大人はあくまでサポート役に! 子どもの意志を尊重するモンテッソーリ教育で身につく力

松本静子
2023.04.07 15:29 2023.04.07 15:28

砂遊びする子ども

将棋の藤井聡太棋士が、その教育法を取り入れた幼稚園に通っていたことで、注目が集まっているモンテッソーリ教育。この教育方法では、ガマンできない子がいたら、まずその原因を探します。

近代イタリア初の女性医学博士であり、すぐれた教育者でもあったマリア・モンテッソーリ(1870~1952)が提唱し、実践した教育法。それがモンテッソーリ教育です。

彼女は、「適切な環境と、ちょっとした手助けさえあれば、子どもは自ら成長する」ということを発見しました。この気づきをもとに考案されたモンテッソーリ教育では、子どもたちそれぞれにふさわしい活動の環境を整え、その中で子どもたちが自発的に活動していけることを大切にしています。

【筆者紹介】松本静子(東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンター名誉センター長)
1970年、イタリアに渡りモンテッソーリ教育を学ぶ。’75年、アメリカ・ロサンゼルスのモンテッソーリセンターにて教師養成者インターン修了。日本初の国際モンテッソーリ教師トレーナーとして認可を受ける。同年、東京国際モンテッソーリ教師トレーニングセンターを設立。

子どもの自由を保障する

赤ちゃんと笑顔の親子

子どもは生まれながらにして、生きる力、自ら育つ力をもっています。そうした子どもの生命衝動、成長要求をくみ取り、見守り、ときに助けるのが大人の役目です。

特に親は、子どもを、自分が考える「いい子」に育てようとしてしまいがちですが、モンテッソーリ教育では、大人はあくまでも子どものサポート役です。子どもが今、何に興味をもっているのか、成長のどの段階にいるのかを見守って、子どもの「こうしたい!」という気持ちを何よりも優先し、大人の都合は後回しにします。

ですから、もし何かをガマンできない子どもがいたら、頭ごなしにガマンをさせるのではなく、まず、ガマンできない原因を探し出し、排除するようにします。

0~6歳は、子どもの成長にとって、一番大事な時期です。

3歳までは、まわりの大人たちがすることを何でもマネして、やってみたいと思う時期ですが、まだ上手にできません。でも、成長するにつれて自分の体をしっかり使えるようになります。

3歳になったあたりから「これをやりたい」という強い気持ちがわき、自分の意思をはっきりと示すようになります。この時期、やりたいことを自由にやらせてあげると、子どもは大人がびっくりするような能力を見せてくれるでしょう。そうやって子どもは自ら生きる力をはぐくみ、ちゃんと育っていくのです。

ですから、親としては「子どもをどう育てるか」を考える前に、まずは子どもの自由を保障して、自発的な活動をサポートすることが何よりも大切です。子どもが、自立と協調性、社会性の心を育てていけるような環境づくり、親自身のあり方を考えたいものです。

モンテッソーリ教育では子どもがこんなとき、こうやって関わります!

叱られる女の子

親が子どもを自分の理想通りに育てようとするとうまくいかず、イライラが募るばかりでしょう。子どもは子どもで、親の顔色をうかがうようになってしまい、せっかくもっているすばらしい能力を伸ばすことができません。

親にとって「困ること」は、必ずしも子どもの「困った」ではなく、むしろ成長の過程で必要なことであったりします。親には、そこを見極める力が求められますが、なかなか難しいものです。

ここでは、主に3~6歳前後の子どもに見られる、よくある「困った」にどう対応すればいいか、モンテッソーリ教育の考え方に基づいて、その方法をお伝えします。

服を畳む子

・ハサミなどの道具が使えない!

同じ歳か、少し歳上の子が上手に使っている姿を見せてあげるのが効果的です。そうしたら次に、お父さんやお母さんが安全な使い方を教えながら、一緒にやってみましょう。うまくいかなくても「いつになったらできるの!」ではなく、「こうしてみたら?」などと根気よくつきあってください。

うまくできたら「上手に○○が使えるようになったね」と言ってあげましょう。モンテッソーリ教育では、むやみに子どもをほめませんが、何かを達成できたときは、「何がすばらしいのか」を子どもがわかるように伝えます。

・待つことができない!

頬をつく子ども

子どもの表情と、周囲の状況をよく観察してください。もしかしたら、待てない理由が何かあるのかもしれません。

たとえば、お母さんが食事のしたくをしているときに子どもがまとわりついて離れないなら、お母さんのマネをしたいのかもしれませんし、料理に興味があるのかもしれません。その場合は、お手伝いをしてもらいましょう。

お父さん、お母さんも忙しくて、つい「待ちなさい!」「あっちへ行っていなさい!」と叱ってしまいがちですが、子どもが待てない理由がわかるまで、むしろ親のほうが待ってあげることが大切です。