なぜ「勉強しなさい」は逆効果? 親が子どもの学習意欲を奪う仕組み

永島瑠美
2026.01.15 09:35 2026.01.20 11:50

勉強をする親子

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多くの親が、勉強に対して「大変なもの」「頑張ってやらないといけないもの」というイメージを持っているのではないでしょう。
しかし、教育の専門家である永島瑠美さんは、子どもはもともと「生まれつき勉強が大好き」なのだと語ります。

子どもの学習意欲を下げる親の言葉について、著書から抜粋して紹介します。

※本記事は永島瑠美(著)『東大でとことん教育を学んでわかった! 勉強にハマる子の育て方大全』(青春出版) より一部抜粋、編集したものです。

なぜ、「勉強=嫌なもの」になってしまうのか

勉強する女の子

子どもはみんな、生まれつき勉強が大好き。

ではなぜ、成長するにつれて「勉強嫌い」になってしまうのでしょうか。勉強が嫌いな小学生がこんなにも多いのは、なぜなのでしょう?

それは、多くの場合、「親が持つ勉強への価値観」が影響しています。お母さん・お父さんにとって耳が痛い話なのですが、これが真実です。

「勉強=テストで点を取るためのもの」
「勉強=やらされるもの」
「勉強=苦しいもの」

こうした刷り込みが、子どもの本能的な「勉強大好きモード」を消してしまうのです。生まれつき備わっていた「楽しいから学ぶ」という気持ちを邪魔します。

たとえば、子どもがお絵描きに夢中になっているとき。「そんなことしてないで、先に宿題しなさい!」と声をかけてしまった経験はありませんか?

その声かけをした気持ち、よくわかります。あとから「宿題まだやってない!」と慌てる子どもに付き合うのは面倒ですし、まして「宿題を提出しない」なんてことは親として許すことはできませんものね。

ただ、このように自分のやりたいことを「勉強のせいで」止められたり、「勉強は大人にやらされるもの」というネガティブな経験を繰り返したりする中で、子どもは少しずつ「勉強」が嫌いになっていきます。

つまり、勉強嫌いは先天的なものではなく、周りの大人の「早く勉強しなさい!」「遊ぶ前に勉強しなさい!」という声かけにより、後天的につくられるのです。

小学校入学後に「勉強嫌い」が加速する理由

勉強をする男の子

特に、子どもの「勉強嫌い」が加速するのが、小学校入学以降です。

子どもが幼稚園や保育園に通っている頃は、わが子が勉強できるかどうかなんて気にしていない親が多いでしょう。

ひらがなを一文字書いただけで「わあ! すごい!」と手放しで褒めて、数字を数えられただけで「天才かも!」なんて大騒ぎしていませんでしたか?

私自身もそうでした。次女が3歳のとき、ぐにゃぐにゃの「あ」を書いただけで「すごい! やったね!」と拍手していたものです。子どもも得意げにニコニコしていました。あの顔、忘れられません。

ところが――小学校に入ると、状況が変わってきます。

親の頭の中に「もう小学生なんだから」「ちゃんと勉強しないと困る」という声がちらつくのです。

最初は「自分から机に向かってくれるといいな」と、静かに期待する。

でも、いつまでたっても遊んでばかりいる子どもを見ると、だんだん我慢できなくなってきます。そして、つい口に出てしまう。

「勉強したの?」「宿題をやりなさい!」と。

さらにここで落とし穴が。

子どもが机に向かったとしても、親の目は「正解か、不正解か」にばかり向いてしまうのです。

たとえば――

●ひらがなや漢字を書けば「とめ・はね・はらいをちゃんとしなさい!」
●計算を間違えれば「ケアレスミスが多いんじゃない?」
●国語の読解問題ができないと「ちゃんと読んだの?」

……ね、思い当たりませんか? 私も、つい口から出てしまったことが何度もあります。

勉強に関して、こうしたネガティブな声かけをされ、嫌な気持ちになる。それは、子どもにとって「失敗体験」となります。

親にとっては「そんなつもりじゃなかった一言」であっても、こういう経験が積み重なると、子どもは「どうせ自分はできない」と思い込みます。

一度「やってもムダ」と思ってしまうと、楽しくなくなり、嫌いになり、努力しなくなる。そして、さらに大人からネガティブな声かけをされる……という悪循環にハマるのです。教育学の研究でも、親の過干渉は学習動機の低下と相関することが示されています。

子どもは「親の背中」から学習観を学ぶ

イライラするお母さん

子どもが勉強嫌いになる理由は、親に勉強を強制されたり、ガミガミ言われたりすることだけではありません。もっと根っこのところに「親の影響」があるのです。

少し思い出してみてください。あなた自身、子どもの頃「勉強が好き!」「勉強って楽しい!」と胸を張って言えましたか?

「宿題やりなさいって言われて、いやいや机に向かってたな……」
「勉強=頑張ってやらないといけないこと。そんなイメージしかない」

――そうですよね、それが普通なのです。

実際、あるインターネット調査では、「学生時代に勉強が好きだったか」を一般成人1000人にアンケートした結果、7割が「自分は勉強が好きじゃなかった」と答えたことがわかっています。

つまり、多くの大人が「勉強=苦しいもの」という価値観を無意識に持っている。

そして怖いのは、その価値観がスルッと子どもに受け継がれてしまうこと。

たとえば、子どもに勉強してほしいときに、こんなセリフ言っていませんか?

「早く宿題やりなさい」
「勉強が終わったら、遊んでいいよ」

一見、よくありがちな一言に聞こえますよね。でも少し考えてみてください。

楽しいことに対しては、そんな言い方はしないと思います。

「早く遊びなさい」
「遊びが終わったら、勉強していいよ」

なんて言いませんよね。

つまり、私たちは無意識のうちに「勉強=嫌なもの」という前提で話しているのです。

子どもは大人の言葉をよく聞いています。こういう言葉を繰り返し聞くと、あっという間に「勉強=つらい」って思い込んでしまう。

そしてそのルーツをたどると、多くの場合、お母さんとお父さん自身も、自分の親から「ガミガミ」とセットで同じ刷り込みを受けてきているのです。

刷り込みですから、思い出せない無意識の記憶であることも多いです。

だから余計に、子どもへの声かけにも、無意識に反映されてしまう。

親が

「勉強ってつまらないよな」
「勉強は、子どもがやらなければいけないもの」
「私も算数が苦手だったから、あなたも苦手になるのは仕方ない」

と口にしていれば、子どもは敏感にその空気を感じ取ります。

その結果、直接「勉強嫌いになりなさい!」と教えているわけではないのに、無意識のうちに「勉強=嫌なもの」という考え方が子どもの中につくられてしまうのです。

つまり、子どもの勉強嫌いは、親の「学習観」を鏡のように映した結果なのです。

永島瑠美

ナガシマ教育研究所代表。中学受験ラボ代表。一般社団法人勉強法アドバイザー機構代表理事。東京大学教育学部卒。教育学修士。 2015年から神奈川県横浜市金沢区で学習塾・学童保育を経営し、学習指導にあたる。これまでに指導した子どもたちは1000人以上。保育士、児童発達支援士、児童心理カウンセラー、勉強法アドバイザーの資格を持ち、教育学の研究者としても活動している。日本教育学会、日本教育心理学会等に所属。毎日子どもに向き合う実践的研究者として、最新の教育学研究の知見をわかりやすくお母さん・お父さんに伝えている。「学びを楽しめる社会をつくる」が生涯のテーマ。4児の母。

東大でとことん教育を学んでわかった! 勉強にハマる子の育て方大全

永島瑠美(著)『東大でとことん教育を学んでわかった! 勉強にハマる子の育て方大全』(青春出版)

「勉強しなさい!」
今日も、つい言ってしまった。
そして言ったあとで、ちょっと自己嫌悪。

・やる気がない
・集中力が続かない
・机に向かわせるだけで一苦労
・このままで大丈夫なのか、不安になる

周りの子と比べては、焦ってしまい、ネットで情報を探しては、余計に混乱する。──でも、もし。 勉強が“怒らなくても、勝手に始まるもの”に変わるとしたら?
「やらせるもの」だった勉強が、子どもにとって“最高の遊び”になるとしたら?

大丈夫。子どもは、勉強ができないわけでも、なまけているわけでもありません。
ただ、ハマり方を知らないだけ。
この本は、その「ハマり方」を誰でもできるかたちでまとめた一冊です。