子どもとの触れ合いは、親子の愛情を深めるために大切なもの。でもそれだけではありません。子どもの自立を促し、頭のよい子にもしてくれるのです。

 

 

子どもの成長は、土台となる部分に「身体感覚の育ち」があり、その上に「感情・感覚の育ち」があり、頂点に「脳の育ち」がくるピラミッド形になっていると私は考えています。つまり、脳を育てるには、身体感覚や感情・感覚といった心の面を先にしっかりと育てていかなくてはなりません。

 

スキンシップが成長の土台をつくる

 

スキンシップは、肌と肌が触れ合うことで身体感覚を養い、「安心する」「気持ちがいい」などのよい感覚を与えることができます。お母さんとの十分なスキンシップがある子は、脳の育ちにつながっていくベースができやすい子とも言えるのです。

しょっちゅう抱っこやスキンシップをされている子は、親子関係が安定して、心も安定していきます。それによって、いろいろなことに挑戦していく気持ちがもてたり、人との関係を大切にしたりできるようになるのです。

でもなぜ、スキンシップにこうした効果があるのでしょうか? それを紐とくキーワードが、別名「きずなホルモン」とも呼ばれる脳内ホルモン「オキシトシン」です。触れ合うと、脳の中にオキシトシンがたくさん分泌されて、さまざまなよい相乗効果をもたらしてくれるのです。

また、皮膚と脳はつながっています。スキンシップで肌が刺激されると、その刺激が脳に伝わって脳を活性化することにもなります。

オキシトシン効果と脳への刺激効果。子どもが小さい頃からスキンシップが大切な理由が、おわかりいただけたのではないでしょうか。

 

頭がよくなる理由! スキンシップの5つの効果

 

1 自分の行動をコントロールできる

 

スキンシップによって、脳からはオキシトシンが分泌されます。小さいときにたくさん触れられた経験があって、オキシトシンの分泌が多い子は、自分の行動をコントロールする力が高いことが、これまでの実験調査から明らかになっています。ある実験で、行動コントロール力が高い子を追跡調査したところ、こうした子は学歴が高く、幸せな人生を送っていることもわかりました。

スキンシップを増やすと、オキシトシンが子どもの自律の育ちをサポートしてくれて、その結果、将来的に子どもの人生をよりよいものにつなげていってくれる可能性が高くなるのです。

 

2 ストレスに強くなる

 

やすらぎをもたらし、不安や恐怖といったネガティブな感情を抑えてくれるのが、オキシトシンの主な役割です。実際に行なわれた実験で、オキシトシンにはストレスを引き起こすホルモンを減らす効果があることがわかっています。

スキンシップの多い子は、オキシトシン効果で心が常に安心感で満たされ、不安な気持ちを抱え込みにくくなり、ストレスにも強くなります。

何かをやる際にストレスをあまり感じなくなるので、臆することなく新しいことにチャレンジでき、いろいろなことを経験する機会が増えます。それが脳を大いに育ててくれるのです。

 

3 いろいろな脳内ホルモンが出やすくなる

 

スキンシップをすることによって、心を安定させる「セロトニン」や、意欲とやる気を引き出す「ドーパミン」も出やすくなります。しかもオキシトシンは、これらの分泌量を調整する役割も果たしています。

同じ抱っこでも、ゆっくりギュッと抱きしめると、オキシトシンとセロトニンが増えて子どもの気持ちが落ち着き、「よくやったね! がんばったね!」などと抱きしめながら体を軽くポンポン叩くと、オキシトシンとドーパミンが分泌されて、子どもに意欲やモチベーションが生まれやすくなります。子どもの状況に応じて使い分けてみてください。

 

4 記憶力や集中力が高まる

 

不安があったり、落ち着かない気分のときは、集中力も下がります。集中力が下がっている状態では、記憶力も高まりません。

でもスキンシップをたくさんして、オキシトシンが出やすい子にしておいてあげると、オキシトシン効果で心身がリラックスしてきますので、目の前のことに集中できるようになり、その結果、記憶力もよくなっていきます。さらに、親子の触れ合いがある子ほど、心が安定して勉強に取り組む姿勢もつくられやすくなります。

記憶力、集中力、学習意欲が育っていきやすいことも、スキンシップの大きな効果の1つと言えるでしょう。

 

5 社会性が育っていきやすい

 

オキシトシンは人を信頼し、人とのきずなを強める働きをしてくれるホルモンです。そのため、スキンシップでオキシトシンを増やすと、共感力が高まり、人の気持ちを汲めるようになって、対人関係もよくなります。

また、これからの社会で大事になっていくのは、「非認知力」と呼ばれている力です。「認知力」とは学力に必要な理解力や記憶力などのこと。いっぽうの「非認知力」は学力を支える力を言い、自分をコントロールする力、人と話し合って問題を解決する力など、自律や社会性につながっていくものです。「非認知力」を養うためにも触れ合いが大事なのです。

 

あなたのオキシトシンチェック!CHECK LIST

 

オキシトシンの分泌にはユニークな法則があります。

お母さんのオキシトシンが増えると子どものオキシトシンも増え、お母さんのオキシトシンが少ないと子どものオキシトシンは増えないのです。

さて、あなたのオキシトシンはどうでしょう? 下のリストでチェックしてみましょう。

 

1 人にはよく触れるほうだ

2 夫(妻)とのスキンシップは多いほうだ

3 子どもをよく抱っこ・おんぶしたり、手をつないだりしている

4 子どもが寝るときは添い寝をしている

5 子どもにキスや頬ずりをよくする

6 気心の知れた仲間で集まるのが好き

7 初対面の人と仲良くなりやすく、信頼しやすい

8 困っている人を見ると放っておけない

9 親友と呼べる友だちがいる

10 あまりストレスがたまらない

 

<診断結果>

いかがだったでしょうか? 全10項目のうち、チェックが7個以上ついた方はオキシトシンがとてもよく出ています。5〜6個だった方は、まあまあ出ていると言えるでしょう。4個以下だった方は、残念ながらオキシトシンの分泌がちょっと足りていないようです。

 

触れ合いで"オキシトシン"を増やす4つのポイント 

 

子どもの脳と心の成長に大切なオキシトシンをたくさん出すには、どのようにしたらよいのでしょうか? 親子でオキシトシンの分泌を増やすスキンシップのポイントを紹介します。

 

・遊びの中で楽しく触れ合う

 

オキシトシンをたくさん分泌するコツは、楽しく、やさしく触れ合うこと。いちばん簡単な方法は、子どもとの遊びの中でのスキンシップです。

たとえば、コチョコチョくすぐり合って遊ぶ、マッサージごっこをして遊ぶ、「ずいずいずっころばし」のような手遊び歌を楽しむなどです。楽しく笑い合って、コミュニケーションをとりながら触れ合っていくことで、子どもはもちろんのこと、お母さんのほうにもたくさんオキシトシンが出てきます。

 

・子どもが求めてきたときに、やさしく触れる

 

子どもが求めていないのに、無理に抱っこやスキンシップをしても、子どもの中にオキシトシンは増えていきません。

子どもがまだ遊びたいと思っていたり、何かに夢中になっていたりするときは、そのまま続けさせてやりましょう。子どもが「抱っこ」と言ってきたり、ペタッとくっついてきたりしたら、抱っこをしたり、やさしく撫でてあげたりしてください。お互いにやさしい気持ちで触れ合うことで、親子ともにオキシトシンが増えます。

 

・日常の中でムリなく、ちょっとずつ取り入れていく

 

「もっとしっかり触れ合ってあげなくちゃ」と思い過ぎると、それがお母さんのストレスになって、かえってオキシトシンの分泌を減らします。本を読むときに膝の上にのせる、添い寝をしながらトントンする、着替えのときに身体をさすってマッサージをするなど、日常の行動の中でムリなく触れる機会を増やしましょう。

ちょこちょこ子どもと触れるたびに、お母さんにもオキシトシンが出るので、お母さん自身のストレスも減っていきますよ。

 

・いろいろな人とのスキンシップも大事に

 

子どもが触れ合いを求めたときは、誰かが応じてあげることが大切です。お母さんに限らず、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、園の先生など、いろいろな人とのスキンシップも大切にしていきましょう。荒れている子に対して園の先生が抱っこの回数を増やしたら、問題行動が少なくなったという調査報告もあります。

また、スキンシップの多い夫婦は子どもとの触れ合いが多いというデータも。お父さんとお母さんの触れ合いも、ぜひ大切にしてください。

 

【著者紹介】

山口 創(やまぐち・はじめ)

桜美林大学リベラルアーツ学群教授。1967年生まれ。早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程修了。臨床発達心理士。専門は身体心理学・健康心理学。著書に、『幸せになる脳はだっこで育つ。』(廣済堂出版)などがある。

 


 

のびのび子育て

「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌。 2016年10月号の特集は<「抱きしめる」ほど、頭のいい子に育つ>です。

 

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