くも膜下出血で、6カ月の息子さんを置いて、1カ月入院することになった仁保さん。息子さんが心の傷を負ったのではと心配していましたが......。


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日々感謝しながら~子どもの成長におどろいた話

今から1年ほど前の話です。夜寝ていたら、誰かに頭をどーんと蹴られた感じがしました。何とか寝ている夫を起こし、救急車を呼んでもらいました。私たち夫婦の声で、寝ていた当時6カ月の息子が目を覚ましました。
救急車が到着し、家に3人の救急隊員が入ってきました。私は身動きが取れません。息子は夫に抱かれ、大泣きしています。
救急車の中でも泣き続ける息子。その泣き声に、胸が締め付けられる思いでした。抱きたくても抱いてやれないのです。
私は救急車で近くの総合病院に運ばれました。検査の結果、くも膜下出血と判明。夫は息子の子守りを必死にしたそうです。息子は突然、お母さんと離れることになり、不安だったのでしょう。泣き止むことはなかったようです。
次の日の朝9時に、開頭手術を受けました。脳を取り出して患部をクリップで止める大がかりな手術でした。
手術の後、息子のことが気になりましたが、正直、自分が生きることで精一杯でした。頭痛や吐き気、嘔吐でしんどい日々を送っていたのです。
息子は、私の実家で預かってもらうことになりました。私の妹にも息子と月齢の近い女の子がいます。他県からわざわざ帰ってきて息子のお世話をしてくれました。
約1カ月間、入院することになり、最初の2週間はほぼ寝たきりで、残りの2週間はリハビリをしながら過ごしました。最初は起き上がることもできませんでしたが、少しずつ身体をもとに戻していきました。
中でも頑張ったのが、息子とだいたい同じ重さの重りを持って歩くことです。息子を抱きたいという思いで必死に頑張りました。
退院後は、療養も兼ねて実家に戻ることにしました。何度も頭痛で寝込みましたが、家族のサポートもあり、なんとか乗り越えることができました。

そして、退院から4カ月後に自宅へと戻り、リハビリも兼ねて、倒れる前に通っていたベビーマッサージに息子を連れて行くことにしたのです。
ベビーマッサージの先生は、私たちが到着すると、「よく頑張ったわね。生きていてよかったよ。心配していたのよ」と労ってくださいました。この言葉を聞いて、生きていられてよかったと、心から思いました。
そして、先生は息子の顔をじっと見つめ、「息子くんは、大丈夫。安心した。息子くんの目がしっかりしている。あなたがいない間、ご家族がたっぷり愛情を注いでくださったのよ」と言ってくださいました。
子どもにとって母親がいないことは、命の危険を感じるほどのこと。命綱が急になくなるイメージだと言われたのです。

私は今回のことで、息子が心に傷を負ったのではないかと、とても心配していました。心の傷をどうやって修復していこうかと考えてばかりいました。でも、「息子くんは、大丈夫」という先生の言葉を聞いて、心からほっとしました。息子は苦境の中でもたくましく育っていたのです。
息子は2歳になりました。たくさんの人に囲まれてすくすく成長しています。私は多くの方に助けてもらい、くも膜下出血という大病でも生き延びることができました。たくさんのご恩を胸に、人の役に立つ生き方をしたいです。

仁保雅望(広島県・36歳・主婦)




「PHPのびのび子育て」4月号より


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本記事は、「PHPのびのび子育て」2021年4月号特集【やさしい子、愛される子の育て方】より、一部を抜粋編集したものです。