子ども食堂は誰が利用してもいい? 運営者が語る「孤立する親子」への思い
近年子ども食堂の数は増え続け、東京都内だけでも775か所で開催されています(東京都福祉保健局令和4年度調査)。現代で子ども食堂はどのような役割を果たしているのでしょうか? また、食育に悩む親御さんに向けたアドバイスを、目黒区で子ども食堂を運営している、NPO法人こどもば・代表理事の横山誠さんにお話しをうかがいました。(取材・小林実央[nobico編集部])
子ども食堂は誰が利用したっていい
横山さんは保育士として10年以上、保育園に勤めていた経歴を持ちます。子ども食堂を始めた経緯も、保育園の園児を心配したことがきっかけだったと当時を振り返ります。
「卒園した子どもたちの様子がずっと気になっていました。学童に行っているのか、夕飯は一人で食べているのか…とても心配していたんです。そこで、地域で子どもを見守る必要性に気づき、子どもの居場所を作る活動を始めました」
2015年から「夏祭り」や「クリスマス会」といった子ども向けイベントを開催し始め、2016年には「子ども食堂」を開催。当時は子ども食堂は世間的に認知されておらず、東京都では20か所ほどしかなかったといいます。
「貧困家庭を支援することはもちろん重要ですが、私はそれにこだわらず、みんなが楽しく交流できる場所を作りたいと思いました。”子ども食堂=困ってる人が行くところ”というイメージを払拭したかったんです」
子ども食堂は困窮する家庭が行く場所という印象が強い中で、あえて貧困解消にフォーカスしないことで「誰でも遠慮せず利用できる場」を目指したと、横山さんは熱をこめて語ります。
「子ども食堂は各小学校エリアに1つずつできるといいなと思っています。食事を出さなくても、お菓子やお茶だけでも。どんな形態であっても地域の子どもの居場所を作れば、子どもたちだけでなく親御さんの助けにもなりますから。子ども食堂がサードプレイスとなって、選択肢を増やすことが重要なんです」
子育て家庭の多くが共働きの現代では、孤食や、親子の地域からの孤立は大きな社会問題となっています。ライフスタイルの変化に合わせ、子ども食堂の需要はますます高まっているのです。
「うちの子ども食堂には毎回平均40人ほどの利用者が来ています。経済的なことは関係なく来てもらって、食事を介した雑談で親御さんがぽろっと悩み相談をしてくれることもあります。年の近い親同士で話す場所にもなっていますし、子どもだけでなく親を孤立させないための場になっているんです」
子どもの食育についてどう考える?
子どもの偏食や食べるスピードが遅いことに悩みを抱える親御さんは多くいます。しかし、食育に関しては悩みすぎないことが大切と横山さんはアドバイスします。
「親に見られているとプレッシャーになって食べなかったり、何でもイヤイヤと甘えて食べなかったりするんです。放っておくと、あれ、もう食べたの? なんてこともあります。
子ども食堂では食育の指導はしていません。ですが、子どもも周りの子たちの様子を見ています。みんなが食べているのを見て、家では食べなかったものを食べてみたり、おちついて座って一緒に食べたりと成長がみられることもしばしばです。
家で子どもとマンツーマンになると、どうしても悩みすぎてしまいます。そんな時に子ども食堂でほかの子たちの様子を見てみると、そんなに厳しくしなくてもいいんだな…とほっと出来ると思いますよ」
子ども食堂で出すメニューは、寄付でもらった食材をもとに柔軟に考えているそう。人気メニューはやはりカレーライス。ミートローフやグラタンなども好評だといいます。調理のポイントは、具材は小さめにカットし、味付けは薄目にすること。
取材当日のメニューはハロウィン仕様で、チキンカレー・ハロウィンかぼちゃサラダ・白菜スープ・みかん。利用者の子どもたちが、美味しい!と楽しそうにほおばる姿に思わずこちらも笑顔になりました。