましょう。やがて自分で調べるようになり、自ら学びを深めていきます。そのとき、本人は「努力して勉強している」とは思わないでしょう。
昆虫やお花などに限らず、たとえばクルマ好きのお父さんならモーターショーに連れていってもいいですし、家族旅行をする前に、行き先の歴史や文化について、子どもに説明できるようにしてから出かけるのもいいですね。
バーチャルの知識(図鑑など)とリアルな体験が結びつくと、子どものワクワクは大きくなり、「知ること」に喜びや楽しさを感じます。それが刺激となって、脳に大きな成長をもたらすのです。




「PHPのびのび子育て」12月号より


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本記事は、「PHPのびのび子育て」2020年12月号特集【「考える力」を伸ばす親、つぶす親】より、一部を抜粋編集したものです。

【著者紹介】
瀧 靖之 (たきやすゆき)
東北大学大学院医学系研究科博士課程修了。東北大学加齢医学研究所機能画像医学研究分野教授。東北大学東北メディカル・メガバンク機構教授。脳のMRI画像を用いたデータベースを作成し、脳の発達、加齢のメカニズムを明らかにする研究者として活躍中。1児の父。著書に、『「賢い子」は図鑑で育てる』(講談社)などがある。