「子どもに聞かず勝手に決める」がNGな理由は?親が知っておきたい同意を得ることの大切さ

こど看
2025.12.18 11:19 2025.12.31 11:50

見つめあう親子

子どもに十分な説明をしないまま、大人の判断で物事を決めてしまうことはありませんか?
精神科認定看護師のこど看さんは、「子どもから同意を得る過程」は、子どもが自分の気持ちを大切にできる力を育てるうえで、とても重要だといいます。
こど看さんの著書より一部を抜粋し、その理由をご紹介します。

※本稿はこど看著『児童精神科の看護師が伝える 10代のこわれやすいこころの包みかた』(KADOKAWA)より一部抜粋、編集したものです。

子どもから同意を得る過程をスキップしてはいけない

会話する父と子

「今日の夕食何にする?」と子どもに聞くと、「なんでもいい」と言われ、「それが一番困るんだよ!」と頭を搔きむしった経験はみなさんにもあるはず。

実はこの何気ないやり取りは、「子どもの同意を得る」という視点から見ると、とても大切なかかわりなのです。

例えば、子どもの部屋に入る前にノックをして返事を待つ場面。これは「入ってもいい?」という大人からの問いかけに対して、子どもが「いいよ」と返事をすることで成立する、小さな同意のやり取りです。ほかにも、「ごはん何にする?」と子どもに尋ねたり、話し合いながら一緒にルールを考えたりすることも、子どもと共に選び、同意を得る大切なプロセスと言えます。

では、なぜこの「同意」が大切なのでしょうか。

私たちは誰もが自分の体や心、そして自分の選択に関して、自分で決める権利を持っています。「これはしたい」「それはしたくない」と自分の気持ちに沿って、行動を選ぶことができます。そして、こういった自分の気持ちや選択した行動が誰かに受け止められ、尊重されたとき、人は「自分は大切にされている」と実感できるのです。

子どもにとっても同じで、日常の中で「これでいい?」「どう思う?」と尋ねられ、自分の気持ちや選択が尊重され、同意する・しないといった経験を重ねると、「自分の気持ちを伝えてもいいんだ」「嫌だって言っても受け止めてもらえるんだ」と安心を感じることができます。この経験や感覚はとても大切で、自分の気持ちだけでなく、相手の気持ちや同意も大切にしたいという意識が育まれる大きな材料となります。

しかし、私たち大人はつい「家族だから」「子どもだから」と子どもとの関係性に甘えてしまい、説明を省いたり、子どもの意見を聞かずに一方的に物事を決めてしまいがちです。時には力や知識、経験や立場の違いを利用して、強引に子どもに同意させようとしてしまうこともあるかもしれません。

ですが、そうしたやり取りの中で得られる「同意」は本質的な同意ではないことを、私たち大人は常に頭に入れておく必要があります。真の意味で子どもから同意を得るためには、子どもが理解できる言葉と工夫で丁寧に説明し、その子がどのくらい理解できているかを確認することが大切です。たとえ子どもがうまく理解できなかったとしても、責めたりせずに別の方法で伝える工夫をすることが必要です。大切なのは、子どもの気持ちを丁寧に取り扱い、向き合おうとする姿勢なのです。

また、子どもの「イエス」を引き出すことを前提とした説明は、同意に必要な説明ではなく、形だけの同意を得るための「説得」になってしまいます。よくあるのが、「みんなやってるから、あなたもやりなさい」といったかかわりです。子どもからすれば「みんなと自分は違うのに、どうしてやらなきゃいけないの?」「みんな本当にやってるの?」と納得できませんし、大人の思惑を察して「そう言ってやらせたいだけでしょ?」と不信感を抱くこともあります。

こういったかかわりは、子どもの「嫌だ」という気持ちを力ずくで抑え込むようなものだと言わざるを得ません。「嫌だ」と思ったことは「嫌だ」と言っていいし、誰かの安全を脅かすほどのことがない限りは、それをしなくてよいのです。もし、「嫌だ」と言いたくても言わせてもらえない、「嫌だ」と言えても尊重されない。そんな状況が続いたらどうでしょう。大人である我々でも、「自分は大切にされない」と自分の価値を自分で下げたり、同意そのものを無駄なものと感じてしまうかもしれません。それがもし子どもであれば、その苦しさをより強く感じることでしょう。

だからこそ、「家族だから」と同意を得る過程を端折るのではなく、「家族だからこそ」と丁寧に同意を得ることが大切なのです。将来、その子が「あのときどうして説明してくれなかったの?」「なんで勝手に決めちゃったの?」と過去を振り返るのか? 「あのとき説明してくれてありがとう」「気持ちを聞いてくれてうれしかった」と振り返るのか? どちらになるのかは、今かかわっている目の前の子どもとの間にある「同意」をどれだけ大切にできるかにかかっているかもしれないのです。

子どもが将来「NO」と言える大人になってほしいと願うのであれば、まずは身近な大人であるあなたが、「同意とは何か」を知り、子どもから同意を得る過程を大切にする意識と姿勢を持つことが大切です。

こど看

精神科認定看護師。精神科単科の病院の児童思春期精神科病棟に10年以上勤める。現在も看護師として病棟勤務しながら、「子どもとのかかわりを豊かにするための考え方」をSNS等で精力的に発信中。著書に『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』(KADOKAWA)がある。メンタル系YouTuberの会所属。一児の父。

X:@kodokanchildpsy