子どもの可能性を枯らす親 9つのNG行動

汐見稔幸(臨床育児・保育研究会代表)
2023.02.01 19:07

ひとりで勉強する子

「よかれ」と思ってやっていることが、子どもの可能性を狭めてしまうことがあります。どう気をつければよいのでしょうか?
※本稿は『PHPのびのび子育て』2011年6月号に掲載されたものを一部抜粋・編集したものですです

親が大事にしたい「任せる」ということ

人類の長い歴史から子育てを見ると、ここ30~40年ぐらいは特殊な時代と言えます。というのも、子どもが自由自在に遊び回れる場が地域から消え、家庭は核家族化して、子育ての責任の大半が、お母さん1人の肩にかかってしまっているからです。「子どもがちゃんと育っているかどうかは、あなた次第ですよ」と言われているようなものですから、「ああしなさい」「こうしなさい」と言いたくなってしまうのも当然のことでしょう。

しかし子どもは、親や社会が「ああしなさい」「これをしてはいけません」と指示するから育つのではありません。言われるから育つのではなく、自分で自分を育てようとするから育つのです。

お母さんにとっては大変な時代ですが、子どもの才能や可能性を伸ばしていくには、まず子どもの力を信じ、できるだけ自由にいろいろなことをやらせることです。試行錯誤も経験させて、子ども自身に”育ち”を任せることも大事にしていきましょう。

親がNG行動をとり続けると、子どもはこうなります

子どもを信じず、勝手な思い込みや都合で親が手や口を出し過ぎれば、誰かの指示がないと動けない指示待ち型の人間に。言われたことはできても応用がきかず、新たな可能性を切り開いていく力が失われてしまいます。さらには失敗を恐れるようになり、本来もっている才能や潜在的な能力を存分に花開かせることもできなくなります。

子どもの可能性を枯らす親のNG行動9

1 世話を焼き過ぎる

子どもの身の回りのこと、食事や掃除、片づけといったことを親がすべてやり、子どもをお客様状態にしてしまうと、自立できなくなるばかりか、子どもがもつ力や可能性を引き出せなくなります。親がお膳立てして子どもに何もさせない状態は、子どもをダメにするもとです。「できることは自分でやらせる」を基本に、少し難しいことにもチャレンジさせ、自分1人でできることを増やしていきましょう。

2 指示・命令が多い

「子どもは無知で未熟だから、言ってきかせないといけない」「やらせてもどうせ失敗するだろうから、しっかり教えなければ」などと考えると、「~しなさい」という指示や命令が増えていきます。「~しなさい」「~しなきゃダメ」が増えるほど、子どもは「やってみよう」「こうしよう」という意欲を失います。指示・命令をするだけでなく、子どもが自ら「おもしろい!」と思うことを見つけられるように手助けすることが大切です。

3 お手伝いをさせない

「できた!」という小さな達成をたくさん味わえるのが、お手伝い。小さな達成は自分への自信を育み、可能性を広げていく上での基礎をつくってくれます。また、「上手にできる、うまくできる」楽しさを覚えると、「もっと」という気持ちが芽生え自ら創意工夫するようになり、集中力や粘り強さも育ちます。「かえって手間が増えるから」とお手伝いをやらせないと、子どもは大事な力を身につける機会がもてなくなります。

4 能力レベル以上のことをさせる

「10」の力の子に、「15」や「20」のレベルのことをやらせようとしてもできません。「これぐらいはできて当たり前」と思い込み、能力以上のことをさせるのは、自分への自信や信頼を損なわせることになります。「やった!」が最も味わえるのは、ちょっと難しいことに挑戦して、それができた時。見ていて「レベルが高すぎるな」と思ったら、「こっちからやってみようか」と声をかけ、できそうなことからやらせましょう。

5 決めつける

「自分がスポーツを好きじゃないから、この子もきっとそう」と決めつけたり、「この子には、これを好きになってほしい」と親の希望を押しつけたりすることは、子どもの可能性を狭めます。何が好きかは、子ども自身が自分で見つけていきます。興味をもってほしいことがあっても、親のほうで決めつけたり押しつけたりせず、いろいろな体験の場を設けるなどして、自分の「好き」に気づけるようサポートしてください。

6 頭ごなしに否定する

子どもの言動に対して、頭ごなしに「それじゃダメでしょ!」「何言ってるの!」と注意してしまう親御さんは意外と多いものです。毎回のように頭から否定されていると、子どもの中に「自分はダメ」「何をやってもできない」という気持ちが植え付けられて、失敗から立ち直る力や新たなことに挑戦する力が育ちません。親として「わが子はまだまだ未熟だな」と感じても、頭ごなしに子どもの言動を否定しないよう心がけましょう。

7 夢中になっていることを取り上げる

「おもしろい!」と思って何かに夢中になる、はまってそればかりやりたがる。こんな時、子どもは感情、記憶、想像力、創意工夫といった脳のもつ力を総動員して取り組んでいます。すなわち脳が最も活性化するのです。カブトムシでも怪獣でも、お人形遊びでも、子どもが夢中になってやっていることがあったら、とことんやらせてください。親の好き嫌いや勝手な都合で、途中で取り上げたり、やめさせたりしないことです。

8 失敗をさせない

失敗とは、「こうしてもうまくいかない」「こうやると成功する」ということを試行錯誤しながら学んでいるプロセスです。失敗させないようにと親が守るほど、子どもは学ぶことが少なくなります。「失敗から得ることもある」と教えるには、子どもにチャレンジさせることです。またあなた自身が小さな挑戦を重ね、前向きに頑張る姿を見せましょう。親は子どもにとって一番の手本でもあるからです。

9 いろいろな体験をさせていない

幼い頃から多様な体験をしておくことは、将来の夢につながる選択肢、自分探しのための選択肢を広げていく上で大切です。親が経験できる場を限定してしまうと、選択肢を狭めることにもなりかねません。子どもがやりたいことを見つけたり、好きなことに挑んだりできるように、遊びでも習い事でも何でも、さまざまなことをさせましょう。多様な体験をさせてくれる園や団体を探すのもよいと思います。

「考えさせる会話」が子どもの才能を伸ばす!

子どもたちが生きていく社会は、価値観も生き方も今より一層多様になっていきます。また環境問題や世界情勢を考えると、必ずしも希望ばかりとは言えないのも事実です。これからの子育てでは、そうした時代を生きていけるよう、感性の豊かな子、自分で考えることができて他者の考えも受容できる子、柔軟に思考できる子に育てることが大事です。

そのためにも子どもに発言させ、ともに考える会話を意識しましょう。ポイントは「聞く、共感する、考えさせる、励ます」の「KKKH」です。子どもが話してきたら、「どうしてそう思うの?」(聞く)、「へえ、なるほどね~」(共感)、「でも、こういう時はどうするの? どうしたらいいと思う?」(考えさせる)、「そうだね。○○ちゃんはおもしろい発想をするね。やってみようか!」(励ます)のパターンで会話することを、ぜひ習慣にしてください。

子どもはもとから豊かな可能性、才能をもっています。何歳であっても信頼されて任されれば大人顔負けの力を発揮します。それを抑圧しないよう、紹介した9つの行動に気をつけながら、「がんばってやればできる」という自己への深い信頼や、自分も相手も尊重できる力を育てていきましょう。

汐見稔幸(しおみ・としゆき)

2018年3月まで白梅学園大学・同短期大学学長を務める。東京大学名誉教授、日本保育学会会長、全国保育士養成協議会会長、白梅学園大学名誉学長、社会保障審議会児童部会保育専門委員会委員長、一般社団法人家族・保育デザイン研究所代表理事。

汐見稔幸

汐見稔幸

2018年3月まで白梅学園大学・同短期大学学長を務める。東京大学名誉教授、日本保育学会会長、全国保育士養成協議会会長、白梅学園大学名誉学長、社会保障審議会児童部会保育専門委員会委員長、一般社団法人家族・保育デザイン研究所代表理事。