子どものしつけの超基本【トイレ・ご飯・睡眠】

菅原裕子(NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事)
2023.11.06 13:43 2015.05.25 12:00

○人間は快を求めてご飯を食べる

ご飯を前に表情を歪める子

2つめの変な質問です。

「あなたはなぜ、ご飯を食べるのですか?」
「ご飯を食べると、どんないいことがありますか?」

私たちは、お腹がすくとご飯を食べます。空腹は不快です。だからご飯を食べます。すると、お腹がいっぱいになり、快が得られます。

赤ちゃんは空腹であることを泣いて知らせます。空腹のときは、食べ物を摂ることを教えなくても子どもは知っています。人間は本来、快を求めます。快を求めてご飯を食べます。だから、あえて食べることをしつけようとしなくても、子どもは自然にしつかります。

食が旺盛な子どもがいれば、細い子もいます。さっさと食べる子がいれば、時間がかかる子もいるでしょう。その子ならではの傾向を受け入れて、食卓を楽しいものにすれば、食のしつけに悩むことはありません。

ところが、親が神経質になって、これだけ食べないといけないとか、早く食べないといけないとか、汚してはいけないとか、いろいろ注文をつけ始めると、子どもが自然に食を楽しむことを邪魔してしまいます。

親が教えるべきは、「何を食べるか」と「どう食べるか」くらいでしょうか。身体にいいものを、規則正しく食べることを楽しみ、食卓を人が集まる場にすることです。食べ物を大切にすることも教えましょう。食事のマナーを教えましょう。そこで、子どもはコミュニケーションも学びます。

○脳が求めるごちそう=睡眠

もうひとつの生理的な快が睡眠です。食べることと同様、眠ることは私たちの健全な日常生活を維持するうえで最も重要な要素です。

規則正しく食べる習慣を身につけさせるのと同様、子どもが充分に眠るよう、子どもの睡眠習慣を整えることが大切です。

睡眠時間は人によって、多少の差があるでしょう。まず、お子さんに必要な睡眠時間を知ることから始めましょう。わが家では、小学校低学年の間は10時間寝ていました。高学年になると9時間に減りました

夜九時までに床に就くように習慣づけると、充分に睡眠をとって、朝は遅くとも七時前には機嫌よく自分で起きてこられます(朝、自分で起きる習慣づけが難しいという親がいます。その原因のひとつに、早寝の習慣がついていないことが挙げられます)。

睡眠は脳のごちそう。脳が快を求めて必要とする睡眠の時間を、充分に与えてあげてください。それが生活全体を整えます。

○お片づけなんてしたくない

子どものしつけの超基本【トイレ・ご飯・睡眠】の画像1

あなたはお片づけが好きですか? 好きだと答える人もいるでしょう。

お片づけの何が好きですか? ほとんどの人が、きれいになって、家が気持ちよくなるのが好きだと言うでしょう。

お片づけそのものが好きだ、という人もいるのでしょうか。ほとんどは、お片づけしたあとの状態と、それが気持ちいいことが好きで、私たちは片づけるのではないでしょうか。

ところが、2歳児にはその感覚はわかりません。まず、まだ彼らには、散らかっていて嫌だ、という感覚がないでしょう。また、片づいて気持ちがいいと思う充分な体験がありません。幼い子どもには、まだ充分な想像力が育っていないため、片づいたら気持ちよくなるという想像ができません。

排泄や食べることなどの生理的な快とは異なり、お片づけの快は、幼い子どもの生理的なプログラムにはないと考えていいでしょう。まさに、お片づけが快であることを教えるのは、親が行うしつけです。

児童期の子どもたちの勉強も同じです。自分が興味のあること以外、勉強が快であるプログラムはありません。お片づけと同様、親は、勉強が快である体験をたくさんさせることが習慣づけの第一歩です。

ですから、「片づけなさいと言ったでしょ!」「なぜ勉強しないの?」と責めないでください。それは、子どもの不快をつくることになります。不快をつくるということは、「やらないようにしつけている」ということです。

生理的なプログラムにないものは、時間をかけて気長に取り組むことです。教えてもらえれば、子どもたちはいつか、片づけの快を体験するようになります。勉強の意味も理解します。うまくいくしつけの秘訣は、気長にゆっくり、繰り返しです。

菅原裕子

菅原裕子

1999年、有限会社ワイズコミュニケーションを設立し、社員一人ひとりの能力を開発することで、組織の変化対応力を高めるコンサルティングを行う。仕事の現場で学んだ「育成」に関する考えを子育てに応用し、子どもが自分らしく生きることを援助したい大人のためのプログラム<ハートフルコミュニケーション>を開発。2006年、NPO法人ハートフルコミュニケーションを設立し、各地の学校やPTA、地方自治体主催の講演会やワークショップでこのプログラムを実施し、好評を得る。また、ハートフルコーチ養成講座を開設しコーチの育成に力を注ぐ。