朝の「にこにこプロデュース」で 自立の力を伸ばそう
サルと動物を40年研究してわかったこと――動物学の権威にして孫育てのスペシャリストである島泰三先生におうかがいする連載の第2回。やることがいっぱいで、どうしても「早く」とせかしてしまいがちな朝。親子の朝を気持ちいい時間に変え、子どもを伸ばす秘訣を集めました。
※本稿は、『PHPのびのび子育て』2014年4月号特集「『早く!』がなくなる最高の朝習慣」から一部を抜粋し、編集したものです。
(1)せかさずに「いっしょにやろう」と誘う
人間がサルと共通しているのは、「命令されると別の方法を探す」という性質を持っているところ。大人だって、頭ごなしに「早く!」と言われると腹が立つはずです。
「早く!」とせかされると、わざとゆっくり行動したくなるのが子どもなのだ、と理解し、「いっしょにやろう」「よーい、ドンだよ」などと楽しい気分で誘ってみましょう。
(2)お手伝いを頼む
子どもにはもともと、素直な思いやりの心があります。朝の支度で大変なときには、子どもにできるお手伝いをお願いしてみましょう。
大切なのは、「お手伝いしてくれて、本当に助かった」と伝えること。親に自分のがんばりを認められると、子どもは「認められた」とうれしくなり、その気持ちがやがて他者を思いやる心を培っていきます。
(3)無理強いしない
歯磨や着替えなどをとことん嫌がる時期があります。そういうときに親も意地になって格闘すると、どんどん嫌なものへのこだわりが強くなることも。「いっしょにやろう」と誘ったり、時には口をゆすぐだけでOKとするのも手。また、パジャマを脱いだ後にグズるときは
「寒くなったら着るだろう」としばらく見守ってみるのも、自立を促す一歩です。
(4)しっかりほめる
人間はバラエティーに富んでいるのが当たり前。できることのレベルにも個人差が多いものです。つい高いレベルを要求してしまうのが親ごころですが「できたことを見つけ、ほめる」ことを意識しましょう。
サルと人間の共通点は「命令では動かず、賞賛によって動く」こと。できたことには大げさなくらい拍手喝采して「すごいね」とほめましょう。
(5)「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんでしょ」と言い過ぎない
下のきょうだいがいる場合、幼い子のほうに手がかかるのでどうしても上の子に「もう聞き分けられるはず」と思ってしまうもの。特に忙しい朝は上の子の話に耳を傾けられず、上の子がだだをこねるシーンも多いのです。
赤ちゃんは身の回りの世話をすれば育ちます。心の成長には、「愛されている」と実感できる経験が不可欠なのです。
【column】親は子どもの太陽に、祖父母は雨になろう
子どもの成長は、木が生長していく姿によく似ていると感じます。生まれてまもないひ弱な苗に、親は、「太陽」となってエネルギーを注ぎます。祖父母の存在はときおり優しく降り注ぐ「雨」かもしれません。
そして、子どもが自力で生きていく基盤となる根や枝は、子ども自らの力で伸ばしていく必要があります。子どもは興味の対象を広げ、「遊び」を体験することで根や枝を広げていきます。
さらに子どもは周囲に尊敬する人を見つけ、また逆に尊敬されるという経験によって心の幹を太くし、強風が吹いても「折れない心」を身につけていくのです。