脳は赤ちゃんがおなかの中にいるときから作られ始めていますが、生まれてすぐはまだまだ未熟な状態です。一番大きく脳が成長・発達するのは、生まれてから6歳頃までと考えられています。
 

 

ですから、この時期に親をはじめとする周りの大人たちが子どもとうまく関わり、上手に脳に刺激を与えて育ちを促すことは、その子の無限の可能性、才能を伸ばすために重要なのです。

 

でも、きちんと脳の育ちの原理を理解しておかないと、良かれと思って行なった言動で、逆に子どもの可能性や才能の芽をつぶしてしまうことにもなりかねません。ぜひ、「脳育ての正しい極意」を学んで、子どもが一生幸せに過ごせる脳にし、才能を伸ばしていきましょう。

 

 

才能を引き出すために、2つの脳を鍛えよう!

2~6歳の子どもは、脳の成長がめまぐるしく、昨日より今日、そして明日と、できることが増え続けます。脳は構造や機能の違いから「古い脳」と「新しい脳」に分けられます。幼児期は特に「古い脳」をしっかり育てることが肝心です。

 

●古い脳――五感からの刺激で育つ
脳幹や間脳など脳の芯にあたる部分の総称で、呼吸や睡眠、食欲や情動など生きるための基本機能を担っています。日常生活で受ける五感からの刺激で、2~6歳の時期に盛んに育ちます。

 

●新しい脳――親の言動によって育つ
大脳新皮質と呼ばれ、いわゆる「お利口さん脳」のことです。言語や手指を使った細かい動きなど、人間ならではの機能を担っています。親の言葉や仕草を見聞きすることで育ちます。

 

●前頭葉
新しい脳の中で、論理思考をはじめとする高度な機能を司り、人間社会でうまくやっていくための「心」も担う重要な部分です。

 

★column★
子どもと触れ合って、“シナプス”を増やそう!

脳には神経細胞と呼ばれる細胞があり、神経細胞同士がうまくつながることで脳がよく働きます。この神経細胞同士のつながりをシナプスと言い、シナプスは対話やスキンシップなど五感からの刺激によって作られます。親がたくさんの刺激を繰り返し与えれば、シナプスの量が増え、「良い脳」へと育つのです。

 


大きくなったら差がつく! 「脳育て」で欠かせない3つのこと

 

(1)規則正しい生活で、まずは「古い脳」を鍛えよう

幼児期に何より大事なのは、生涯生きていくための土台とも言える、古い脳のシナプスをできる限り増やすことです。そのために毎日の生活において、しっかり寝る、だいたい同じ時刻に起きる、きちんと3食食べる、たくさん遊ぶ、を規則正しく繰り返して、脳に五感からの刺激をたくさん入れましょう。
大人の生活リズムに合わせた適当な生活を送っていても、子どもの脳は発達することは発達します。でも脳内のシナプスは必要最小限しか作られないので、出来上がった脳はバランスが悪く不安定です。思春期前後になって、ちょっとしたトラブルから心身の不調を訴えたり、学力が身につかない子どもたちのほとんどは、ここに原因があるのです。


【実践すると脳は……】“最高のサイクル”が定着する
体内時計がしっかり働くので、夜は自然に眠くなり、朝は自然に目が覚める脳になります。日中は活動的になり、きちんと空腹を感じます。これは生涯必要な基本の機能です。

 

【子どもはこう変わる!】手がかからなくなる
朝からニコニコ笑顔で起床。昼間は元気よく走り回り、食事はきれいに完食。夜は8時頃には目を開けていられないくらい眠くなり、一言で言えば「手がかからない子」になります。

 


(2)会話と遊びで、「新しい脳」を育てよう
新しい脳も盛んに発達している幼児期の子どもは、特に親など身近な大人がしゃべっている言葉や、している仕草をじっと見聞きして盛んに真似をします。大人の言葉や仕草が、重要な脳への刺激なのです。多く刺激が入ればシナプスが増え、脳の高度な機能が無限大に発達していきます。
ただし、映像からではこのような刺激はあまり入りません。子どもと一緒にいるときは、テレビや携帯電話などは遠ざけて、親子で向かい合いましょう。なるべく多くの語彙を使って、今日あった出来事や季節の行事の話など、きちんとした文章で語りかけるようにしてください。遊ぶときには、親も手足を動かして身体を触れ合わせるような遊びをすると、刺激がたくさん入って効果的です。

 

【実践すると脳は……】学習の土台ができる
新しい脳には無数の神経細胞があります。この神経細胞が幼児期にまんべんなく刺激されることで、学習の土台が出来上がり、小学校での勉強にすんなり移行しやすい脳になります。

【子どもはこう変わる!】好奇心旺盛で活動的に
新しい脳が活発だと、好奇心旺盛になり、見るもの聞くものすべてを知りたがり、触りたがります。身体も活発に動かすので、さらに刺激が入り、「良い脳」に育ちやすくなります。


(3)論理思考の土台を作って、心を強くしよう
前頭葉は、論理思考や計画性などを駆使して問題を解決し、社会でうまくやっていくために必要な脳の部位です。最終的に完成するのは18歳頃ですが、幼児期から周りの大人が、論理的な捉え方を言葉にして伝えていくことで、子どもの脳にも論理的な思考が作られていきます。
例えば、「まだ3時だし、心配しなくても大丈夫。次の電車に乗れば間に合うよ」「お金が足りないから、今日はジュース買えないね」というように、そうである理由、物事の経緯を文章にして正しく伝えましょう。また子ども自身にも、「ジュース」だけではなく「ジュースください」と言わせるなど、きちんとした文章で自分の意思を正確に伝えさせる習慣をつけることが大事です。


【実践すると脳は……】論理思考+前向き思考が育つ
学習に大切な論理思考が得意になります。それだけでなく、怒りや不安などネガティブな感情が起こった場合にも前頭葉を働かせ、「~だから大丈夫!」と自ら安心を作れる脳へと育ちます。

【子どもはこう変わる!】心が安定し、親を信頼する
大人から論理をきちんと伝え、子どもも的確に意思を伝えることができると、子どもの情緒が安定し、相互信頼が生まれます。すると、思春期以降も何でも親に話せる子になります。

 


日々の暮らしが要です!脳を育てる親子習慣

子どもとの時間を大切にし、一緒に楽しく過ごすことで、心も脳も元気に育ちます。

 

■親子で“朝活”を始めよう
睡眠中に脳内でシナプスが整理されるので、朝は頭がすっきりした状態になります。ですから起床直後は脳を育てるチャンスです。親子で朝陽とともに起床し、散歩や料理を一緒にしたり、会話を交わしたりして朝の活動を充実させましょう。親子そろって脳がグングン育ちますよ。

 

■言葉を引き出す会話を
例えば絵本を読んだ後に、「おもしろかったね」だけでは会話にはなりにくいでしょう。でも、「くまさんのおうちはどこだった?」「お山だよ」「おじいちゃんが待っているのかな?」「違うよ~ママが待ってるんだよ」などと子どもの言葉を引き出すような会話を心がけると、脳をたくさん刺激できます。

 

■食事中はテレビを消そう
テレビは脳に強い光と音の刺激を与えます。すると食事からの五感の刺激(匂い、味、色、音、温かさ)がまったく入らず、古い脳が育ちません。それだけではなく、お箸を使ったり会話をしたりという新しい脳への刺激も減ります。脳育てのためには食事時のテレビはNGです。

 

 

成田奈緒子 なりた なおこ

文教大学教授・小児科医
神戸大学医学部卒業。米国セントルイス・ワシントン大学医学部へ留学後、筑波大学基礎医学系講師などを経て現職。子どもの脳の発達に合わせた育児論に定評がある。『早起きリズムで脳を育てる』(芽ばえ社)他著書多数。

 

 

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『PHPのびのび子育て』は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌です。2013年10月号の特集は「『才能』を伸ばす親、つぶす親」です。



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