子どもがはっきりと「NO!」を言えるようになるためには、愛情や信頼を土台とした「NO!」と言える親子関係を築くことが大切です。
植松紀子著『はっきり「NO!」と言える子に』~自分の意思を伝えられる子どもは伸びる~(家庭直販書)の転載第2回となる今回は、子どもを褒めることや親子のコミュニケーションについて考えてまいります。
 
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子どもは、お母さんから褒められると喜びます。大人もそうでしょう?
誰だって人から褒められればうれしいものです。
 
しかし、「褒める」という行為は一方的なものです。立場の上の者が下の者に対して、一方的に「評価」をしているということです。
時代劇を想像するとわかりやすいでしょう。
お殿様が手柄をあげた家来に、
「よくやった! えらいぞ! 褒めてつかわそう。ほれ、褒美じゃ」
などと言うシーンはよくあります。しかし、お殿様と家来が逆なら、こういう会話はないでしょう。家来がお殿様に向かって、
「よくやりましたね! えらいです! 褒めて差し上げますよ!」
と言うことは、まずありえません。
 
私は親子間でこのような立場の差をつくることをよしとしていません。人によっていろいろな考え方があると思いますが、実は、私は「褒めて育てる」という考え方はしていないのです。
 
私が講演会などでよくお母さんたちにお話ししているのは、
「褒めるのではなく、勇気づけをしましよう」
ということです。
 
お母さんにとって愛するわが子は、守るべき小さな存在です。しかし、お母さんと子どもは、一人の人間と人間。対等に向き合ってコミュニケーションをとり、信頼関係を育んでいってほしいと思っています。
また、「褒める」は評価ですから、子どもが同じようによいことをしたとき、前回と同じように褒められなければ、不満を感じてしまいます。
先の例で、家来が二度目に大きな手柄を立てたとき、一度目と違って二度目は褒美が少なかったら、家来は「なぜ、褒美が少ないんだ!」と不服に思うでしょう。褒美がまったくなかったら「今回もがんばって結果を出したのに、なんで褒美をくれないんだ!」と怒ってしまう可能性もあります。
もしくは、もともと自分の評価が低い家来なら「やっぱり私はダメなんだ……」と落ち込み、やる気がそがれてしまうでしょう。
「褒める」にはこういった悪い影響もあるのです。
 
ですから、例えば子どもが進んでお手伝いをしたときは、
「お手伝いして、えらいわ!」
と褒めるのではなく、
「お手伝いしてくれて、お母さん、うれしいな。ありがとう!」
と、お母さんの素直な気持ちと感謝の言葉を伝えてください。これが「勇気づけ」です。
 
子どもは、自分のしたことでお母さんが喜んでくれることがとてもうれしく、
「よし、次もがんばろう!」
「次はこういうことをやってみようかな」
と、自分の行動に自信をもつことができ、勇気が湧いてくるのです。
さらに、「褒める」にはお母さん自身の気持ちは含まれていませんが「勇気づけ」では、子どもに対するお母さんの気持ちがストレートに伝わります。ここも大切なポイントです。
 
反対に、子どもが悪いことをしたときも、「叱る」ではなく「勇気づけ」をしましよう。
例えば、子どもがイライラするあまり、わざとコップを割ったとしましょう。このときお母さんは、
「こんなことしちゃダメじゃない!」
と叱りつけるのではなく、
「わざとコップを割るなんて。お母さん、イヤだからやめて」
と・お母さんの「イヤ」「やめてほしい」という気持ちをはっきりと伝えるのです。
もしも子どもが、社会的に悪いことをしたり、他人に迷惑をかげたり、自分の命を
粗末に扱うようなことをしたときは、
「そんなことしちゃダメ!」
と、はっきり「ダメ」と示さなければいけません。そのうえで、
「あなたがそんなことをしたら、お母さん、悲しいよ」
と、お母さんの「悲しい」気持ちを伝えてください。
 
このように、お母さんは日常のなかで自分の素直な気持ちを、子どもにどんどん伝えていきましょう。回りくどい言葉だと子どもはピンとこないことがありますから、なるべく端的な言葉で。「うれしい」「楽しい」「大好き」「素敵」「悲しい」「寂しい」「悔しい」「イヤ」「嫌い」などです。
子どものやることを見ていると、そういったお母さんの「感想」はたくさん出てくるのではないでしょうか。
例えば、子どもの描いた絵を見たとき、
「わあ、きれい! お母さん、こういう絵、大好き。楽しい気分になったよ! なんでこの絵を描こうと思ったの?」
子どもがごはんを残さずに食べたら、
「きれいに食べてくれて、お母さん、うれしいな。明日は何をつくろうかな?」
などです。
ここで「きれいに描けてすごいわね」「ごはんを残さず食べてえらいわね」と言うと、お母さんの評価で話が終わってしまいます。しかし、お母さんが自分の素直な気持ちも伝えて、
「楽しい気分になったよ! なんでこの絵を描こうと思ったの?」
「明日は何をつくろうかな?」
などとつづけていけば、会話をどんどん膨らませることもできます。
 
お母さんがそうやって子どもとコミュニケーションをとるうちに、子どもも自分の素直な気持ちを伝えられるようになっていきます。
 
 
 
 
 

 
 

【出典】 『はっきり「NO!」と言える子に』 (PHP研究所)

 

 
【著者紹介】
 
植松紀子 うえまつ・のりこ)
 
日本大学心理学科卒業。臨床心理士、日本大学講師。武蔵野赤十字病院こどもの相談室、神奈川県内の児童相談所、「こどもの城」小児保健部を経て、現在「植松メンタルヘルス・ルーム」を主宰。自治体の乳幼児健診にも携わり、多くの母親の悩みを聞いている。三児を育てた経験と五人の孫と過ごす日々、40年間育児相談を受けてきた経験に基づく子育てノウハウには定評がある。
著書に『[1~6歳]子どもにさせていいガマン・わるいガマン』(PHP研究所)、『「叱ってばかり…」の毎日が変わる! 6歳までの子どものほめ方叱り方』(すばる舎)、共著に『赤ちゃんあそぼ!』(赤ちゃんとママ社)などがある。