【子育て体験談】ハルがついているよ
祖父の他界で初めて人の「死」に触れた4歳の子どもがみせたやさしさに…。
※本記事は『PHPのびのび子育て』(2015年6月号)に掲載され、WEBサイト「PHPファミリー」にて一部抜粋・編集の上で公開されたものです
小さな命へもやさしく、大切に接する子どもの姿
私には4歳の息子がいます。その息子が4歳の誕生日を迎える前に、私の父が他界しました。急なことだったので、信じられませんでした。周りの流れに身をまかせ、忙しく葬儀の準備をすすめることで精いっぱい。悲しむ暇もなかったのです。
息子は、父のことを「ママのパパ」と呼んでいました。
「ママのパパが死んでしまったの。遠い遠いお空に行くんだよ。明日はお葬式といって、ママのパパを空へお見送りしに出かけるよ」
4歳の子どもに死というものを理解できるのか疑問に思いながらも、そう伝えました。
葬儀の当日、それまでの緊張からふっと気が抜けたのか、急に今までのいろいろな感情がこみあげてきました。
私が幼かった頃のこと。つい先日、息子と父と3人で会話をした時のこと。気がつくと、私は涙がとまらなくなっていました。
息子は鳴咽している私の姿に驚いたことでしょう。主人と一緒にいたはずが、いつの間にか私の隣にきていました。
そして、心配そうに、「ママには、ハルがついているよ。大丈夫よ」と、何度も何度も言うのです。
「ママ、もう泣かないで。ハルがずっとそばにいるからね」そう言いながら、私の背中をずっとさすってくれました。
どこでこんなことを覚えたのだろう。ふだんはやんちゃで戦いごっこが大好きで、危ないことをするたびに私に叱られている男の子です。
父が亡くなった悲しさと、息子のやさしさに、涙が止まりませんでした。まだまだ幼いと思っていた息子にとても勇気づけられた瞬間でした。
いつまでもメソメソせずに前向きに、たくましく生きていかなければならないな、守るべき存在がいるということは、自分に本当の意味での強さを与えてくれるんだな、と実感しました。
4歳を過ぎた今でも、息子はたまに父の葬儀のことを思い出すのか、「ママのパパは死んじゃったんだよね。ハルも、もしママとパパが死んじゃったら、すごく悲しい」と目に涙をいっぱいためながら言います。
「死」というものに触れて、幼子なりに何か思うこと、理解するものがあったのかもしれません。
アリやカマキリなど、小さな命に対しても、やさしく、大切に接しています。父のおかげです。
私自身も、父のおかげで息子のたくましい成長を感じることができました。子育てに対しても、以前より、よい意味でおおらかになれた気がします。親子の絆の大切さを学びました。父には感謝の気持ちでいっぱいです。
今後の子育てでたくさんの悩みにぶつかると思いますが、今のこの気持ちを忘れずに毎日を過ごしていきたいと思っています。
息子を生んでほんとうによかった。そして私のところに生まれてきてくれたこと、息子に出会えたことに心から感謝します。
ママにやさしい言葉をかけてくれてありがとう。ママは、一生忘れません。
ハルを守るために、ママはもっと強くなるよ。一緒に笑顔で過ごせる日をたくさんつくっていこうね。ママのパパもお空のどこかで、ハルとママをきっと見守ってくれているよ。
(奥山なつめ、茨城県)