子どもが親の話を聞くようになった…フォートナイトが変えた小籔家の家族関係
小学生の間で爆発的にヒットしたオンラインゲームが『フォートナイト』。フォートナイトだけではないものの、中毒性の高いゲームは子供の人気が上がるほど大人にとっては心配の種になりがちです。
それゆえに親は、ゲームと関わる時間を短くし、適切な距離を保つ選択をすることが多いようです。 一方で、同じくゲームと子どもの関わりを心配していたお笑い芸人の小籔千豊さんは、息子さんのススメでフォートナイトを始めます。子どもに引き込まれ、ゲームの世界で過ごすうちに、小籔家に嬉しい変化が起こったといいます……。
※本稿は、小籔千豊著『ゲーム反対派の僕が2年で4000時間もゲームをするようになった理由』(辰巳出版)より、一部抜粋・編集したものです。
小籔家を変えた「子供の夢」
僕は元々、ゲーム禁止を推奨していました。しかし、嫁の「子供があまりにも可哀想」発言により”ゲームをやっても良い”に変わりました。これだけ聞くと、嫁の方がゲームに対して理解あるように見えるかもしれませんが、そんなことはありません。
根本的に、僕はゲームは面白いと思っています。それに対して嫁は、 「ゲームはやったことないし面白くない」 「やってもいいけどほんのすこしだけ」 「外で遊べ」 「ゲームは付き合い程度で良い」 「何時間もする必要なし」 という、よくいる旧来のお母さん的な考えなのです。
時には、本来ゲームをやってもいい時間内なのに、「晴れてんねんから外行きーや」と追い出されたりもしていましたね。嫁はゲームに対し、一貫してそんなスタンスでした。 そんな嫁が突然、意外なことを言い出したのです。 「ゲーム、もっとやらせていいかなって思ってきてんけど……どう思う?」 日頃の発言とあまりに真逆すぎて、ビックリしました。
理由を聞くと、ママ友に「丈太郎くん、ゲーム上手らしいね。すごいらしいね」と言われたらしいんです。 嫁はその言葉をキッカケに色々と考えた。小さい時に自分から「パソコン教室行きたい。ゲーム作りたいから」と言ってきた息子。今も教室に通っている。ユーチューバーやプロゲーマー 、ゲームを作る人、将来そんな仕事に就きたいと常々言っている。何年もその夢は変わっていない。
「こないだニュース見てたら、プロゲーマーの人が出ててさ。大会出たり、それでお金もらったりしてて、今はもう立派な職業やん。丈太郎もずっとやりたいって言ってるし。学校の子らの中でも上手な方やって。まあ、全国的に見たら知れてるんやろけど……可能性潰すんもなぁ、とか思って。
仕事になるかもなんやったらもうちょっとやらせてもいいんかなぁと」 僕は「せやな、いいんちゃう」と答えました。 そうして息子がゲームできる時間は飛躍的に増えました。ただ、そうなったらそうなったで今度は僕が不安になりました。 嫁のゲームに対する考えは大きく変わりましたが、僕の方はまだゲームに対しての考えが根本的には変わっていませんでした。
僕の中で確実に変わったのは、YouTubeを始めてから。YouTube、ネット、ゲーム、フォートナイトについて時間をかけて考え、真剣に向き合うようになってからでした。
親から子への教えは一方通行
ほんま自分はアホやなと思います。それでも親として、人生の先輩として、いろんなことを子供たちに伝えようと努力してきました。 特に息子には、「ママやお姉ちゃんにいっぱいお金を渡せ」と2歳から浴びせています。
浴びせすぎたのか、今では「またか……」みたいな顔をしよる。退屈そうにしたら怒られるかもだから、聞いているフリをしよる。我が子だからわかります。チラチラとテレビに目がいっているのもわかる。
その証拠に、僕の話が終わるとすぐに子供から全く関係のない話が飛んできます。話題を変えたいのでしょう。僕の話について、こう思ったなんて返しは娘・息子から聞いたことがありません。
そんな風に、ある時期まで親子の会話の多くは将来役立ちそうなこと、知っておいて欲しいことばかりでしたね。親から子供に教えるという一方通行ばかり。あーせー、こーせーとクドクド親全開でした。 それが一変したのは、僕がフォートナイトにハマってからです。僕と息子の会話、そして2人の立場が大きく変わりました。
親子から「ツレ」のような関係に
寝る前、お風呂、ご飯時、道を歩いている時などの会話が、完全にツレが休み時間に話しているような内容になりました。それまでそんな会話は、うちではほとんどありませんでした。
親子で揃って熱中するものができたおかげで、クドクド親とそれを逃れようとする子の会話ではない、共通の話題での平等な会話ができるようになったのです。 ネットゲームについての注意事項や課金についてなど、ゲームをしない親が言いそうなことは前々から息子に言っていたつもりです。
でも、それはやはり監視している親から制限されている子へという対立軸のみの会話。今のような、フォートナイトにハマっている年上の友達との会話ではありませんでした。
「今日、ゲームやってたらさ、こんな暴言吐いてくる人いてさ」
「そっか。そんな顔見えへんかったら何言ってもいいと思ってる子は、将来無茶苦茶バチ当たる。変な人見て、嫌やなおもた時は(自分はせんとこ)と気つけや。パパの知り合いでバチ当たった人おる。その人は……」
同じクドクド話でも、耳の塞ぎ方が違う。明らかに僕の言葉が沁みやすくなっている。 こんな提言しても、僕のターン終わりに他の会話に切り替えることは少なく、むしろ、「でもさ、やっぱ暴言吐かれたら腹立つってかさ……」と、僕の提言に対するアンサーが格段に増えたのです。
もしも僕がフォートナイトにハマっていなかったら、息子は、 (フォートナイトの世界を知らんやん) (そんなん言ってくんの、何もわかってないからやん。従うしかないけど) と黙って憤ったまま話が終わっていたかもしれません。確実に良い変化が起こりました。
【著者紹介】小籔千豊(こやぶ・かずとよ)
吉本興業所属のお笑い芸人。1973年生まれ。吉本新喜劇の座長を15年以上にわたり務める傍ら、俳優やバンド活動など多方面で活躍する。フォートナイトというオンラインゲームにハマり、「フォートナイト下手くそおじさん」としてゲームYouTuber活動も始めた。「姫」はYouTube配信中の小籔さんの愛称として知られている。
ゲーム反対派の僕が2年で4000時間もゲームをするようになった理由(辰巳出版)
お笑い芸人の小籔千豊さんは、息子からのススメでオンラインゲーム『フォートナイト』を始めます。子どもに引き込まれ飛び込んだゲームを通じて、小籔家には「嬉しい変化」が起こったといいます。