「甘えさせる」ほど子どもは伸びるのはなぜ?

高橋愛子

しっかりと「甘えさせる」。ただそれだけで、手をかけずとも、子どもは驚くほど健全に成長していきます。家庭教育研究所代表の高橋愛子さんが、甘えさせることの大切さについて語ります。

※本稿は『PHPのびのび子育て』2011年12月号(PHP研究所)から一部抜粋・編集したものです

高橋愛子(家庭教育研究所代表)
家庭教育研究所代表。1938年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。3男1女の母親。カウンセラー、セラピスト、ファミリー・コンサルタントとして、企業や学校などで研修を行なう。2009年より全国の親子支援者と「安心親子応援団」を結成。著書に『頭がいい親の上手な叱り方』(コスモトゥーワン)など多数。

わがままにはなりません! 甘えさせると3つの力が育つ

「甘えさせる」とは、単に甘やかすこととは全く異なります。その瞬間に子どもが感じていること、求めていることを丁寧に受けとめ、気持ちを存分にくみ取って「あなたが大好き」「いつでも味方だからね」「それでいいんだよ」など、子どもが喜ぶ言葉をたくさん返すことです。

そして、無条件であるがままの子どもを認め、喜びと安堵感、幸福感を与えることです。

知力と行動力が身につく

喜びという命のご馳走をいっぱい食べられた子は、気持ちが十分に満たされ、心がすっきりしているので、しっかりと生きていくための知力を蓄えることができます。常にエネルギーがムクムクとわきでて、自ら考え、行動することができるようになり、心がどんどん成長していくのです。

「わがままになるのでは?」などと心配する必要は一切ありません。安心して「甘えさせる」子育てを実践してみてください。厳しいしつけが生きるのは、たっぷり甘えさせた次の段階と考えましょう。

「甘えさせる」と子どもがどのような段階を経て成長していくのかを3つのステップに分けてご紹介します。

STEP1 情感が満たされ「やる気」がわいてくる

何ものにも邪魔されることなく、自分の思いを存分に温かく受けとめてもらえ、「あなたが大好きよ!」と言われながらたっぷり甘えることができた子は、心が大きな喜びに満たされます。前述したように、「喜びは命のご馳走」です。

おいしいご飯を食べると、お腹も心も幸せで満たされてエネルギーがわいてきますが、心のご馳走も同じなのです。たくさん食べることができるほど、心のエネルギーがわいてくるのです。

ご馳走がいっぱい食べられると、大きな満足を感じます。「うれしい」「楽しい」「幸せ」といった情感が満たされ、「生まれてきてよかった」と思い、お父さんやお母さんを大好きになり、世の中のすべてが大好きになります。そして何よりも自分を大好きになります。

すると、生きていること自体がうれしくてたまらなくなります。そして、心の中がやる気でいっぱいに満ちて、何をするにも精一杯、思い切りやろうとするようになるのです。