子どもがはっきりと「NO!」を言えるようになること。それは、子どもがイキイキと成長し、人生を歩んでいくための原動力になります。

そして、イキイキとした子どもの姿は、お母さんはもちろん、周りの人々をもっと幸せにしてくれます。植松紀子著『はっきり「NO!」と言える子に』~自分の意思を伝えられる子どもは伸びる(家庭直販書)から、子どもが「NO!」と言えるようになるための親子のコミュニケーションをご紹介します。

 

kazoku_aozora.jpg

 

*  *  *
 
子どもがお母さんに対して「NO!」を言えるように、子どもとコミュニケーションをとっていきましょう。
 
お母さんが身構える必要はまったくありません。日常のほんの一コマでできることばかりです。そして、何事も一朝一夕にはいきませんから、焦らず、一歩ずつ。お母さんは子どもの様子を見ながら、さりげなく働きかけてください。
 
まず、お母さんからいちばんに子どもに伝えてほしいことは、「NO!」を言ってもいいのだということです。
イヤだなと思っていても「NO!」が言えない、「NO!」の言い方がわからない子どもは、相手を恐れている場合と、相手の気持ちを気づかっている場合があります。
子どもは子どもなりに、その場の空気読んでいたり、相手の気持ちを気づかったりしています。控えめで優しい子ならなおさらです。
ですから子どもに、
「イヤだな、と思ったら、正直に『イヤ』と言っていいのよ」
と、はっきり言葉で伝えましょう。
 
小学四年生の男の子の例をあげましょう。
男の子のお父さんは単身赴任をしていて、平日は子どもと一緒に過ごせません。お父さんの赴任先は車で三時間くらいの地ですが、お父さんは男の子に寂しい思いをさせないように、毎週末、家に帰るようにしていました。
男の子は、そんなお父さんの気持ちがうれしくて、毎週土曜日、お昼ごろに帰ってくるお父さんを心待ちにしています。そして土曜日の夕方は、お父さんと大好きなバドミントンで遊ぶことを楽しみにしています。
 
しかし、ある週の土曜日、男の子はとても疲れを感じていました。それでも帰ってきたお父さんを笑顔で出迎え、平然としています。そして夕方になって、お父さんからバドミントンに誘われると、喜んで一緒に遊びました。
「お父さんは仕事で疲れていても、ぼくのために帰ってきてくれているんだ。ぼくが疲れているなんて言えない……」と心のなかで想っていました。
ところがバドミントンで遊んでいる最中、男の子は何度も身体がだるくなり、足元がふらふらしています。異変に気づいたお父さんが男の子に駆け寄ると、男の子は高熱を出していました。
 
こんなときもまだ、男の子はお父さんに対して申し訳ない気持ちでいっぱいになっています。
「せっかく遊んでくれていたのに、熱を出しちゃってごめんなさい」と。
こんなときはお母さんから、子どもに声をかけてあげてください。
「お父さんと毎週、バドミントンで遊んでるから、『今日はやりたくない』って言いにくかったんだね」
と、まず男の子の気持ちを察して寄り添うことが大切です。そして、
「でも、バドミントンをやりたくないときは『やりたくない』、できないときは『できない』って言ってもいいのよ。お父さんもあなたと遊ぶことを楽しみにしているけれど、無理をしてしんどくなるより、正直に言ってもらえるほうがうれしいんだから」
「調子が悪いならガマンせず、きちんと言わなきゃダメ。今回はちょっとした風邪だからまだよかったけれど、調子が悪いのを隠すと、大変な病気になっちゃうときもあるんだから。そんなことになったら、お母さんも、お父さんも、悲しいよ」
子どもに伝えるのはお母さんでもお父さんでもよいですが、大好きなお父さんに対しても「NO!」を言っていいことと、子どもが無理をしてしんどい思いをしていると悲しいという親の気持ち、体調不良を隠すのは不要なガマンであることを伝えましょう。
 
このように、日常のいろいろな場面で「正直に言っていいのよ」「イやならイヤでいいのよ」と声をかけていくことで、子どもの心はしだいにほぐれていきます。
 
 
 

 
 

【出典】『はっきり「NO!」と言える子に』 (PHP研究所)

 

【著者紹介】

 
植松紀子(うえまつ・のりこ)
 
日本大学心理学科卒業。臨床心理士、日本大学講師。武蔵野赤十字病院こどもの相談室、神奈川県内の児童相談所、「こどもの城」小児保健部を経て、現在「植松メンタルヘルス・ルーム」を主宰。自治体の乳幼児健診にも携わり、多くの母親の悩みを聞いている。三児を育てた経験と五人の孫と過ごす日々、40年間育児相談を受けてきた経験に基づく子育てノウハウには定評がある。
著書に『[1~6歳]子どもにさせていいガマン・わるいガマン』(PHP研究所)、『「叱ってばかり…」の毎日が変わる! 6歳までの子どものほめ方叱り方』(すばる舎)、共著に『赤ちゃんあそぼ!』(赤ちゃんとママ社)などがある。