あなたの愛が、心の強い子、めげない子を育てる

榎本博明

2)挫折経験のチャンスを奪わない


最近目立つのは、過保護で甘やかし、過干渉する親です。そのような姿勢は、子どもから貴重な体験を奪うことにつながります。人間が動物と違うのは、本能だけでは生きられないことです。私たち人間は、経験から学ぶことで社会適応力が身についていくのです。

挫折というのは学びの大きなチャンスです。失敗を繰り返すことが生きる力を高めてくれるのです。大事なのは、挫折を回避することではなく、挫折を乗り越えることです。乗り越えた経験が自信になります。

挫折を味わわせたくないと過保護になることで、子どもはどんどんひ弱になっていきます。失敗しないように先回りして守ることで、失敗を恐れる子になっていきます。失敗を恐れていたら、思い切ってチャレンジできません。失敗から学ぶこともできないし、自分で困難を乗り越える経験もできません。過保護は子どもの成長のチャンスを奪ってしまうのです。

忍耐力やがんばる力をつけさせようと思ったら、先回りして失敗を未然に防ごうなどと思わずに、子ども自身の試行錯誤を見守る姿勢が大切です。

3)わが子の力を信じる


私たちは、身近な人の視線に強く規定されています。もっとも身近な他者は親です。自分はこんな子だ、自分にはこんな長所・短所がある、こんな力がある。親からどのように見られているかで、そうした自己観を形成します。だからこそ、親がわが子をどのように見るかが重要な意味をもつのです。

私たちには、人の期待に応えるという性質があります。これを「ピグマリオン効果」と言います。親や教師から「この子は自分できちんとやる子だ」と信頼されれば、その期待を裏切るようないい加減なことはやりにくくなります。

反対に、「この子はどうしようもない子だ」と見限られれば、開き直ってさぼることもできるし、ずるいこともやりやすくなります。正の期待にも負の期待にも応えるのが人間なのです。

親が子の力を信じることで、子どもはその期待を肌で感じて、期待を裏切らないようにがんばります。子どもに自覚もでき、自分の力を信じることができるようになります。親が子の力を信じることができず、不安でいれば、子どもも自信がもてず不安になります。だからこそ、親がわが子の力を信じることが重要なのです。