朝早く出かける小野田さんのことを、いつも見送ってくれていた娘さん。でも、ある日、起こさずに出かけたら......。


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いってらっしゃい~私を励ましてくれた 家族の「ひと言」

わが家は夫と私、5歳になる娘の3人家族です。夫婦共働きのため、日中は娘を保育園に預けています。
私は仕事の関係で半年間、隣県の大学にある教育機関に通学していました。
朝は5時に起き、6時には家を出る生活が始まり、娘の送り迎えや家事の大部分を夫がこなし、家族で過ごす時間はほとんどありませんでした。試験やレポート提出が重なると眠る暇がなく、帰宅してすぐ仮眠をとり、起きたら勉強し、新幹線通学のために早めに家を出る、そんな生活を送っていました。
休みの日もレポートや文献検索、課題などに取り組み、一緒に遊ぶこともできず、夫と娘の2人で出かけてもらう日々でした。
そんな毎日の中、娘は毎朝のお見送りだけは必ずしてくれていました。朝早い時間でも「いってくるね」と声をかけると、ぱっと目を覚まし、玄関へと走り、私の車が見えなくなるまで手を振ってくれていました。
私は娘も応援してくれているのだと思い、素直に嬉しく、つらい生活の中で励みとなっていました。

季節が変わり、段々と夜が明ける時間も遅くなり、もともと朝が苦手な娘ということもあって、今日はゆっくり眠らせてあげようと思い、起こさずに家を出たことがありました。
すると帰ってすぐ娘は、「なんで起こしてくれなかったの。"いってらっしゃい"が言えなかったよ。ちゃんと応援したいのに」と言って泣きました。
私は良かれと思ってしたことであり、そんなに怒るとは思っていなかったので驚きました。
それから何も言わずに出ていったことを謝り、娘を膝の上に座らせて、いろいろなことを話しました。
その中で、毎日頑張っている私のことをちゃんと応援したいからお見送りをしてくれていることや、私が頑張っているから自分も保育園で頑張っていること、私が実習などでホテルから通うこともあり、家にいるときはきちんと送り出してあげたいと思っていることなど、小さいながらにさまざまな思いを抱え、毎朝お見送りをしてくれていたことを知りました。

私は試験や課題に追われ、自分のことだけで精一杯になり、家族の生活にまで目を向ける余裕がありませんでした。しかし、娘は一度も「さびしい」と言うこともなく、ひたすら我慢をし、わがままを言わないことで、私を応援してくれていたのだと感じました。
きっと短いながらも朝の私との時間は、娘にとってはさびしさを紛らわせることのできる、大切な時間だったのだと思います。
まだまだ小さいと思っていた娘の成長ややさしさが嬉しくもあり、そこまで我慢をさせている自分に腹が立ち、涙がこぼれました。
応援してくれている娘や夫に報いるためにも、しっかり結果を出さなければと思い、気を引き締めている自分がいます。
バックミラー越しに、いつまでもいつまでも手を振ってくれていた娘の姿を、私は一生忘れることはないでしょう。

小野田かおり(熊本県・43歳・会社員)




「PHPのびのび子育て」1月号より


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本記事は、「PHPのびのび子育て」2021年1月号特集【親が笑うほど、頭のいい子に育つ!】より、一部を抜粋編集したものです。