日常生活上はもとより、学習・人づきあいにも必要な"自制心"、つまりガマンする力は、幼児期にこそきちんと育てることが大切です。年齢による自我の発達の特徴を捉えた、接し方のポイントを紹介します。

 

のびのび子育て

 

子どもはなぜガマンできないのか

 

子どもがガマンできない理由は、おもに3つあります。

1つめは、生理的な理由からガマンできないということ。何歳であっても、子どもがガマンできない状態になるのが、眠いとき、お腹がすいたとき、排泄がしたいときなどです。体調不良も大きな要因です。

2つめは、人間関係からガマンできなくなるということ。特に親との関係がギクシャクしたり、兄弟姉妹といつもいざこざが絶えなかったりなどです。友人とのケンカや、友人がいない孤独感からイライラしてガマンできないこともあります。

3つめは、発達年齢でガマンができない時期があるということ。自分自身を作っていく節目の時期は、精神的不安定から、いろいろなことをガマンできない状態になっていることが多く見られます。年齢によってガマンの種類、程度、強弱は異なりますが、自分をコントロールできないと、将来、社会に対するガマンができなくなります。

 

・必要なガマンとは?

 

子どもに必要なガマンは、(1)命に危険が及ぶ行動、(2)人に迷惑をかける行動、(3)人を傷つける言動の3つです。ちゃんとガマンできる力を養うために、親をはじめ大人はどうすればいいのでしょうか。年齢を大きく区切って考えたいと思います。

 

3~6歳この時期にガマンする力を養うには?

 

・集団生活の第一歩

3歳になると単語数も増え、3語文以上の文章になり、会話ができるようになります。人との関係が、言葉によって成立するようになります。また、幼児集団に入り、社会化される第一歩です。ただし、愛着形成が成立し、母子分離ができるようになっているのです。

先日、ある幼稚園の巡回指導に行ったときのことです。3歳から幼稚園に初めてきた子どもと、プレ幼稚園(1、2歳)から母子、あるいは子どもだけで週3回ほど通った子どもとは、保育士、幼稚園教諭、友だちとの関係性が大きく異なっていました。ある園長先生は、年齢を下げて2歳児から幼稚園に入れたほうが、周りとの関係性を築きやすいと話されていました。対して、親との愛着形成のためには家庭保育が重要だと主張する方もいます。

 

・親のガマンが先

3歳児は集団保育に入ったばかりで、集団に慣れることに一生懸命です。その中でガマンしなければならないことや「いやだ」と自己主張することで、理解しあえることを学びます。親は、この時期に子どもとしっかり向きあわなければなりません。スマートフォンを見ながら返事をしたり、食事も簡単なもので済ませるのではなく手作りを心がけたり、丁寧に接するようにしましょう。お母さんたちの、本当の「ガマン」の時期でもあります。

最初に述べた、させなければいけない3つ(命に危険が及ぶ行動、人に迷惑をかける行動、人を傷つける言動)以外は、子どもの気持ちを汲んだ対応を心がけましょう。

 

・ゆっくり見守る

4歳になると、子どもの意識は友だち関係に、より強い関心を示します。また、自分の体、大人の体への興味も出てきます。情緒的には安定していますので、ガマンについて実行したり、話を聞けるようになります。それでも前述したように生理的な不調、人間関係が安心できないときにはガマンすることが難しくなります。

5歳、6歳は、情緒の発達が盛んな時期で、大人と同じような細かい情緒が出てきます。恥ずかしがり、失望、羨望、希望、不満足、心配などが出ます。そのため、心が安定せず、ガマンしなければと頭で思っても、ガマンできないこともあるのです。

親はゆっくりと見守りましょう。

 

7~9歳 この時期にガマンする力を養うには?

 

・友人や先生との関係が大事

小学生になると幼児期とは異なり、小学校生活を送ります。1年生の1学期は幼児期の延長のようですが、2学期になると小学校生活が本格的に始まります。7歳頃から、親との関係が主ではなく、友人や先生との関係に重きを置きます。8歳頃からは、生意気になり、親に口答えをします。自分はもう"赤ちゃんではない"し、"親の付属物"でもないと意識しはじめます。自分のルーツを探しはじめ、親が本当の自分の親なのかをチェックしはじめる子どももいます。

 

・子どもの意向を大切に

頭ごなしに叱ったり、暴言を吐いたり暴力を振るう親は、自分の本当の親ではないと考えたりします。自分の話をただ聞いてほしい(意見を求めない限り黙ってあいづちを打ちながら聞いてほしい、遊んでほしい、勉強を一緒に考えてほしい)と望んでいます。

体も微妙に変化し、思春期の兆候が出始めます。背が急に高くなると骨や筋肉などのバランスを崩し、痛みを訴えたりします。親がなでてあげたり、話をゆっくり聞いてあげると安心し、痛みをガマンしたり友人関係がスムーズにいかなくともグッとこらえることができます。宿題も遊びたいのをガマンしてやり終えたりします。一方で塾や学校以外の勉強も、自分が「やりたい、やってみよう」と思わない限り、ガマンして続けることは難しくなります。つまり、本人の意識次第なので、親は「ガマンしなさい」ではなく、子ども自身のやる気を高めるような言動を心がけましょう。

 

・子どもを信じて

10歳は自分の人生の方向性を決める時期だ、とアルフレッド・アドラー博士は言っています。私も、常々子どものセラピーを行なう中で、それを感じています。

それまで自分で決定し、ガマンして行動してきた子どもは、失敗や成功を繰り返し、何をどうガマンすれば成功につながるかを体験しているのです。また、人間関係でも10歳頃に気の合う友だちが見つかれば、ずっとそのタイプの人と気が合うようです。親はとにかく子どもの行動を信じ、マラソンの伴走者のように伴走しつづけることで、子どもは安心と勇気をもらい、必要なときに自らガマンするようになるのです。

中学生、高校生、青年期における「ガマン」は、子ども自身が決心すればすべて可能になるように思います。

 

【著者紹介】

植松紀子(植松メンタルヘルス・ルーム主宰)

日本大学文理学部心理学科卒業。臨床心理士。武蔵野赤十字病院、こどもの城小児保健部などを経て現職。著書に、『【1〜6歳】子どもにさせていいガマン・わるいガマン』(PHP研究所)などがある。

 

 

 


 

のびのび子育て

「PHPのびのび子育て」は未来を担う子どもたちの健全な成長と幸せを願って、発刊している月刊誌。 2017年月9月号の特集は<3歳、7歳がわかれ道! 「ガマンする力」の育て方>です。

 

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