お友達に噛みついたり、叩いたり......。子どもの乱暴な振る舞いは、どう捉えて、どのようにしつけていけばいいのでしょうか?

 

 

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しつけは観察から始まる

 

・子どもの乱暴な振る舞い

 

三歳前の子どもを持つ親からよく聞く悩みに、「乱暴な振る舞い」があります。噛みつくとか、叩くというのがそれです。多くの母親は、よその子を叩くので外へ遊びに連れて行くのが嫌だとか、親を叩くので困ると悩みます。また乱暴なのは、親である自分の愛情が足りていないからだと自分を責めるお母さんもいました。

 

子どもの乱暴な振る舞いは、どう捉えて、どのようにしつけていけばいいのでしょうか? ここでは、叩くということを例にとって考えてみましょう。

 

まず、幼児期において、言葉でうまく表現ができないうちに手が出るというのは、ごく普通のことです。自己表現のひとつだと思ってください。もし誰かに、「親の愛情が足りていないのではないか?」などと言われることがあっても、親としての自分の愛情が伝わっている自信があれば、気にする必要はありません。

 

子どもに発達障害があるのではないかと気にする親もいますが、たとえそうであっても、子どもが他の子どもを叩かずに遊べるようになるのは大切なことなので、子どもを訓練しましょう。それがしつけです。

 

他の子と比べないほうがいいでしょう。比べると、つい、あの子は叩かずに遊べるのにうちの子はなぜ?とか、叩かないようにしつけてこなかった自分は、他のお母さんと比較して劣っているのではないか?など、しなくてもいい心配をしてしまいます。

 

子どもの気質の違いもあります。また、うらやましいと思うようなおとなしい子どもは、自己主張するほどには育っていないだけかもしれません。そんな心配をする代わりに、初めて子どもが叩くのを見たそのときから、お子さんへのしつけに集中してください。第一歩は、観察することです。

 

・観察すればそのときがわかる

 

【叩きそうになったら手をとる】

他の子どもと遊ぶときは、目を離さず、そばについていてください。 観察していると、どんなときに手を上げるかがわかるようになります。その変化を捉えて、手を上げようとした瞬間に、優しく手をとります。そっと優しくというのがコツです。しばらくはこれに集中してみてください。繰り返すことで、手が上がらなくなることもあります。

 

【子どもの気持ちを言葉で表す】

子どもは何か表現したいことがあって、でも、それが言葉ではうまく表せないので、ついつい手を上げます。子どもの様子を観察していれば、子どもがなぜ手を上げたか想像がつきます。子どもが誰かを叩いてしまったとき、子どもの気持ちを言葉にしてあげてください。

「お山をこわされて嫌だったのね」

「あの子のおもちゃがほしかったのね」

「叩かれて嫌だったのね」

子どもにしてみれば、その気持ちを表現しようと手が上がったのです。自分の気持ちがわかってもらえる安心感が得られれば、手が上がらなくなることもあります。

 

【どう言えばいいかを言葉で教える】

表現する言葉を知っていれば、子どもも手を上げずに済みます。子どもの気持ちをどう伝えればいいのかを、親が言葉にしてください。これがその後、子どもの自己主張能力を育てる基本になります。

「お山をこわされて嫌だったのね。こわさないでって言おうね」

「あの子のおもちゃがほしかったのね。貸してって言おうね」

「叩かれて嫌だったのね。やめてって言おうね。叩かないでって」

 

【親が話してみせる】

叩いた、叩かれた、その相手の子どもに、実際、親が話す場面を見せるといいでしょう。

「砂のお山をこわされて嫌だったみたい。こわさないでね」

「あなたのおもちゃで遊びたかったの、貸してくれる?」

「叩かれて嫌だったの。叩かないで遊ぼうね」

相手の子どもには通じるかもしれませんし、通じないかもしれません。しかし、それはどちらでもよくて、その姿をわが子に見せること自体に意味があります。

もう少し大きくなると、親がやった通りに、自分で伝えようとするようになります。そうしたら、親は子どもの代弁をすぐにやめてください。代弁し続けると、子どもは自分で言うことをしなくなる可能性があります。

 

【子どもがうまく表現できた瞬間を捉える】

親が話してみせた直後も含めて、よく観察していると、子どもが言葉で自分を表現する瞬間があります。この瞬間を逃さないことです。言葉は未熟です。それでも何を言おうとしているのかを理解して、「貸してって言えたね」「お話できたね」と、フィードバックをしてあげてください。その瞬間、子どもは、「これを言えばいいんだ」「こうすればいいんだ」とわかります。そうすることで、具体的にどういう状態が望まれているのかを、子どもに伝えることができます。

大切なのは、その瞬間であることです。つまり、子どもなりに「貸して」と言ったら、親が笑顔で「言えたね」と喜んでいる。子どもはこの瞬間、「おもちゃがほしいときは、『貸して』と言えばいいんだ」と学びます。

 

【それでも叩くことをやめないとき......】

その場を離れましょう。小さいときだからできることです。子どもを抱えて、言葉で説明しながら、他の子どもたちから離します。 「叩く子はみんなと一緒に遊べないよ」と、叩くことで何が起きるかを、言葉と行動で説明します。

なかなか収まらないときは、家に帰りましょう。これを繰り返すと、子どもにもその仕組みがわかります。叩くと、他の子とは遊べなくなり、外遊びもできなくなる、ということを理解します。

 

・しつけの心得

 

【困った行動のもとには、子どもにとっての「いいこと」がある】

叩くというのは困った行動ですが、子どもに悪意はありません。たとえば、おもちゃがほしいのです。でも、使おうとしたら拒絶され、どうやったら手に入るのかわからないので叩く。叩くという行動は、おもちゃを手に入れるという、子どもにとっては「いいこと」を目指した結果であることを理解しましょう。

親の仕事は、子どもが「どんないいこと」を目指したのかを見つけることです。

 

【感情的にならない】

感情的に「何やってるの!」と、子どもを押さえつけたり怒ったりしても、子どもには、何が起こったのか理解できません。子どもをびっくりさせて、泣かせてしまっては、せっかくのしつけの機会を逃すだけです。

大丈夫です。子どもが他の子を叩くのは、ひとつの自己表現。落ち着いて、子どもの手をとりましょう。

 

【「叩かれる痛みを教えよう」は、うまくいかない】

「叩かれる痛みを味わわせたほうがいい」と、子どもを叩く親がいますが、これには効果がありません。三歳前の子どもは、自分が感じていることを、まだ客観的に眺めることができません。だから、うまく表現できずに手を上げるのです。自分が感じていることがわからない子どもに、人の痛みをわからせるのは、無理なことです。

 

【一度であきらめない】

訓練は、重ねてやったときに効果が出ます。一度でうまくいかないからと、あきらめないでください。やり続けると、必ず子どもに変化が表れます。

それぞれの時期に、成長に合わせてしつけることで、その後の子どもとのつき合いが楽になります。子どもも、周りと楽しく過ごせる生き方を学ぶわけですから、あきらめずにつき合いましょう。

 

 


 

【本書のご紹介】

 

子どもの心のコーチング【しつけ編】


子どもの心のコーチング【しつけ編】

しつけとは、自分の心と行動をコントロールする術を子どもに教えること。「ほめる」でも「叱る」でもない、子育ての極意を伝授します。

 

【著者紹介】
菅原裕子(すがはら・ゆうこ)
NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事。有限会社ワイズコミュニケーション代表取締役。 1999年、有限会社ワイズコミュニケーションを設立し、社員一人ひとりの能力を開発することで、組織の変化対応力を高めるコンサルティングを行う。仕事の現場で学んだ「育成」に関する考えを子育てに応用し、「ハートフルコミュニケーション」を開発。全国のPTA、地方自治体、地元の有志主催による講演会で「ハートフルコミュニケーション」を紹介。また、それぞれの生活の中で「ハートフルコミュニケーション」を伝えられる「ハートフルコーチ」を養成。2006年、NPO法人ハートフルコミュニケーションを設立し、日本中の親たちの子育てや自己実現を援助する活動を展開中。