噛みつく、叩く…乱暴に振る舞う子どものしつけ

菅原裕子
2023.11.06 13:45 2015.05.26 12:00

○子どもがうまく表現できた瞬間を捉える

親が話してみせた直後も含めて、よく観察していると、子どもが言葉で自分を表現する瞬間があります。この瞬間を逃さないことです。言葉は未熟です。それでも何を言おうとしているのかを理解して、「貸してって言えたね」「お話できたね」と、フィードバックをしてあげてください。その瞬間、子どもは、「これを言えばいいんだ」「こうすればいいんだ」とわかります。そうすることで、具体的にどういう状態が望まれているのかを、子どもに伝えることができます。

大切なのは、その瞬間であることです。つまり、子どもなりに「貸して」と言ったら、親が笑顔で「言えたね」と喜んでいる。子どもはこの瞬間、「おもちゃがほしいときは、『貸して』と言えばいいんだ」と学びます。

○それでも叩くことをやめないとき……

手をつなぐ親子

その場を離れましょう。小さいときだからできることです。子どもを抱えて、言葉で説明しながら、他の子どもたちから離します。 「叩く子はみんなと一緒に遊べないよ」と、叩くことで何が起きるかを、言葉と行動で説明します。

なかなか収まらないときは、家に帰りましょう。これを繰り返すと、子どもにもその仕組みがわかります。叩くと、他の子とは遊べなくなり、外遊びもできなくなる、ということを理解します。

しつけの心得

○困った行動のもとには、子どもにとっての「いいこと」がある

叩くというのは困った行動ですが、子どもに悪意はありません。たとえば、おもちゃがほしいのです。でも、使おうとしたら拒絶され、どうやったら手に入るのかわからないので叩く。叩くという行動は、おもちゃを手に入れるという、子どもにとっては「いいこと」を目指した結果であることを理解しましょう。

親の仕事は、子どもが「どんないいこと」を目指したのかを見つけることです。

○感情的にならない

感情的に「何やってるの!」と、子どもを押さえつけたり怒ったりしても、子どもには、何が起こったのか理解できません。子どもをびっくりさせて、泣かせてしまっては、せっかくのしつけの機会を逃すだけです。

大丈夫です。子どもが他の子を叩くのは、ひとつの自己表現。落ち着いて、子どもの手をとりましょう。

○「叩かれる痛みを教えよう」は、うまくいかない

「叩かれる痛みを味わわせたほうがいい」と、子どもを叩く親がいますが、これには効果がありません。三歳前の子どもは、自分が感じていることを、まだ客観的に眺めることができません。だから、うまく表現できずに手を上げるのです。自分が感じていることがわからない子どもに、人の痛みをわからせるのは、無理なことです。

○一度であきらめない

訓練は、重ねてやったときに効果が出ます。一度でうまくいかないからと、あきらめないでください。やり続けると、必ず子どもに変化が表れます。

それぞれの時期に、成長に合わせてしつけることで、その後の子どもとのつき合いが楽になります。子どもも、周りと楽しく過ごせる生き方を学ぶわけですから、あきらめずにつき合いましょう。


菅原裕子

菅原裕子

NPO法人ハートフルコミュニケーション 代表理事
NPO法人 日本ファシリテーション協会 フェロー

人材開発コンサルタントとして、企業の人材育成の仕事に携わる。
従来の「教え込む」研修とは違ったインタラクティブな研修を実施。参加者のやる気を引き出し、それを行動に結びつけることで、社員と企業双方の成長に貢献。

1995年、企業の人育てと自分自身の子育てという2つの「能力開発」の現場での体験をもとに、子どもが自分らしく生きることを援助したい大人のためのプログラム-ハートフルコミュニケーション- を開発。各地の学校やPTA、地方自治体の講演やワークショップでこのプログラムを実施し、好評を得る。

2006年、NPO法人ハートフルコミュニケーション設立。

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