大谷翔平に学ぶ! 子どもの自己肯定感と自己効力感を高めるヒント

原田隆史
2025.06.11 11:00 2025.06.09 11:50

野球

「うちの子は、勉強もスポーツもどこか中途半端…」そう悩んでいる親御さんは多いのではないでしょうか。もしかしたら、お子さんは「自信」を持つ方法を知らずにいるのかもしれません。自信は、生まれつきのものではなく、育むことができます。この記事では、あの大谷翔平選手が高校時代に立てていた目標などを例に、子どもの自己肯定感と自己効力感を高める方法を原田隆史さんの著書よりご紹介します。

※本記事は原田隆史著『中高生のための目標達成ノート』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)より一部抜粋・編集したものです。

大谷翔平選手や北口榛花選手に学ぶ、高い自己効力感

野球をする子

そもそも、「自信」とは、なんなのでしょうか?
私はいつも、自信は2つのものからできているとお伝えしています。

1つ目は「私は今のままで良い、今の私も悪くない」と考えることができる気持ち。これは「自己肯定感」と言います。
2つ目が、勉強や何かの仕事などに対して「私はこれができる、私ならやれる」と思える気持ち。これを「自己効力感」と言います。

自信はこの2つのものからできていて、もちろんどちらもとても大切です。
世界的なスーパースターとなったロサンゼルス・ドジャーズの大谷翔平選手が、花巻東高校1年生の時に「目標達成シート」(「原田メソッド」における「オープンウィンドウ64」)のど真ん中に「ドラ1、8球団」(ドラフト会議で8球団から一位指名を受ける)という目標を書き込んでいたことは有名な話です。

大谷選手はその目標達成のために何が必要かを自分で考え、それを実行し続けました。
そうして、自ら掲げた大きな目標を遥かに超えるような偉業を成し遂げ、今もまだ成長し続けています。これは本当に素晴らしいことです。
けれどもそれ以上に私が感心するのは、まだ甲子園にさえ行ったことのない高校1年生時点で、大谷選手が「ドラ1、8球団」という目標を堂々と文字にして書くことができた、ということです。すでにこの時点で大谷選手の中には、「自分ならやれるはず」という高い「自己効力感」がしっかりと根付いていたのです。このような自己効力感が強いエネルギーとなったからこそ、大谷選手は自分で描いた目標を目標以上の形で実現させたのです。

また、2024年のパリオリンピックで、陸上・やり投げの北口榛花選手は、日本の女子選手として初めて、フィールド競技で金メダルを獲得しました。競技の合間にカステラをほおばる姿や、弾けんばかりの笑顔も印象的でしたよね。
その北口選手は金メダルを取った直後のインタビューで、65m80という素晴らしい記録で優勝できたことを問われて、こう答えました。

「夢の中では70mを投げていたので、もっと投げられたと思うと、記録については少し悔しいです」

これもまさに「自己効力感」から生まれる発言です。北口選手は「私ならできる、もっとやれる」という自信を持っているのです。別のインタビューで、いつも笑顔でいることについて問われると、自分が笑顔でいることで、今のままのありのままの自分でいいんだよ、というメッセージが伝わればいいと思っている、という主旨のことを話していました。これはまぎれもなく「自己肯定感」です。
北口選手は、世界で活躍できる選手になる、という目標を立てて、2019年に指導者を求めて一人でチェコに渡り、チェコ語を勉強しながら陸上の練習に取り組みました。私にはもうできないのでは、と自己効力感が低くなったり、私なんてどうせダメだ、と自己肯定感が下がったりしたこともきっとあったはずです。異国の地で一人で、夢をあきらめずに、やり遂げることができた秘訣はなんだったのでしょうか。興味が湧きますよね。

「自信」は自分で高めることができる

勉強する男の子

すごい結果を出している人たちの例を出したので、尻込みしそうになっている方もいるかもしれませんが、どうか安心してください。
大谷選手や北口選手の成功を支えた「自信」を自らの力で高めていく方法はちゃんとあります。

それが、「毎日」の「できた!」「やれた!」の繰り返しです。
自信のうちの1つ、「自分ならできる!」という自己効力感について、多くの人たちは、テストではいつも60点くらいしか取れないのに100点を取れたとか、大きな大会で優勝するとか、自分にとって大きな壁とか、大きな課題を克服できた時に一気に高まるものだと思い込んでいます。
でも、本当はそうではありません。

昨日のテストは60点だったけど今日は62点だったとか、昨日の100mの記録が13秒99だったけど今日は13秒96になったとか、そういう小さな成長の繰り返しで「自己効力感」は少しずつ高まるのです。北口選手も、金メダルを取る前の夜に見た夢の中で70mを投げて、私ならできる、と思っていましたよね?
金メダルを取ったから自己効力感が上がったのではありません。金メダルを取る前から、自己効力感はすでに高まっていたのです。
自己効力感は、あるタイミングがくると、まるでシーソーが逆転するかのようにドンッと高まります。そしてそれが時として大躍進につながるのです。
自信のもう1つの要素である「自己肯定感」は、「自分が大好き」と素直に思える心のことです。「自己効力感」が夢や目標の達成を後押しする強い上向きのエネルギーだとしたら、「自己肯定感」は、つらいときにも自分は自分のままでいいと思える心のオアシス・休憩場所です。

「自己効力感」が高ければエンジン全開で突っ走ることはできますが、「自己肯定感」が低いままだと、何らかの壁にぶつかったり失敗したりしたときに、自分はダメだと考えてしまって、傷ついてしまいます。その結果、やる気だけが空回りしてしまい、落ち込んで心がとてもしんどくなってしまうこともあります。

だから、「自己効力感」も「自己肯定感」もどちらも大切で、高める方法を自分で知っておくことも大切なのです。
「自己肯定感」を高めるには、誰かから「ありがとう」と言ってもらえるような行動を意識して増やすことが大切です。

また、自分以外の誰かへの感謝の気持ちを意識することも大切です。つまり、あなたが誰かに「ありがとう」と伝えることです。誰かへの感謝の気持ちが高まると、自分が大切にされていることがわかり、ひいてはそれが自分の価値を認めることにつながるからです。

自己効力感を高める方法
●勉強や自分の活動での成果を上げる、良かったことやがんばったことを見つける
●自分で「これをしよう」と決めて取り組む
●最後までやりきる

自己肯定感を高める方法
●「ありがとう」の言葉をもらえる行動をする
●「ありがとう」と感謝の気持ちを感じる
●お手伝いや人助けをする

「原田メソッド」において「日誌を書く」ねらいは、毎日の積み重ねでこそ高まる自信を育てるためです。
「できた」「やれた」という小さな「自画自賛」や、「ありがとう」と言ったり言われたりした出来事を、「毎日、日誌に文字で書き込む」ことが大事なのです。
それこそが、「自己効力感」と「自己肯定感」という両方の自信を自分で高めるための、毎日できるたった1つの方法です。
「毎日続ける」というのは一見ハードルが高いように思えますが、まずは気楽に取り組んでみましょう。3日目ぐらいで、忘れたり、面倒くさくなったりします。1日抜けてしまうこともあります。それでもOK。4日目からまた始めてください。調子が出てきたぞ、と思った10日目ぐらいに、また忘れたり、面倒くさくなったりします。それでもOK。11日目から、また知らん顔して再開してください。「だまされている?」と思いながら1ヶ月、続けてみてください。気がつくと「日誌を書く」ことが「あたりまえ」になります。それを私たちは「習慣」と呼んでいます。

原田隆史

株式会社原田教育研究所 代表取締役社長。ビジネス・ブレークスルー大学グローバル経営学科教授。一般社団法人JAPANセルフマネジメント協会代表理事。埼玉県教育委員、三重県政策アドバイザー、奈良市生徒指導スーパーバイザー、高知市教育アドバイザーを歴任。大阪市生まれ。奈良教育大学卒業後、大阪市内の公立中学校で20年間勤務。保健体育指導、生活指導に注力。課題を抱える教育現場を次々と立て直し、「生活指導の神様」と呼ばれる。独自の育成手法「原田メソッド」により、勤務3校目で指導した陸上競技部では7年間で13回の日本一を誕生させる。大阪市教職員退職後、大学講師を経て起業。「原田メソッド」に多くの企業経営者が注目し、野村證券、キリンビール、三菱UFJ信託銀行、神戸マツダ、住友生命保険、ユニクロ、アステラス製薬、カネボウ化粧品、武田薬品工業などの人材育成研修を担当。これまでに約600社、15万人以上のビジネスパーソンを指導した実績をもつ。
オリンピック選手などアスリートのメンタルトレーニングにも携わる。現在も、企業・学校・家庭の人材育成教育、講演・研修活動、不登校児童生徒支援活動、テレビなどメディア出演、執筆活動と幅広い分野で活躍中。著書はこれまでに30冊、国内にとどまらず世界の25を超える国・地域で出版されている。
代表な著書は『一流の達成力』(フォレスト出版)、『カリスマ体育教師の常勝教育』『最高の教師がマンガで教える勝利のメンタル』(ともに日経BP社)、『成功の教科書』(小学館)。
株式会社原田教育研究所:
https://harada-educate.jp/

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