動画大好き小学生vs寝かしつけたい父 息子の返り討ち作戦には夫婦で完敗⁈【うちのアサトくん第22話】

ネット動画にお絵描き、絵本…とやりたいことが多すぎて、どうしても寝たくないアサトくん。両親が全集中で子どもの寝かしつけに挑むも….、意外な結末に!?
小説家・黒史郎さんと奥様、そして自閉症の息子・アサトくんの日常を描いた、子育て実話ショートショート「うちのアサトくん」をお届けします。
※本稿は『PHPのびのび子育て』2021年3月号から一部抜粋・編集したものです。
※画像はイメージです。
全集中「寝かしつけ」!
「きっつんね、たんぬっき、てんぷーら、つっきーみ♪」
アサトは今日もネット動画に夢中だ。
ホットカーペットに寝そべり、愛用のノートパソコンに「うどんスープ」のCMをエンドレスで流しながら、ご自慢の美声を披露している。
彼にとって動画視聴タイムは、癒やしの泉。1日の中で一番たのしい時間。何ものにも代えがたい、大切なひとときなのだ。
そんなごきげんなときに申し訳ないのだが、そろそろ彼に告げねばならないことがある。アーサト、と優しく声をかける。
「そろそろ、ねんねの時間だよ。パソコンやめて、もうお布団に行こうか」
動画に夢中で、呼びかけに反応しない。
わかる。わかるよ。まだ寝たくないって。
でも、あしたも学校で朝が早いからさ。
「もう、おしまいにして。ねんねしよ」
反応なし。ぴくりともしない。
なぜなら、アサトは動画に夢中だからだ。
――アサトを寝かせるのは至難の業だ。
ネット動画、お絵かき、アクアビーズ。見たいもの、やりたいことがたくさんありすぎて、彼には1日が24時間では足りないのだ。布団に入ったら、その日は終わってしまう。だから「ねんね」を拒絶するのもわかるが、それを受け入れるわけにはいかない。
「おーい、アーサト、ね・ん・ね・だ・よ」
反応なし。もう無視といっていいだろう。
パパの顔も三度までだ。
僕は大きくて息を吸い込んで――。
「こらっ、アサトッ! ねんねしなさい!」
アサトはガバッと起き上がると、ピューッと寝室へ走り去った。
ふぅ……。やっと寝床へ行ってくれた。
だが、これで終わったわけではない。僕は見逃さなかった。彼が走り去る瞬間、絵本を手に持ったのを……。そういうことだ。動画がだめなら、静止画を見て楽しもうって腹なのだ。ヤツはまだまだ寝ない気だ!
僕が目で合図をすると、妻がスッと立ち上がる。ここからは夫婦(ふたり)の仕事になる。
今より我ら夫婦は、挟撃態勢に入る。
アサトを真ん中に両サイドから彼を撫でさすり、甘い声で「ねんね」と囁くことで睡魔を召喚するのだ。彼には眉間を指でこすられると眠くなるという弱点もある。それは妻が担当し、僕は囁きと「撫で」で攻める!
子守歌のように「ねんね」と囁き、睡魔を送り込むイメージで、全集中で撫でさする。
むくりとアサトが起き上がる。
すると、自分の毛布を僕にそっとかけ、
「ねんね」
にこりと笑い、優しい手つきで僕を撫でる。
まさか――仕事で疲れている僕を労って?
ああ、なんて優しく撫でるんだ。いつまでも赤ちゃんだと思っていたけど、そうか、アサトはもうお兄ちゃんなんだ。弟や妹がいたら、こうして寝かしつけてくれるのかな。
アサトの手の温かみに心がほどけていく。
そんな僕の顔を覗き込むと、アサトはそっと布団からはなれ、寝室を出て行った。
やがて、アサトの歌声が聞こえてくる。
その楽しそうな歌声も、どんどん遠くなっていき――。
ガバリと起き上がる。
「僕が寝かしつけられてどうする!」
隣のリビングからは「うどんスープ」の音楽に合わせたごきげんな歌声が聞こえてくる。
ふと横を見ると、妻がすやすやと寝息を立てていた。





























