子どもの感情を豊かにする親の言葉…幼児から小学校低学年までの子育てのポイント

渡辺弥生

子どもへの教育は「知識」や「思考」ばかりに偏ってはならないものです。

感情の豊かな子どもに育てる「感情の教育」について、法政大学文学部教授の渡辺弥生氏に伺いました。

※本稿は、渡辺弥生 著『人前での叱り方・言い聞かせ方』(PHP研究所)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

そもそも人間の「感情」とは?

人間にはいろいろな感情があり、「感情の動物」といわれているくらいです。

喜んだり、怒ったり、悲しんだりと、感情はさまざまに変化し、このうえない幸せを感じている矢先に、奈落の底に突き落とされるような絶望を味わうこともあります。

感情とは実に繊細で複雑、そして一瞬で目まぐるしく変化するものでもあります。

子育てをしているお母さんならおわかりでしょう。生まれたばかりの赤ちゃんは泣いてばかりいますね。

「泣く」のは、悲しいからではなく、不快だからです。おなかがすいている、おむつが濡れている、というさまざまな不快感から泣いています。

人間の感情は、0歳の快・不快から始まり、2歳までには怒り、恐れ、愛情、嫉妬を覚えるなどと、情緒が細かく分かれていきます。そして2歳くらいになると、感情を言葉で表すようになります。

他人の表情からの感情の理解もできるようになり、幼児期の終わりごろには、感情は複雑なものだという感覚ももてるようになるようです。「お母さんのこと好き?」「うん。でも、怒ると怖いよ」といった表現ができるようになります。

さらには、感情を調整するという力が発達してきます。お絵描きの時間に熱中できたり、またやめるように言うとやめられたりといったコントロールができるようになります。

このような「感情」は、私たちの「考えること(思考)」「行動」に大きな影響を与えています。まず、感情と行動との関係について説明しましょう。たとえば、悲しいから泣く、怒ってたたく、などと感情によって行動が大きく変わってきますね。

反対に、「行動」が「感情」に影響を与える場合もあります。スポーツをすると楽しくなる、ゲームで遊んでいて負けたら悔しい、などです。ときに考え方を変えることによって、感情が変わることがよくあります。

たとえば、お気に入りのマグカップを割ってショックを受けても、「まあ、いいか。またマグカップを買う楽しみが増えた」とポジティブにとらえられれば、くよくよしていたことが嘘のように気分が晴れるといったことです。

このように、「感情」と「思考」「行動」は、切っても切れない関係にあります。

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