あなたの愛が、心の強い子、めげない子を育てる

榎本博明

「手がかかって仕方ない」「ほめているのにやる気を出さない」 そんな子に悩むあなたは、愛情をかける方向が少し偏っているのかもしれません。

※本稿は『PHPのびのび子育て』2012年5月号に掲載されたものを一部抜粋・編集したものです

【著者紹介】榎本博明(えのもと・ひろあき)
1955年生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在、MP人間科学研究所代表。主な著書に、『伸びる子どもは○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『教育現場は困ってる』(平凡社新書)、『〈自分らしさ〉って何だろう?』『「さみしさ」の力』(以上、ちくまプリマ―新書)『「やさしさ」過剰社会』(PHP新書)などがある。

いま、心の不安定な子が増えている

最近、思い通りにならないとすぐに泣いたり怒ったりする子、うまくできないとすぐに諦める子、叱られるとひどく落ち込む子が増えています。「ほめて育てる」ということが歪んで広まったせいか、心を鍛えるということが疎かになっているようです。

私は、大阪市からの委託で市内の全幼稚園の園児の母親や教諭を母集団とした意識調査を行ないました。その結果、今の子どもたちを見て気になることとして、最も多くの幼稚園教諭があげたのは、「忍耐力のない子」が目立つことでした。

一方、親子関係を見ていて特に気になるのは、「過度に世話を焼く親」と「甘やかす親」が目立つことでした。子どもの忍耐力の欠如は、親の過保護や甘やかしとセットになっているようです。

人生は思い通りにならないことの連続です。そこをタフに生き抜く力が必要です。今、求められるのは、「諦めない心」や「我慢する心」を育てることではないでしょうか。

「生き抜く力」をつける3つの条件

子どもが社会で力強く生きていくために、親はどのようなことを心がければよいのでしょう。

1)楽観的なものの見方を身につける


(※画像はイメージです)

ものごとがうまくいく人は、根拠なく楽観的なものです。実際、楽観的な人のほうが学校の成績もよいし、就職してからも仕事で成果を出していることが、心理学の研究データからも実証されています。

では、楽観的な姿勢はどうして身につくのかというと、親をモデルとして、親のものの見方を自然に取り入れるのです。それを「モデリング」と言います。そこで重要なのは、親自身が楽観的なものの見方を身につけることです。親があれこれ心配すると、子どもも不安の強いタイプになっていきます。

人生上起こることの多くは、吉と出るか凶と出るか、まったく予想がつきません。ものごとのよい面に目を向けることが積極的な行動につながり、悪い面に目を向けることが消極的な姿勢につながります。それによって可能性が開かれたり閉ざされたりするのです。

人生の展望を開くには「何とかなるさ」という楽観的姿勢が大切です。失敗することで落ち込む人間と失敗から学ぶ人間。その分かれ道もここにあります。