特別な経験がなくても大丈夫! PHP作文甲子園に学ぶ体験談の書き方

毎年夏に開催される、文部科学省後援の中高生向け作文コンクール、「PHP作文甲子園」。2025年度の最優秀作は、中学2年生の阪田拓磨さんによる、クラリネットとの出会いを描いた作品でした。
多くの中学生が経験するような、ごく身近な一場面を描いた阪田さんの作文が、最優秀賞に輝いた理由とは? 阪田さん、そして月刊誌『PHP』の丹所編集長にお話をうかがいました。
PHP作文甲子園とは?
「PHP作文甲子園」は、株式会社PHP研究所が主催する中学生・高校生を対象とした作文コンクール。文部科学省の後援もあり、毎年全国から多くの応募が集まっています。
作文甲子園では、毎年ひとつのテーマが設定され、そのテーマに沿って自分の体験や考えを800字程度の作文として表現します。募集テーマは年ごとに異なり、2025年度は「忘れられない、あの出会い」というテーマで作品が募集されました。全国から2600作品の応募があり、その中から厳正な審査を経て、東京都世田谷学園中学校2年 阪田拓磨さんの作品が最優秀賞に選ばれました。
東京都世田谷学園で授賞式を開催
2025年12月、阪田さんが通う世田谷学園で授賞式が行われ、月刊誌『PHP』の丹所千佳編集長から賞状が手渡されました。
受賞作『クラリネットとの時間』は、中学校の吹奏楽部でクラリネットと出会った経験や、先輩へのあこがれをテーマにした作文。仲間たちとの出会いや演奏の喜びをみずみずしい感性で丁寧に描いています。
自身の経験や、作品づくりの思いを、受賞者の阪田さんに語ってもらいました。
書くのが好きになったきっかけは?

─作文甲子園に応募したきっかけはなんでしょうか。
夏休みに、「何かのコンテストに応募すること」という課題が出されたことです。
複数のコンテストの中で作文甲子園が目に留まり、昨年も応募した経験があったことから、今年も挑戦してみようと思いました。
また、「忘れられない、あの出会い」というテーマを見て、書きたい出来事が思い浮かんだことも、応募を決めた理由です。
─優勝賞を受賞された今のお気持ちは?
受賞するとは思っていなかったので、受賞、しかも最優秀賞と聞いて驚きました。
─もともと文章を書くことは得意でしたか?
小学校の頃、日記を書く課題があり、それをきっかけに文章を書くことが好きになりました。担任の先生が毎回コメントを書いて返してくださり、それがとてもうれしく、励みになっていました。
中学の授業では、クラスメイトと二人組になり、コントの脚本を書き実演するという課題に挑戦しました。難しい課題でしたが、プロがどのように脚本を組み立てているのか、自分なりに研究して取り組みました。
ちなみに好きな教科は数学で、実は国語はあまり得意ではありません(笑)。
─作文の題材となったクラリネットについて、現在の取り組みを教えてください。
クラリネットは、始めた当初は音を出すことにも苦戦しましたが、少しずつ音が出せるようになったときの達成感が大きく、これからも続けていこうと思っています。
12月28日にはアンサンブルのコンテスト(予選)があり、八重奏で出場します。予選を突破し、全国大会に進むことが目標です。
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担任の米澤先生によると、阪田さんは時間の使い方がうまく、学業も部活も熱心で、安心感のある生徒さんだそうです。
まじめな一方で、無邪気な一面もあるとのことでした。
今後、阪田さんは星新一賞にも応募をする予定とのことです。「国語は好きではない」と語っていた阪田さんですが、書くことへの挑戦を積極的に楽しんでいる様子が伝わってきました。
受賞の理由は?丹所編集長に聞いてみた
阪田さんの作品が最優秀賞を受賞した背景について、月刊誌『PHP』の丹所編集長にお話を伺いました。
─阪田さんの作品『クラリネットとの時間』が受賞作として選ばれた理由を教えてください。
最終審査会で、満場一致で選ばれました。
クラリネットという楽器や先輩との出会いを描くこまやかさやのびやかさがすばらしいと思います。
特別審査員である作家の佐原ひかりさんは「この人自身の経験や感情が飾り気なく過不足なく表現されている」、カウンセラー・著述業の谷本惠美さんは「情景が目に浮かび、音が聞こえてくる」と評価されました。
─『クラリネットとの時間』を読んで、特に印象に残った点はどこですか?
クラリネットとの出会いがもたらすであろう未来へも思いが馳せられているところがいいなと思いました。
また、阪田さんの作文は手書きだったのですが、文字が丁寧に書かれていて読みやすいことも好印象でした。
もちろん基本は作文の内容で審査するのですが、「人に読まれるものである」ということが意識されているかどうかは読み手に伝わってきます。
─受賞作に共通する特徴や、審査員として注目しているポイントはありますか?
「書き手が本当にそう感じたであろう言葉で書かれている」。
紋切り型の表現や教訓めいた結論ではなく、背伸びしすぎていないかなどもポイントでしょうか。
反対に、せっかくその人ならではと思える表現で書かれているのに、最後で急に模範解答のような「まとめ」で終わるものが少なからずあり、これはとても残念に感じてしまいます。
また、これから増えてくると思われるAIの利用をどう見るかというのは今後の検討課題だと思っています。
─編集部として読者に伝えたい、PHP作文甲子園ならではの良さは何でしょう?
最優秀賞と優秀賞の受賞作が月刊誌『PHP』に掲載される点でしょうか。
作文コンクールはたくさんありますが、全国誌に載る機会はなかなかないのではないかと思います。
作文を読んだ大人の読者から「心が洗われました」「すばらしい文章でした」など感想が届くこともあります。
─これから作文甲子園などのコンテストへ挑戦する中高生へのアドバイスがあれば教えください
書いたものを少し寝かせてから自分で読み返したり、人に読んでもらったりして文章を推敲するといいと思います。
もし受賞を狙いたいのであれば、過去の受賞作に目を通して傾向を探ることも有効かもしれません。
とはいえ、やはり「自分らしく書くこと」、誰かの真似や借りてきた表現ではなく、自分がしっくりくる言葉で書くことが一番です。
書いていて楽しいと思えたら、その作文はまちがいなく良いものだと思います。
「PHP作文甲子園」へのご応募、お待ちしています!
日々の経験が、かけがえのない作品になる
作文甲子園のようなコンテストは、中高生が自分の体験や思いを文章で表現する貴重な機会。阪田さんのように、特別な経験でなくても、日々の出来事や身近な体験を丁寧に振り返ることで、その人にしか書けない作文が生まれます。
背伸びせず、「自分が感じたこと」「心に残ったこと」を丁寧に書くことが大切なのかもしれないと、阪田さんの作品を読んで感じました。
2025年度の受賞作12作品は、『PHP』2026年1月号から12月号にかけて、毎月1作品ずつ誌面に掲載される予定です。皆さんの青春の一ページに触れるのが、今から楽しみです。
※「作文甲子園」は株式会社PHP研究所の登録商標です。































