なぜ「不登校の経験」が入試で評価されたのか 総合型選抜で合格したYさんの転機

孫辰洋 (著)中山芳一(監修)
2026.03.18 13:22 2026.03.18 11:50

草原に座る小学生の男の子

近年、小中学校での不登校の児童・生徒数は過去最多の約35万人にのぼります。わが子が学校に行けなくなったとき、多くの親は「このまま進学できるのだろうか」と不安に包まれるかもしれません。

しかし、不登校の経験は決してマイナスとは限りません。自分自身と向き合った時間が、将来の道を見つけるきっかけとなり、大学入試で高く評価されるケースもあります。

不登校という経験を「強み」へと変えたYさんの体験談を、『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』より抜粋してご紹介します。

※本稿は、孫辰洋 (著)中山芳一(監修)『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』(ダイヤモンド社)より一部抜粋、編集したものです。

不登校の経験が強みになる

近年、文部科学省の調査によると、小中学校での不登校の児童・生徒数は約35万人と過去最多を更新しています。不登校を経験すると、「このまま進学できないのではないか」と不安に思う親御さんも多いでしょう。しかし実際には、不登校の経験そのものが、将来の志を見つけるきっかけになり、大学入試でも高く評価されることがあるのです。

不登校を乗り越えた子ども

学校の教室、机と椅子と黒板

Yさんは小学生と中学生のとき、不登校を経験した。当時のYさんにとって、学校は安心できる場所ではなく、ただいるだけで苦しい空間だった。学校に行けない自分に価値を見出せず、ずっと自分を責め続けていた。「なぜ自分は学校に行けないのか」「学校に行けない自分はダメな人間なのか」。そんな問いに苦しみ続けた。

しかし、この苦しい経験がYさんの人生を大きく変えることになる。通信制の高校に進学し、Yさんは心機一転、自分と同じように不登校で苦しむ子どもたちを支援する活動に参加することを決めた。不登校経験者の高校生が不登校・苦登校の小中学生に居場所を提供する団体に所属し、月に3〜4回の会議を通じて、ピザづくりや交流の場を企画してきた。

そこで出会った子どもたちも、かつての自分と同じように「学校に行けない自分は悪い」と思い込んでいた。その姿に触れて、Yさんは「どうして社会は、学校に行けないだけで子どもにそんな気持ちを持たせてしまうのか」と考えるようになり、教育を社会事象として捉え、不登校に対する公教育や社会全体のありかたを問う教育社会学に強く惹かれるようになった。

学校生活でも積極的に行動し、学級委員長や修学旅行委員長を務めてリーダーシップを発揮。不登校支援をテーマに2万字の論文も書き、探究学習の成果物として提出した。こうした挑戦が実を結び、総合型選抜入試で関西学院大学社会学部に合格することができた。

勉強 仕事

Yさんの事例が示すのは、不登校という経験が、将来の志を見つける大きなきっかけになり得るということです。

重要なのは、Yさんの家族が不登校を「失敗」として責めるのではなく、通信制高校という新たな選択肢を提示し、本人が自分のペースで学べる環境を整えたことです。全日制高校に無理に通わせるのではなく、「この子に合った学びかたは何か」を一緒に考え、通信制高校という道を選択した。この家族の姿勢が、Yさんに「自分のペースで挑戦していい」という安心感を与え、新たな一歩を踏み出す勇気につながったのです。

大学入試、特に総合型選抜では、単なる学力テストの点数だけではなく「自分の経験から社会的な問いを立て、その課題にどう向き合ってきたか」というプロセスが重視されます。Yさんは、不登校を後ろめたい過去として隠すのではなく、その体験を自らの研究テーマへと昇華させました。「学校に行けなかった」という個人的な出来事を、「なぜ学校に行けなくなるのか」「どのような教育のありかたが必要なのか」といった普遍的な問いに変換し、真剣に探究する姿勢を示すことで、大学側に「この学生は本気で教育を変えようとしている」という強いメッセージを伝えることができたのです。

不登校を経験した子どもにとって何よりも大切なのは、「安心できる居場所」です。Yさんの場合は通信制高校で、学力や出席日数といった評価のものさしをいったん脇に置き、生徒の存在そのものを受け止めてくれる先生と出会いました。その「受け入れられる感覚」が、再び意欲を取り戻す土壌となり、次第に挑戦を積み重ねることができるようになったのです。

このように、不登校という経験は単なる挫折ではなく、むしろ自分らしい学びかたを模索し、社会とつながる大切な転機となり得るのです。Yさんの歩みは、そのことを鮮やかに示しています。

孫辰洋

リザプロ株式会社 代表取締役。
2000年、埼玉県生まれ。2023年、早稲田大学政治経済学部卒業。
中国系日本人の両親のもとに生まれ、何度か日本と中国を行き来しつつ、中学校の途中から本格的に日本に住む。受験生時代、中国の名門・清華大学と早稲田大学に総合型選抜入試(AO入試)で合格。この時中国で出会った現地の受験生と日本の同世代の人たちとの大学や勉強に対する考え方の違いに直面し、日本の教育業界に携わることを決意する。2019年、早稲田大学政治経済学部に入学、同時に起業。自らの総合型選抜入試での経験を活かし、オンライン家庭教師を開始し、人気を博す。2020年6月にリザプロ株式会社を設立し代表取締役に就任。総合型選抜入試(AO入試)に特化した塾として、東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学など、多くの名門大学に合格者を輩出。2025年6月から、大学の推薦入試情報を掲載する「推薦入試データベース」を同社の推薦入試専門メディア「未来図」より無料公開。応募条件や日程などの入試情報、過去の合格者の志望理由書が閲覧できる。早稲田大学のビジネスコンテスト「WASEDA EDGE」最年少審査員、日本ITビジネスカレッジ客員講師。著書に『小学生が90日で英検2級に合格する!』(新流舎、2024年10月)がある。
リザプロ:https://rizapuro.net/

12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた

孫辰洋 (著)『12歳から始める 本当に頭のいい子の育てかた』(ダイヤモンド社)

「勉強が苦手」「学校に行きたくない」「塾にはもう行きたくない」
「勉強よりも好きなことがある」「中学受験にうまくいかなかった…」
こうした悩みを抱えていた子どもたちが、実は推薦入試で名門大学に進学していることをご存じでしょうか。

本書では、東大・京大・早稲田・慶應・旧帝大・GMARCHなどに推薦入試で合格した学生の1万件以上の志望理由書を分析。
その結果、彼らに共通する「子どもを伸ばす10の力」が明らかになりました。

12歳は、小学生から中学生へと環境も価値観も大きく変わる時期。この時期に差がつくのは、勉強の得意・不得意ではなく、自分で考え、選び、続けられる力です。
本書では、「自分の力で課題を見つけ、解決し、社会の中で生き抜いていける子」を「本当に頭のいい子」と定義します。

そして、推薦で名門大学へ進んだ子どもたちは、例外なく、この10の力を12歳ごろから育てていたのです。

本書では、その10の力をどのように家庭で育てていけるのかを、実際の体験談とともに、無理なく実践できる形でわかりやすく解説します。

「うちの子はこのままで大丈夫?」
そんな不安に寄り添いながら、子どもの将来の選択肢を広げるための一冊です。