子ども時代の過ごし方で将来が決まる? 榎本博明著『伸びる子どもは〇〇がすごい』の一部をご紹介します。

 

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ほめまくることの弊害

 

ほめて育てることが推奨され、ほめればよいといった風潮が世の中に広まっているが、傷つきやすく、落ち込みやすく、頑張れない子どもや若者が増えていることの背景として、やたらほめまくることがあるのではないか。

むやみにほめることの弊害の存在を証明した心理学者ムエラーとドゥウェックによる実験は、ほめることが子どもの気持ちを萎縮させることがあるといった逆効果について考えるヒントを与えてくれるものとして興味深い。

 

その実験では、10歳~12歳の子どもたちに簡単な知能テストのようなものをやらせた。それは簡単にできる内容で、テスト終了後にすべての子どもたちに、優秀な成績だったと伝えた。その後、子どもたちをつぎの3つの条件に振り分けた。

 *第一条件…こんなに成績が良いのはまさに「頭が良い証拠」だと言われる

 第二条件…何も言われない

 第三条件…こんなに成績が良いのは「一所懸命に頑張ったから」だと言われる

そして、これからやってもらう2種類の課題の特徴を説明し、どちらの課題をやってみたいかを尋ねた。

一方は、あまり難しくなくて簡単に解けそうなもの、つまり良い成績を取って自分の頭の良さを示すことができそうな課題であった。もう一方は、難しくて簡単に解けそうにないもの、つまり良い成績を取って自分の頭の良さを示すことはできないかもしれないものの、チャレンジのしがいのある面白そうな課題であった。

 

その結果、条件によってどちらのテストを選ぶかが違うことがわかった。

第一条件の「頭の良さ」をほめられた子どもは、67%と大半が簡単な課題の方を選んだのに対して、第二条件の何も言われなかった子どもは、簡単な課題を選ぶ子と難しい課題を選ぶ子がほぼ半々だった。そして、第三条件の「頑張り」をほめられた子どもは、簡単な課題を選んだのはわずか8%で、92%とほとんどが難しい課題を選んだのだった。

これにより、ほめることがモチベーションに与える影響は、ほめ方によって大きく異なってくることが明確に示された。

 

「頭の良さ」つまり「能力」をほめられると、能力の高さに対する期待を裏切りたくないという思いが強まり、期待を裏切ったらどうしようといった不安も強くなって、確実に成功しそうな易しい課題を選ぶことになりやすい。失敗することを恐れるあまり結果にとらわれ、気持ちが萎縮してしまうのである。

それに対して、「頑張り」つまり「努力」をほめられると、努力する姿勢に対する期待を裏切りたくないという思いが強まり、もっと頑張らなくてはといった思いに駆られ、難しい課題を選ぶことになりやすい。結果よりも努力する姿勢にこだわるため、チャレンジしやすくなるのである。

 

何でもほめればいいということではないのがわかっただろう。ほめて育てるということがやたら推奨されているが、ほめることの弊害もあるのだ。ほめ方にもコツがある。このことは忘れないようにしたい。

 


 

【本書のご紹介】

enomotosyoseki.jpg『伸びる子どもは〇〇がすごい』
日本経済新聞出版社

【著者紹介】
榎本博明(えのもと ひろあき)
心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授を経て、現在MP人間科学研究所代表。著書に『ほめると子どもはダメになる』『「上から目線」の構造』『薄っぺらいのに自信満々な人』『その「英語」が子どもをダメにする』『50歳からのむなしさの心理学』など多数。