子育てで目指せばいいたったひとつのこと
あれこれ教育する必要はありません!たったひとつのことを大事にすれば、子どもはすくすく育ちます。
※本稿は、須賀義一著『保育士おとーちゃんの「叱らなくていい子育て」』(PHP研究所)の中から、一部を抜粋・編集したものです。
須賀義一(すが・よしかず/子育てアドバイザー)
1974年生まれ。東京都江戸川区の下町に生まれ、現在は墨田区に在住。大学で哲学を専攻するも人間に関わる仕事を目指して、卒業後国家試験にて保育士資格を取得。その後、都内の公立保育園にて10年間勤務。子どもの誕生を機に退職し、子育てアドバイザーとして、子育てについての研究を重ね、執筆、講演活動、ワークショップを展開。従来の子育てを見直し、個々の子どもを尊重した関わり、子育ての仕方を提案している。家族は妻と一男一女がいる。
子どもをたっぷりとかわいがろう
僕は子育てをシンプルにしたいと思っています。
いま子どもを育てている多くの人は、子どもにあれもこれもと、たくさんの能力を身につけさせようとしています。
一口に言いましたが、それは親が子育ての仕方がわからないために、とりあえず世間でよいとされることを子どもにさせている場合もあれば、明確に高学歴や高収入を目標として、その実現に邁進している場合など中身はさまざまです。
でもその過程においては、子どもが何らかの問題を抱えざるを得なくなったり、親が子どものその難しい姿に直面して「子育てはなんと大変なんだろう」と悩みばかり深めたりしてしまうことも少なくありません。
いまの子育ては、たくさんのあれもこれもに目を奪われてしまって、本当に大切なことが忘れ去られてしまっていると僕は感じています。
その本当に大切なこととはなんでしょう。
それは理屈抜きに言ってしまうと、子どもをただただ無条件にかわいがることです。幼少期からたくさんかわいがられてきた子は「かわいい子」になります。
「かわいい子」になると、多くの人からさらにたくさんかわいがってもらえます。また友達からも好意的にみられます。そしてますます「かわいい子」に育っていきます。その過程で子どもはたくさんのことを得られます。
「自信」「自己肯定感」「自尊感情」「モノを大切にする気持ち」「人に優しくする気持ち」「人と関わることの楽しさ」「ものごとに取り組もうとするモチベーション」「明るさ」「前向きさ」「豊かな感性」
これらは、かたちとしては目に映りませんが、子どもの心の一番基礎になるものです。これらが持てていれば、子どもの将来をいたずらに心配する必要はありません。
確かに、世の中のしくみがこれほど複雑になると、子どもにいろいろなことを身につけさせたいという大人の気持ちは十分わかります。でも、子育てで本当に大切なことはたったひとつ、「子どもをたっぷりかわいがること」だけなのです。
大人には、いろんなことに心配をつのらせたり、焦ったりする前に、せめて乳幼児期だけでも、無条件にたくさんかわいがって子どもを育ててもらいたいと強く思います。
子どもが小さいうちに目指すべきたったひとつのことは、「かわいい子どもにする」ことなのです。その他のことはその後についてくることです。