自分で自分の事が決められない若者が増えています。その原因は、「親の関わり方」であることが多いのです。

 

女性

 

大学選び、就職活動、婚活に親が介入することが増えた

 

大学を選んだり、就活や婚活をしたりする場面でも、親御さんが口を挟むケースが増えています。大学選びでは、ほぼ親が中心になって決めているようなケースも、多々あります。

 

大学のオープンキャンパスというのは、本来は、高校生が大学を見て回って、模擬授業を受けるなどして、「どこの大学が自分に向いているか」を体験する機会なのですが、相談コーナーなどでも、子どもはほとんど無言で、お母さんのほうが一生懸命、饒舌に「うちの子はこういう子で、だからこの大学がいいと思って」といったことを、ひたすらしゃべっている。そういうこともしばしばあり得るのです。大学を選ぶのに、親御さんが極めて熱心で、子ども自身はそれほど積極的ではないということが、結構あるわけです。

 

就職活動でも同様です。子どもに任せておいたらろくな企業に行かないだろうということで、「本当にその会社大丈夫なの? どんな会社なの?」と、もうほとんど、親御さんが就活の中心であるかのような役割を果たしていたりすることも多いわけです。最近よくあるのは、就活のときはさすがに親が出ていくと採用されないのでは、と思って控えていても、入社した後に、親がどんどん子どもの会社に連絡をしてきて、上司に絶えず連絡を取っている、というケースです。「うちの子はもう社会人だから、一人前になったんだ、親は一歩引かなくては」という意識が低い。いつまでも自分の子どものことは親が守ってあげなくては、という意識が取り除けない。そういった親御さんが増えています。

 

婚活では、さらにその傾向は強くなります。ほうっておいたら、いつまでも恋人一人連れてこない。結婚の話が全く前に進まずに悩んでいる方は、非常に多いのです。たとえば、これもテレビ等でよく知られていると思いますけれど、今、親御さんが中心になった子どものための婚活パーティーが行われています。つまり、親自身の婚活ではなくて、子どもの婚活パーティーに親が自分の子どもの写真を持って参加するのです。こんなふうに、子どもの大学進学、就職活動、婚活という、人生の一大選択をするような場面においても、親がいちいち顔を出して介入してくるというケースが、非常に増えているのです。

 

こういった現象が、子どもがいつまでも子どもでいられる状況をますます先延ばししているように思います。私はこう言います。子どもというのは、大人扱いをされれば、だんだん大人に成長していくのです。けれど、周りの大人が子ども扱いをしていたら、いつまでも子どものままにとどまるのです。なぜなら、人間は楽なほうに流れるからです。大人になるよりも、子どもでいたほうが楽ですからね。ですので、子どものままでいたい、つまり周りにいろんなことを決めてもらう状態に、どこかで止まっていたいという甘えの心理が子どもの側にはあるわけです。

 

この甘えの心理を親が引き受けすぎて、一つ一つのことに親が介入して、手を出し、口を出ししていると、子どもはいつまでも自分で自分の人生を選ぶことができない人間になってしまいます。これは、非常に危機的なことだと思います。

 

口を出したいときも、グッと我慢して控える。一歩引くということを、親御さんが学んでいくべきなのだろうと思うのです。

 

しかし、この「グッと我慢して、一歩引く」という姿勢を、子どもが大学進学や就活や婚活に直面した時点で、いきなり身につけて実行するのも無理があります。それまで何でも全部親が決めていたのに、急に「あなた、自分のことだから自分で決めなさい」と言われても、子どもには無理です。

 

つまり、「自分で自分の人生を選べる人間」に育ててこなかったことのツケが、この大学選びや就活や婚活の時点で、出てくるわけなのです。その根っこはもうずっと前からあるのです。

 

子どもが2歳、3歳、4歳ぐらいのときから、「自分で自分のことを選択する」「自己選択」。このことをさせてこなかった。何でも、親が代わりに選んであげて、子どもの自己選択を阻害してきた。自分で選ぶ力を、親が奪ってきた。そのツケが回ってきているのです。

 

それがこういった自分で自分のことを決められない、選択できない子どもの増加という現象として現れてきている、というふうに見ることもできると思います。

 


 

【本書のご紹介】

 

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『「自分がない大人」にさせないための子育て』

著者:諸富祥彦

 

わが子を仕事や人間関係で困らない、ちゃんと自立した大人にするために、どう育てるか。有名教育カウンセラーが、幼少期から思春期までの具体的アドバイスを紹介しています。

 

【著者紹介】

諸富祥彦(もろとみ・よしひこ)

明治大学文学部教授。臨床心理士。上級教育カウンセラー。教育学博士。千葉大学教育学部講師、助教授を経て現職。児童相談所、大学付属の教育相談センター、千葉県のスクールカウンセラー等、子どものことで悩む親のカウンセリングを30 年以上行ってきた。

著書に『「子どもにどう言えばいいか」わからない時に読む本』『「プチ虐待」の心理』(以上、青春出版社)、『男の子の育て方』『女の子の育て方』『ひとりっ子の育て方』『ひとり親の子育て』(以上、WAVE 出版)、『子育ての教科書』(幻冬舎)、『スマホ依存の親が子どもを壊す』(宝島社)、『教師の資質』(朝日新聞出版)など多数。