私立中高一貫校はいろいろある 「共学・別学」「進学校・大学付属校」それぞれの良さと落とし穴

矢野耕平
2026.02.16 12:22 2026.03.02 11:50

学校で昼食を食べる中学生・高校生のイメージ

私立中高一貫校と一言で言っても、「共学か、男子校・女子校か」「進学校か、大学付属校か」といった学校のタイプによって、子どもが過ごす6年間の環境や価値観は大きく異なります。

私立中高一貫校を選ぶ際に知っておきたい、それぞれの良さと落とし穴について、塾講師・矢野耕平先生の著書より抜粋してご紹介します。

※本稿は、矢野耕平 (著), ぴよととなつき (著)『中学受験のリアル マンガでわかる 志望校への合格マップ』(KADOKAWA)より一部抜粋、編集したものです。

東京都には「男女別学校」がたくさんある

廊下を歩いている高校生

皆さんは共学校、男女別学校どちらのご出身でしょうか。「共学校」と回答される方が多いでしょう。実際、全国的にみると男女別学校は「希少種」と言えます。文部科学省の学校基本調査(2024年調査)によると、全国に4774校存在する高等学校のうち、「男のみの学校」は92校(1・93%)、「女のみの学校」は266校(5・57%)です。男女別学校自体、約13校に1校しかないのですね。

これを聞くと、特に東京都在住の保護者は驚くかもしれません。そうなのです。東京都にある私立中高一貫校に焦点を当ててみると、事情は変わってくるのです。東京都生活文化スポーツ局の資料「東京都の私学行政」(2024年4月公開)によると、東京都にある私立中学校183校のうち、男子校は31校(16・9%)、女子校は65校(35・5%)、そして、共学校は87校(47・5%)となっています。つまり、東京都の私立中学校のうち半数超は男女別学校なのです。全国的な男女別学の割合と比較するとかなり違うことがわかります。

その東京都であっても、近年は男女別学校が減少傾向にあります。男子校や女子校が共学化する流れが加速しているのです。いまは難関の共学校として知られている学校、たとえば、早稲田実業学校、渋谷教育学園渋谷、明治大学明治、中央大学附属、法政大学、広尾学園、広尾学園小石川、開智日本橋、東京都市大学等々力……これらの学校はもともと男女別学校でした。

なぜ、共学化がこれほど加速しているのでしょうか。その要因として考えられるのは、男女共同参画社会が叫ばれて久しい現代に「男女別学」は逆行していると世間から見られている点です。「社会は男女で構成されているのだから、多感な中高時代は男女同じ学び舎で過ごすのが望ましい」という価値観が醸成された結果、全体的に男女別学校の受験者が激減した時もありました。このままでは学校の存続自体が危ぶまれると考え、共学化に踏み切ったところがたくさんあります。

男子校は「需要過多」になっている

挙手をする中学生

それでは、男女別学校は社会的にその使命を終えようとしているのでしょうか。わたしはそうは思いません。むしろ、ここ最近は男女別学人気が盛り返しており、特に数の少ない男子校にいたっては「需要過多」、多くの男子校で激戦の入試が繰り広げられています。

なぜ、男女別学にふたたび目が向けられるようになったのでしょうか。ここで男女別学の魅力について説明しましょう。

男女別学に長く通っているとジェンダーバイアスを持ってしまいそうに感じます。確かにそういう側面はあるかもしれません。しかしながら、「男だけ」「女だけ」という環境に置かれることで、性差から解放される6年を過ごすことになるという面もあります。

ある女子校出身の人たちはこう証言します。

「共学だとクラスで目立つのは、外見も良くて元気な人たちになるのかもしれませんが、女子校はその人が『面白い人物』であることが大切です」

「『女だから』という言い訳は通用しない環境で過ごしていると、大学に入学してから、男子に甘えること、たとえば、重い荷物を持ってもらうなど……。そういう光景に違和感を抱きます」

男子校卒業生はこんなことを話します。

「男子校はオタクが安心してよりオタク化できるところです。たとえば、何かに熱中しているのって、その分野によっては女子から気持ち悪いと思われてしまうじゃないですか。ところが、男子校は何かに秀でている人が称賛されやすい環境だと思うのです」

単純化して申し上げると、男女別学の在校生たちは「男と男」「女と女」ではなく、「人間と人間」の付き合いになるのです。大人になっても中高時代の友人たちといつまでも仲良くしているのは男女別学出身者が多いように感じるのは、こういう濃い人間関係を築いてきたからでしょう。もちろん、その「濃さ」がゆえに、友人との摩擦が起こりやすい環境にもあると考えますし、実際に男女別学ならではのことだと感じるようなトラブルを耳にすることもあります。

いずれにせよ、保護者は「共学」「男女別学」双方の説明会や学校行事に参加し、先入観をいったん排してわが子の志望校を考えたほうが良いでしょう。

大学受験に価値を置くか否か

受験会場の入り口

つづいて、「進学校」と「大学付属校」について見ていきましょう。こちらも「共学校」と「男女別学」と並んで、学校選びの大切な尺度になります。簡単に言うと、わが子には大学受験を見据えた中高六年間を過ごしてほしいという方針があるのなら「進学校」が良いでしょう。一方、中学入学段階で六年後に進学する大学を早期確定したいというお考えがあれば「大学付属校」が良いでしょう。しかし、どちらが優れた選択だと軽々しく申し上げることはできません。それぞれにメリットもあればデメリットも潜んでいるからです。

進学校と付属型進学校の特色

教室で勉強する高校生

「進学校」とは、大学受験を前提にした学校です。大学受験を見据えたカリキュラムは比較的進度が速く、いわゆる「先取り学習」(一般的に次学年以降の単元を前倒しで学ぶこと)をおこなったり、長期休暇中であっても大学受験対策の講座が設けられていたりします。ほぼ全員が大学受験をするので、「周囲に流されやすい性格」の子どもたちにとっては日々勉学に努めることを「当然」と感じさせてくれる環境です。

もちろん「進学校」といっても大学進学までのルートはさまざまです。たとえば、四谷大塚の合格可能性80%基準で偏差値60以上の進学校になると、国公立や早慶といったいわゆる入試偏差値が高い大学には「一般入試」で挑む傾向が強くなります。よく、指定校推薦(大学側が指定した中高の在校生のみ出願資格のある制度)の充実ぶりが気になる保護者がいますが、このレベルの進学校ではほとんどその推薦制度は利用しません。指定校推薦の基準を満たす子どもたちは、よりレベルの高い大学を目指すのが一般的だからです。

一方、いわゆる中堅の進学校は、指定校推薦制度や総合型選抜(自己推薦制度)を利用して大学受験をする子どもたちの占める割合が高くなります。

また、「付属型進学校(半付属校)」と呼ばれる中高も数多く存在します。系列の大学があるにもかかわらず、その大学へ内部進学する子どもたちはほとんどおらず、実質的に「進学校」と化しているところを指します。たとえば、男子校では獨協、東京都市大学付属、早稲田など、女子校では東洋英和女学院、白百合学園、大妻、共立女子など、共学校では成蹊、東京農業大学第一、東京都市大学等々力、國學院久我山などです。こういう学校は系列大学と連携しているところが多く、中高生にしてアカデミックな環境に触れつつ、他大学への受験対策も充実しているところが魅力です。

もちろん、わが子の大学受験は上手くいくとは限りませんし、いわゆる一流の進学校に在学していて、結果的に思うような大学へ進めないと、周囲に劣等感を抱いてしまい、残念ながら母校への足が遠のいてしまう子どもたちだって散見されるのが実情です。

また、「進学校は塾要らず」はほとんどウソです。この点、学校側に尋ねてもはぐらかされてしまうことがよくあるのですが、高校生にもなると多くの子どもたちが塾・予備校を併用するのが一般的です。

大学付属校の特色

クラリネットを演奏する中学生・高校生

大学付属校はその名の通り、卒業生の大半が系列大学に推薦で進学できる学校です。ただし、大学付属校と一口に言っても、その内部進学率は各校によりかなり違いがあるので、保護者は事前にこの点を確認しておくことが大事です。系列大学に進めない、あるいは敢えて進まない子が何人もいる学校なのか……どちらのタイプの学校なのかを調べておきたいところです。

さて、中学入学時点で系列大学への進学をほぼ「確定」させておくと、結果の読めない進学校とは違い、保護者は何となく安心感を抱くかもしれません。しかし、わが子が中高生活の中で自ら将来像を見出したときに、希望する学部学科が系列大学に存在しない可能性だってあります。そういう場合に慌てて塾・予備校に通うケースがありますが、大学付属校は系列大学への進学を前提にしているがゆえに、進学校と比較するとのんびりした学習カリキュラムが組まれていることが多く、出遅れてしまうことも考えられます。

付言しますと、大学付属校は学習ペースがゆるやかだからこそ、部活動や課外活動に専念できる面があります。広々とした環境を有し、設備も充実しているところが多いのも特徴です。

矢野耕平

1973年東京都生まれ。中学受験指導スタジオキャンパス代表、国語専科博耕房代表。指導担当教科は国語と社会。中学受験指導歴は今年で33年目を迎える。法政大学大学院人文科学研究科日本文学専攻修士課程修了。現在は社会人大学院生として同大学大学院同研究科国際日本学インスティテュート日本文学専攻博士後期課程に在籍し、認知言語学、語用論などをベースに学齢児童の言語運用能力の研究に取り組んでいる。著書に『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』(文藝春秋)など。

中学受験のリアル マンガでわかる 志望校への合格マップ

矢野 耕平 (著), ぴよとと なつき (著)『中学受験のリアル マンガでわかる 志望校への合格マップ』(KADOKAWA)

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