子育てのイライラは「べき思考」から起こる

榎本博明

子育てでイライラがたまるとき、チェックしたいのが「べき思考」です。「こうであるべき」「こうでなければならない」といった思考がイライラを生じさせます。

※本稿は『子どもへの「怒り」を上手にコントロールできる本―怒ってばかりの毎日が変わる!』(榎本博明著、PHP研究所刊)より一部抜粋・編集したものです

【著者紹介】榎本博明(えのもと・ひろあき)
1955年生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在、MP人間科学研究所代表。主な著書に、『伸びる子どもは○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『教育現場は困ってる』(平凡社新書)、『〈自分らしさ〉って何だろう?』『「さみしさ」の力』(以上、ちくまプリマ―新書)『「やさしさ」過剰社会』(PHP新書)などがある。

感情をコントロールする方法

感情は思考によって生じます。

たとえば、「あの人は、私のことをバカにしている」と考えれば、腹が立ってきます。一方、「あの人は、私に対して好意的だ」と考えれば、その人に対する好意的な感情が湧いてきます。思考によってまったく違った感情が湧くわけです。

言うことを聞かない子どもに対しても、怒鳴りまくってイライラをむき出しにする親もいれば、「しょうがないなあ」といった感じで冷静に戒める親もいます。それは思考スタイルが違うからです。

つまり、思考スタイル、とくにものごとの受け止め方を切りかえられれば、感情をコントロールすることができるということです。この方法を応用して、子どもに対してむやみに怒らないですむようにしましよう。

自分のなかにある「べき思考」をチェックする

むやみに怒りの反応を示さないためには、日頃からイライラした心理状態をつくらないようにすることです。そこで大事になるのが、楽観的な心の構えです。

何度も言うように、子育てというのはなかなか思い通りにならないものです。子どもは言うことを聞かず」何度も同じ注意を繰り返さなければなりません。そんなとき、悲観的な親は、

「こんなことではまともな子に育たない」
「子どもを思うようにしつけられないなんて、私は母親失格だ」

などとネガティブな方向に考えてむまいがちです。そうした切羽詰まった心理状態でいると、ちょっとしたことで怒りを爆発させることになりかねません。

これに対して楽観的な親は、

「そのうち何とかなるだろう」
「なかなか思うようにならないのが子育てだ」

などと気楽に構えていられるため、気持ちに余裕ができ、子どもにイライラをぶつけないですみます。