「姿勢をよくしなさい!」と注意するお母さん!そもそもなぜ姿勢をよくしなければいけないのか、その理由をご存知ですか?

 

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姿勢がよいと物事を正確に理解できる

 

「姿勢をよくしなさい」「背筋を伸ばしなさい」ということは、よく言われます。皆さんも、子どもの頃にうるさく言われた経験があることでしょう。また、お子さんにも「姿勢をよくしなさい」「背中が曲がってるよ」と、たびたび注意されているのではないでしょうか。

 

けれども、なぜ姿勢をよくしなければいけないのか、その理由を知っている方は少ないのではないかと思います。

 

姿勢が美しいと見た目もよくなります。しかし、それだけが姿勢をよくする理由ではありません。

 

姿勢が崩れてくると、体のバランスが崩れて、物事を正確に理解したり、集中して話を聞いたりすることができなくなるのです。

 

体のバランスと関係しているのは小脳にある「虫部(ちゅうぶ)」という場所で、脳はこの場所でバランスをとりながら、体の位置、目・耳などから入ってくる情報を判断しています。

 

姿勢が悪いと体軸が傾きますから、目線も傾きます。目線が傾くと左右の目から入ってきた情報にズレが生じ、脳は左右の情報をひとつにまとめる作業が必要になります。こめため脳は疲れやすくなり、集中力を高めてゆくことが難しくなります。

 

その結果、脳のパフォーマンスを落として、運動面や学習面はもとより、あらゆる場面でカを発揮できなくなっていきます。美しく正しい姿勢は、子どもの能力の向上に関係してくる大事な要素のひとつなのです。

 

超一流と言われている人たちの姿勢が、概して美しいことからもそれはわかります。とくにアスリートと呼ばれている人たちで姿勢が悪い人はいません。

 

スポーツにおいて、目線が傾き、入ってくる情報にズレが生じることは体を動かすタイミングにも影響します。ですから超一流の選手は立ち姿も歩く姿も美しいのです。

 

姿勢を正す理由を話してあげよう

 

もちろん皆さんも、よい姿勢の大事さは十分わかっていらっしゃるでしょう。お母さんたちからは「うちの子どもは何回言っても姿勢の悪さが直らなくて、すぐに体がダラリとしてしまう」という声をたくさん聞きます。「何回注意しても姿勢が直らない」は、多くのお母さんの困り事です。

 

でも、理由をきちんと説明してやれば、子どもは理解して気をつけるようになります。理由を知らないまま 「姿勢をよくしなさい」と言われても、子どもたちの中には入っていかないのです。

 

ある小学校の校長先生に頼まれて、小学校一年生から六年生までの子どもたちに講演をしたことがありました。

 

そこで姿勢の話をしました。

 

「美しい自分を整えないと能力は発揮できないんだよ。すごい人というのはみんな立っていても、走っていても、歩いていても姿が美しい。だから美しい自分を整えないと能力は出てこないんだよ」

 

と、ここまで話して、ある一年生の子に「君の足はダラ~と開いているよね?それは美しいと思う?」といきなり質問してみました。すると、そこにいた全員が弾かれたようにビシッと足を整えて座り直したのです。

 

続けて、「達人と言われている人たちは姿が美しいから目が水平になっているんだけれど、みんなの目は今傾いているよね?」と話すと、今度は目が水平になるように姿勢を直して座るようになったのです。

 

途中で多少足が開き出したりはしたものの、そこにいた子どもたちはみんな、よい姿勢を保ったまま60分間きちんと私の話を聞いてくれました。

 

後日子どもたちから感想が送られてきたのですが、驚いたことに、メモをとらずに話を聞いていたにもかかわらず、一年生、二年生の子も私が講演で話した五つの内容をきちんと覚えていてくれたのです。姿勢を正すことで集中力も生まれ、話を最後までしっかり聞いてくれたのですね。

 

もっとうれしいことがありました。小学生にはちょっとむずかしいかなと思いつつ、「目が水平になっていると、入ってきた情報を補正しないで脳が取り込めるから、右と左の脳が同時に働ける。だから頭は疲れないし、ものはよく見えるし、判断カも上がるんだよ。野球をやっている子がいたら、目線を水平にすることを意識してください」と話をしたところ、そこに少年スポーツ団の野球部で一番、四番、七番バッターを任されている子たちがいたのです。

 

講演の一週間後に県の少年野球大会があり、その子たちがそこで猛打を連発し続けたそうです。そのおかげでどんどん勝ち上がっていき、最後は優勝を手にしたとのこと。子どもたちも「林先生は神様だ」 と大喜びしていたと連絡をいただきました。

 

子どもであっても、なんで大切なのかをきちんと説明すれば、「統一・一貫性」の本能に従って、そのようにやってくれます。

 

ですから、ただ 「姿勢を直しなさい」 と言うのではなく、姿勢を正すことの必要性も併せて話してあげることが大事なのです。

 

正しい姿勢は「空間認知能」とつながっている

 

美しく正しい姿勢は、集中力とも関係します。正しい姿勢でいると体が疲れませんので、集中力を維持することもできます。

 

正しい姿勢をつくるポイントは、

 

・目線を水平にする

・背筋を伸ばす

・肩(肩甲骨)の高さを左右同じにする

 

の三つです。ここに注意しながら、子どもが正しい姿勢をとれているかどうか見てやるとよいでしょう。

 

美しく正しい姿勢ができるようになることは、子どもの 「空間認知能」を鍛えることにもなります。「空間認知能」は、とにかくあらゆる能力の向上に必要不可欠な重要な脳機能です。

 

その脳機能のトレーニングのひとつが、美しく正しい姿勢でいることを習慣にすることなのです。

 


 

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【著者紹介】
林 成之(はやし・なりゆき)

1939年、富山県生まれ。日本大学医学部、同大学院医学研究科博士課程修了後、マイアミ大学医学部脳神経外科、同大学救命救急センターに留学。1993年、日本大学医学部附属板橋病院救命救急センター部長に就任する。日本大学医学部教授、マイアミ大学脳神経外科生涯臨床教授を経て、2006年、日本大学大学院総合科学研究科教授。

2008年の北京オリンピックの日本代表競泳チームや2012年のロンドンオリンピックの数々の代表チームにアドバイスを行ない、金メダルに導くなど、大きく貢献。