豊田さんが妊娠したことを長女に伝えたら、「赤ちゃんキライ!」と、ことあるごとに言うように。でも、少しずつ変化が見られ、喜んでいたさなか......。


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うまれてきてくれて、ありがとう~子どもの成長におどろいた話

私には少し気持ちに敏感な娘がいます。これは娘が年長さんの頃のお話です。
ある日、私は自分の体調から妊娠していることに気が付きました。それと同時に悪阻も始まり、体を横にしている時間が増えました。遊びたい盛りの娘の相手も家事もろくにできません。娘は不満が募る一方です。
そんな日々が続き、私は娘にお腹に赤ちゃんがいることを伝えようと思いました。それを聞いた娘の反応はというと、「赤ちゃんいらない!」「赤ちゃん来ないで!」と泣き叫ぶ始末......。そんな様子を見て、正直とても複雑な気持ちになりました。まだ伝えるべきではなかったのかなと。
娘の気持ちを思うと、今まで独り占めできた両親や祖父母が赤ちゃんに取られてしまうのではと、不安に思ったのでしょう。それからもことあるごとに「赤ちゃん嫌だ!」「赤ちゃんキライ!」と私に気持ちをぶつけてきました。

それから何日か経った頃、娘に変化が見られました。「ママ、ちょっとゴロンしてていいよ! 自分でできるから!」と声をかけてきてくれたり、私のお腹に自分の耳をくっつけて何やら確認している素振りを見せたり......。その中でも一番心に残っているのが、お風呂での出来事です。
シャワーを浴びる際に、お湯の蛇口をひねっても数秒は水が出るので、それを知っている娘が突然ジャバッと浴槽から出て、シャワーが私のお腹にかからないようにと、手で庇ってくれたのです。「赤ちゃんが冷たくてビックリしちゃうから」と言って。そのとき、「あぁ嬉しいな、お姉ちゃんになっていってくれている......」と頼もしく思い、目の前の娘が涙でぼやけました。
でも、その嬉しい日々も雲行きが怪しくなっていきました。お腹の赤ちゃんの心拍が確認できないのです。お医者さんの「次回、心拍が確認できなければ流産確定になります」という説明を、ボーッと聞いていたと思います。それからは流産についてネットで検索する日々が始まりました。
流産する可能性は誰にでもあるとわかっていましたが、「まさか自分が」と、なかなか気持ちが追い付けずにいました。
次の週になり検診......。やはりお腹の赤ちゃんの心拍は確認できませんでした。どこかで納得している自分もいて、私は自然な形でお腹の赤ちゃんが出て来てくれるのを待つという選択をしました。娘と同じようにしてあげたかったからです。何日か経ち、お腹が痛むようになりました。流産が確定してから約2週間後の夜、激しい痛みがやってきました。それは娘のときと同じような、とても懐かしくて愛おしい痛みでした。

そして季節が移り変わり、現在、娘は小学1年生になりました。先日、新しくご近所になった方と世間話をしていたら、「お子さんはお1人ですか?」と尋ねられました。私が何の躊躇もなく「はい、そうです」と答えると、娘が「違う!」と言わんばかりにやって来て、「もう1人いるの!赤ちゃん! ここにはいないけれど、もう1人いる!」と、その方に一生懸命説明し始めました。私はあたふたしてしまいましたが、娘の一生懸命さにその方もフォローを入れつつ聞いてくださり、温かい時間が過ぎました。
娘のその言葉に癒やされ、そして救われました。どんなときでも私を肯定してくれる。そんな娘に私のほうが学ぶ日々です。子育ては本当に大変だなと思うこともありますが、私はこの子の母親になることができて本当に幸せです。

豊田れい奈(長野県・39歳・主婦)


「PHPのびのび子育て」12月号より


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本記事は、「PHPのびのび子育て」2020年12月号特集【「考える力」を伸ばす親、つぶす親】より、一部を抜粋編集したものです。