「私だけがこんなにつらいの?」と悩んでいる子育て中のお母さん。多くのお母さんたちのカウンセリング経験をもとに、臨床心理士の吉田先生がぜひとも伝えたいメッセージです。


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傷つきやすい子、敏感な子の育て方

子育てをしていると、子どもの成長や子育て方法について、迷ったり悩んだりするものです。HSPのお母さんは、それを、よりつらく感じることがあるかもしれません。
ここでは、そのHSPのお母さんが少しでも楽な気持ちで子育てができるように、心理学の視点からお話ししてみたいと思います。
あなたは、次のようなことがつらくありませんか?

(1)人と比べてしまう
(2)アドバイスされると苦しくなる
(3)「助けて」と言えない

このようなつらさを楽にする方法についてご紹介する前に、「こころの領域」についてお話しさせてください。

こころの領域とは

わたしたち1人ひとりがもっている〝こころのプライベートスペース〟のことです。目には見えませんが、ご自分だけの「家」をイメージしてみてください。
自分の「こころの領域」は適切に守ることが必要です。自分の領域に勝手に他人が入り込んできてはいけないし、自分も勝手に入り込まないようにしなければなりません。
これを少し頭に置いておいてくださいね。

(1)人と比べてしまう

他の親子の様子が気になり、つい比べて心配したり、落ち込んだりしていませんか?
周りと比較してしまうとキリがなく、こころが落ち着きませんから、「うちはうち」と割り切ることが良いのです。
そうわかっていても、HSPさんは周りの情報をキャッチしやすい性質があるため、工夫が必要です。
まず、子育ての方針を決めておきましょう。夫婦が子育てで大事にしたいこと、子どもに願うことはなんですか?
きっと「元気にすくすく成長して欲しい」ということではないでしょうか? おそらく「他の子より早く」や「他の子より上手に」ではないはずです。
周りの情報が入ってきて、こころがザワザワしてきたら、その子育て方針に戻ってみましょう。我が子が笑顔で元気なら大丈夫ですし、子どもの様子が気になるときは、それがなぜなのかを考えましょう。自分の子育てに納得できるようになると、ザワザワしても振り回されずにすむようになります。

(2)アドバイスされると苦しくなる

子育てで悩んでいると、周囲からアドバイスされることがあると思います。でも、せっかく善意でしてくれているアドバイスなのに、素直に受け入れられなかったり、そう感じる自分が嫌になったりしてしまうことはありませんか?
実はアドバイスには、「今のままではダメ」という現状否定が含まれます。

自分なりに一生懸命やっているのに、外から一方的に「否定」されることは、ノックなしに家の中に踏み込まれるのと同じこと。自分の子育てを否定されたように感じて、つらくなってしまうのは、こころの自然な反応なのです。
HSPのお母さんは、このようなときにもひと一倍強く受けとめ、努力しようとする傾向があるように感じます。
もちろん、「アドバイスしてもらってよかった!」というときもありますし、それはそれでかまいませんが、もしアドバイスされてつらくなったら、アドバイスの性質(現状否定)がこころに刺さったのだな、と理解してみてください。
そして、相手に「そんな考えもあるんですね! 参考になります」と伝えて、それ以上は深く受けとめないようにしましょう。

(3)「助けて」と言えない

子育てをしていて、誰かに助けて欲しいと思うときがありますよね。でも、HSPのお母さんは、相手の気持ちや負担を深く考えすぎて、「助けて!」を言い出しにくくなる傾向があると思います。
この「相手の気持ちを察する」というのは、日本では美徳ですし、大人のマナーではありますが、実は「領域侵入」の一種なので、扱いには注意が必要です。
なんとなく不機嫌そうな夫や両親がいると、HSPさんはこんなとき、「疲れているのかな?
怒っているのかな?」と相手の表情を読んでしまい、「ほんとうは助けて欲しいけれど、迷惑をかけられないから自分でなんとかしなきゃ」と思いがちです。
でも、夫や両親は、実はあなたのことを心配して表情が冴えないのかもしれません。また、確かに疲れて不機嫌だけど、「ちょっと助けて」と言われたら、「OK!」と助けてくれて、その結果、「手伝えてよかった!」と笑顔になるかもしれません。
このように、相手の表情から勝手に察してしまうと、誤解が生じ、コミュニケーションチャンスを失ってしまう危険があるのです。
また、こころのメカニズムでは、自分が相手の表情を察し配慮すると、相手にもそうして欲しいと願うものです(そうされないと、大切にされていないと感じてしまいやすい)。
ですから、相手の表情を察しながらも、自分の気持ちや願いを伝えられるように工夫してみてください。

自己肯定感について

相手に自分の気持ちを伝えるには、相手への信頼感とともに、自己肯定感が必要です。自己肯定感というのは「ありのままの自分でOK」という感覚のことです。
たとえば、疲れていて誰かに助けて欲しいときに、「弱音を吐く自分はダメだ」と思うと言い出せなくなります。「疲れてイライラしているから誰か助けて」と言うためには、自分を肯定する必要があるのです。
自己肯定感は、幼少期に無力だった自分が、無条件に愛され、お世話された体験を通じて獲得します(「いい子でないとダメ」のように条件がついたり、いじめにあったりすると、獲得した自己肯定感が低下してしまうこともあります)。
もし、「自己肯定感がもてなくて苦しいな」と感じたら、子育て中の今がチャンスです。子どもに「ありのままのあなたでOK」と認めてあげるときは、ご自分にも「これでOK」を出してねぎらってあげましょう。そうして、子どもと一緒に自分も育てていきましょう。

「ほどほど」が理想の子育て

子育ては、生身の人間を相手としていて、なかなか願った通りにはいかないもの。ですから、どうか100点満点を目指さないでください。
ちなみに心理学では〝ほどほどのお母さん〟を「たいへん良い」と考えます(目指すのは51点くらい。51点のお母さんを子どもは100%愛してくれます)。
毎日の子育て......うまくいったりいかなかったりするけれど、「わたしも子どもも、ありのままでOK!」と思って、"ほどほどのお母さん"として幸せに過ごしてくださることを、こころから願っています。




「PHPのびのび子育て」3月号より


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本記事は、「PHPのびのび子育て」2021年3月号特集【傷つきやすい子、敏感な子の育て方】より、一部を抜粋編集したものです。

【著者紹介】
吉田美智子(よしだみちこ)
臨床心理士。はこにわサロン東京代表。公認心理師。 外資系企業勤務後、心理臨床の道を志す。臨床心理士の資格取得後、スクールカウンセラーなどを経て、2016年、はこにわサロン東京を開室。