自分のことを誰よりもエゴが強い「エゴの塊」とまでおっしゃる中田さん。 でも、だからこそ、そばにいる人を 尊重できると言いますが、その真意は? あっちゃん流の家族への愛の注ぎ方をうかがいました。

 

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長女は4歳、長男はもうすぐ1歳。

これから多くを吸収していく彼らに、僕は「こんな人になりなさい」とは言いません。

というのも、僕は自分の親の「言ったこと」をさほど記憶していないからです。でも、親が「したこと」は強く心に残っています。

だから、思いやりややさしさを教えるなら、僕も行動で示したいですね。

とはいえ僕も感情的になって、つい思いやりを欠いてしまうこともあります。

そこで決めているのは、「悪いと思ったら必ず謝る」こと。幼い娘にも、「大きな声を出してごめんね」と、きちんと謝っています。

そのとき娘は「うん、いいよ」とうなずくのですが……その顔が絶妙なんです。笑顔や泣き顔といった、単純な表情ではないんです。

悲しかった。悔しかった。でも、パパは謝ってくれている——という状況を思いめぐらして受けいれていく。その顔を見ていると、幼いけれど、もう「人」なんだな、と感じます。

親子って、ともすれば上下関係と捉えられがちですが、僕は人間同士として対等な関係を築きたい。相手が幼くても、リスペクトをもって接したいと思います。

 

後ろめたさがないから叱ることができる

 

一方で、親は「壁」にならなくては、という思いもあります。自分や他者を危険にさらしたり、傷つけたりするような行動は厳しく取り締まらないと。つまり、家庭内警察ですね。

この警察機能が働かないと、いわゆる「荒れた家庭」になるのでしょう。そこに至る事情はそれぞれですが、やはり決め手は、親の行動。

汚職まみれの警察のもとで治安が乱れるのと同じく、もし僕が不倫をしたり暴力をふるったりしたら、家族の信頼は失われ、家庭の平和は崩れます。僕自身が「ルールとモラルを守る警察」であることが、まずは第一です。

もう1つ大事なのは、家族と接する時間を多くとること。多忙な親が子どもにお金だけを与えて放置していたら、子どもが悪い道へ……という話がよくありますが、そういう親は、子どもをビシッと叱れません。十分に接してこなかった後ろめたさがあるからです。

だからこそ、仕事一辺倒の親になってはいけない。多忙な中でも、できるだけ家にいる時間を長くとりたいですね。

 

本人すら気づいていないことをほめる

 

こうして警察として機能しつつ、それ以上に重要なのは「ほめること」。おそらく娘に対しては、叱った回数の3倍以上はほめています。

その際、「通りいっぺんのほめ方をしない」のもポリシー。もちろん「かわいいね」といった普通のほめ言葉も使いますが、それだけじゃつまらないと思うんです。

たとえば仲間から寄せ書きをもらったとして、「お世話になりました。これからもお元気で」とだけ書かれた一文を見たら、味気なく感じませんか? 表面的な言葉って、何も言わないのと同じなんですよね。

ほめるなら、本人しか気づいていないこと、もしくは、本人でさえ気づいていないこと——そんな細部を指摘したい、と常々思います。

ちなみに最近発見したのは、娘の「仲裁力」。小さなことで妻と言い合っていたら、娘が「パパ、そんな言い方しなくていいでしょ?」と僕をいさめたんです。すごいでしょう?

母親をかばうやさしさ、状況判断の公平さ、自分の意見を言える強さ——すべてを目にとめて、「すごい」と伝えたいですね。

 

エゴが強い人ほど思いやりをもてる

 

さて、まだ赤ちゃんの息子にも、そろそろ「性格」らしきものが見えてきました。どうやら、パワフルないたずらっ子になる模様。

娘は弟を非常にかわいがっていますが、これまためっぽう自己主張が強い子なので、この先、姉弟で衝突することもあるかもしれません。

でも、2人が「思いやりを欠いた子」になる心配はまったくしていません。

じつは僕、思いやりって「エゴの究極形」だと思っているんです。僕自身もエゴの塊で、利益や幸福を得たい気持ちは人一倍強いのですが、その欲求をとことん極めていくと、「他者の協力を得るのが一番」とわかるのです。

だから、家でも外でも、そばにいる人を尊重せずにいられません。

もちろん、それに気づくには時間がかかりました。子どもたちも、とくに思春期にはエゴが暴走して、盛大にぶつかり合うことでしょう。

そのとき僕はどうするか。……きっと、目的を聞くでしょうね。

「君たちの目的は、相手を言い負かすこと?違うでしょ? じゃあ、どうなりたい?」と。

こうして、お互いに協力することが必要だ、と気づく手助けをするのが、親の役割です。

そして何より大切なのは、愛情を注ぐこと。愛情に囲まれて育った人間は、大きく道を外れることはない、と信じています。

僕は妻にも子どもにも、感謝の意味もこめて、しょっちゅう「愛してるよ、大好きだよ」と言葉にします。めいっぱいの愛情を注いでいれば、子どもたちの心には、他者へのあたたかな思いやりが自然と育っていくでしょう。

 

【著者紹介】

中田敦彦(なかた・あつひこ)

1982年生まれ。慶應義塾大学在学中に藤森慎吾さんと「オリエンタルラジオ」を結成し、2005年、リズムネタ「武勇伝」でブレイク。’16年には音楽ユニット「RADIO FISH」としてNHK紅白歌合戦に出演を果たす。報道番組のコメンテーター、執筆業など幅広く活動し、私生活では「イクメン」としても知られている。

取材・文:林 加愛

 

『のびのび子育て』 3月号より

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本記事は、のびのび子育て2018年3月号特集「心が荒れる家庭、やさしく育つ家庭」より、一部を抜粋編集したものです。