通信制高校って実際どう? 向き・不向きとオンライン学習のリアル

西岡壱誠
2025.06.24 12:15 2025.06.30 11:50

屋上にいる高校生

2025年現在、高校生の11人に1人が通っているという「通信制高校」。通信制高校には、どのような特徴があるのでしょうか? また、オンライン教育で大人になった人はどのような将来を歩むのでしょうか?

著作家の西岡壱誠氏と、通信制高校の大手・第一学院高等学校で実際に働いている伊藤香織氏・倉澤弘明氏の対話を『オンライン教育で日本はどう変わるのか?』から紹介します。


※本稿は、西岡壱誠著『オンライン教育で日本はどう変わるのか?』(講談社)から一部抜粋・編集したものです。

通信制高校の特徴は「時間を自由に使える」こと

勉強机と目覚まし時計と辞書

西岡さん: 伊藤さん、倉澤さん、よろしくお願いします。実際にお仕事をされる中で、通信制高校の特徴はどのような点にあると感じますか?

伊藤さん: 私は通信制高校の大きな特徴に「時間を自由に使える」ことがあると考えています。言い換えると、通信制高校は自由時間が圧倒的に多いのです。この自由度の高さは、やる気のある生徒にとっては大きなチャンスになります。何かにチャレンジしたり、自分の興味のあることを深掘りしたりする時間を確保できるのは、大きなメリットです。

倉澤さん: しかし、自由時間を自分の人生のプラスにできる生徒がいる一方で、何もせず無為に時間が過ぎてしまう生徒もいます。そのため、生徒や保護者には「自由には責任が伴う」というリスクを強調して伝えています。

西岡さん: 具体的に、自由時間を使ってどんな活動がされているのでしょうか。

伊藤さん: 地域と連携した探究学習やプロジェクト型の学習が多いです。つまり、体験を通じて学ぶ機会が多いとも言えます。例えば、ボランティア活動や企業との共同プロジェクトなどに参加することで、自分の学びが社会にどう活かされるのかを実感できます。

また、通信制高校の先生方は生徒一人ひとりの学びを丁寧に振り返り、フィードバックすることに力を入れています。その結果、卒業後に「丁寧なフィードバックが役立った」と振り返る生徒も多いです。

オンライン授業に慣れることは将来の力になる

勉強する男の子

西岡さん: そうなんですね。少し話は変わるのですが、通信制高校と聞くと、「対面でのコミュニケーション力が育たないんじゃないの?」という印象を持つ方も、まだまだいらっしゃるかと思います。そこについてはどうお考えですか?

倉澤さん: おっしゃることについては理解できます。ですが、仮にそうだとしても、時代は変わり、企業に就職した際にも、対面でのコミュニケーション以上に、オンライン上でのコミュニケーションの重要度は増していますよね。もちろん業種にもよりますが。

伊藤さん: 以前、他の全日制高校との合同イベントに参加して、各地の学校とZoomをつないで授業を行ったのですが、そのとき「第一学院の方がオンラインでの授業態度が良いですね」と言われたんです。オンラインを介した発言のスピードや意見の出し方でも、オンライン授業の集中力という点でも、確かにうちの方が優れている面があったと感じます。というか、他の普通科高校だと割と真面目なことを話す時間にふざけているのも見かけました。このように、ネット上でのコミュニケーションスキルが身につくのは、今の時代において非常に意味のあることだと言えると思います。

西岡壱誠

西岡壱誠

東大生作家。1996年生まれ。偏差値35から東大を目指すも2浪し、3年目から勉強法を見直して偏差値70、東大模試で全国4位となり東大合格を果たす。東大入学後、『ドラゴン桜2』(講談社)の編集、TBSドラマ日曜劇場「ドラゴン桜」の脚本監修を担当。2020年には株式会社カルペ・ディエムを設立し、全国の高校で「リアルドラゴン桜プロジェクト」を実施して高校生に思考法・勉強法を教えているほか、教師への指導法のコンサルティングを行っている。

X:@nishiokaissey

Instagram:@issey_nishioka

オンライン教育で日本はどう変わるのか?

オンライン教育で日本はどう変わるのか?』(西岡壱誠/講談社)

コロナ禍を機に広まった「オンライン教育」は現在、中高・予備校・大学での学びを革新しつつあります。既に全国290万人の高校生のうち30万人が通信制高校に通ってオンライン主体の学習を行っており、近い将来には3人に1人がオンライン通学する社会が訪れると予想されています。しかし、そんなオンライン教育革命の実態は関係者以外にあまり知られていません。そこで、多数の学校に携わる教育ベンチャーを経営する著者が、通信制高校の仕組みから動画授業やオンラインコーチングのメリットとデメリット、オンライン教育時代の社会変化まで包括的に論じた、オンライン教育のすすめが本書です。