「親の前ではいい子」なのに学校で暴力・・・キレる子が抱える本当の気持ちとは

原田謙
2025.03.03 12:41 2025.02.27 11:50

キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本

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家では「いい子」なのに、学校だと些細なことでキレてしまう…その理由は一体何なのでしょうか?
「キレる子」本当の気持ちと周囲の大人の接し方について、児童精神医学の専門家である原田謙先生の解説をご紹介します。

※本稿は原田謙(著)『キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本』(講談社)から一部抜粋・編集したものです。

親の前では「いい子」だけど、学校ではキレる子

キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本

 

注意されて、逆ギレする

Bくんは小学3年生です。家庭ではキレないのですが、学校ではキレてしまいます。家庭では、宿題をやるのが遅れて母親から「早くやりなさい」と注意されると、言うことを聞きます。一方、学校でトラブルを起こして、先生から「真面目にして」と𠮟られると、先生に対してはキレることがあるのです。

マンガでは、Bくんが掃除をサボって先生から注意され、キレてしまった場面を紹介しました。このときBくんは机に乗って、大声でしゃべっていました。他の子は掃除もしながら普通の声で話していました。先生はその様子を見て、特に目立っているBくんを𠮟ったわけです。しかしBくんは同級生に「お前のせい」だと言って、その子を蹴飛ばしてしまいました。言動や態度を注意されて、逆ギレしたのです。

本人は「理不尽だ」と感じている

 後日、Bくんに話を聞いてみると、彼は「自分だけが𠮟られたことが嫌だった」と言っていました。Bくんとしては「みんなでしゃべっていた」「先に話しかけてきたのは他の子だった」「それなのに自分だけが注意された」と思って、怒ったそうです。理不尽だと感じたから、言動が荒れてしまったのです。

Bくんのように「一人だけ𠮟られる子」は、周囲の子が空気を察して騒ぐのをやめたときにその変化を察知できず、最後まで大声を出していることがあります。そして「どうして自分だけ」と感じてしまうことがあるのです。その戸惑いを理解してほしいと思います。

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怒りを暴力で表現してしまう

ただ、理不尽だと感じたとしても、その気持ちを同級生への暴力という形で表現してはいけません。キレて暴力をふるうことを続けていたら、一緒に遊ぶ友達は減っていくでしょう。実際に、Bくんはキレることを繰り返すなかで、「誰も味方になってくれない」と言って泣き出したことがあります。早く問題に対処しなければ、味方がいなくなってしまう可能性があるのです。

また、Bくんは家庭ではキレていませんが、親の話を素直に聞いているのかというと、実はそうでもありません。親から「早く宿題をやりなさい」と言われたら従うのですが、本人の話を聞いてみると、内心では親に対してイライラしているということでした。面従腹背という形で、親の言うことを渋々聞いているのです。

Bくんは、親にも先生にもムカムカしているなかで、比較的優しい先生や、反抗しやすい同級生に対してキレていました。このタイプの子は、年齢が上がると親にもキレるようになることがあります。学校でも家庭でも、誰に対してもキレる、比較的重症なパターンになっていく場合があるのです。

子どもがキレることが続いている場合には、まず暴力や暴言を止めましょう。そのうえ で、子どもの気持ちを聞いて、根本的な問題にも取り組んでいきます。この章では暴力・暴言を止める方法を、そして第4章以降で根本的な対応を解説していきます。

【ポイント】
暴力を見過ごさないで止める
…暴力があるのは危機的な状況です。見過ごさないで、暴力を止めなければいけません

「次にキレたときの対応」を決める

次にキレたら落ち着いて対応したい

子どもがキレて、騒いだり暴れたりすれば、大人も興奮します。暴力を止めようとして怒鳴りつけたり、力で押さえ込んだりする場合もあります。しかし、子どもが興奮しているときに、大人も一緒になって興奮していたら、子どもの気持ちはますますたかぶってしまいます。大人は落ち着いて対応したいところです。

子どもがキレたとき、その場で冷静に判断するのは難しいので、あらかじめ対応方法を考えておきましょう。「次にキレたときの対応」を決めてしまうのです。そうすれば、子どもに急に暴力をふるわれても、一定の対応を取ることができます。

あらかじめ対応の枠組みをつくっておく

 私はそのように「対応の枠組みをつくっておくこと」を「枠付け」と言っています。

家庭では家族で、学校では教師間で話し合い、「次に子どもが暴力をふるったらどう対応するか」を決めておくとよいでしょう。暴力を止める方法には「クールダウン」「タイムアウト」など、さまざまな手法があります。くわしくはこのあと解説していきますが、それらの手法のなかから、どのような対応を実行するのかを決めておくのです。

子どもの機嫌を見ながらあるときは怒鳴りつけ、あるときは言うことを聞くという一貫性のない対応では、子どもを混乱させます。枠付けをして「ダメなものはダメ」という姿勢を示しましょう。そうすれば、大人が真剣に考えていることが子どもに伝わります。

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「誰が」「どこで」「誰と」を考える

「枠」が曖昧では、対応しにくい

「枠付け」を確実に行うためには、キレたときの対応法をできるかぎり具体的に決めておくことが大切です。対応法を「誰が」「どこで」「誰と」の3点で、具体的に考えるようにしましょう。 学校の教室でキレてしまったときの対応を考える場合には、ただ「クールダウンする」と決めるのではなく、教師間で話し合って、具体的な手順を考えておきます。例えば、担任の先生が子どもに声をかけて保健室へ移動させ、保健の先生と協力しながら、本人に、水を飲んで一息入れ、落ち着くことを促す。このくらい具体的に決めておけば、「枠付け」を迷わずに実行できます。逆に具体的な手順を決めておかないと、子どもがキレたとき、誰がどの対応をするのかが判断できず、結局、場当たり的な対応になってしまう可能性があります。

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原田謙

長野県立こころの医療センター駒ケ根副院長・精神科研修研究センター長・子どものこころ診療センター長。信州大学医学部臨床教授。1962年東京都生まれ。1987年信州大学医学部卒業。神奈川県立子ども医療センター、国立精神神経センター国府台病院、信州大学医学部附属病院などを経て、2014年から現職。専門は児童精神医学。特に発達障害の二次障害、反抗挑発症、素行症。

キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本

キレる子どもの気持ちと接し方がわかる本』(原田謙 著/講談社)

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