「ゲームは時間の無駄」の小籔千豊にWii Uを買わせた娘の予想外な行動

小籔千豊(お笑い芸人)

子どもがゲームをすることに対して、あまり良いイメージを持てない親は多いでしょう。小籔千豊さんの家庭も例外ではなく、両親ともに「ゲーム反対派」だったといいます。

ところが、幼稚園生の娘の誕生日が間近に迫ったある日、小籔家の「鉄の掟」を揺るがす事件が起こります。

※本稿は、小籔千豊著「ゲーム反対派の僕が2年で4000時間もゲームをするようになった理由」(辰巳出版)より、一部抜粋・編集したものです。

「ゲームは時間の無駄」に至った理由

僕はゲームっ子でした。20代後半あたり、特に結婚してからはゲームをあまりやらなくなりましたが、子供の頃は無茶苦茶やっていました。

ファミコン、ディスクシステム、ファミリーベーシック、ゲームボーイ、スーファミ、プレステ、セガサターン……全部持っていました。

漫才師になってネタを書かなければいけなくなった時にRPGはヤメましたが、スポーツゲームとシミュレーション系はダラダラと続けていました。でも、ある日ふと思ったんです。

「ゲームをやっていても、何にもならない」 と。

ゲームする時間があるなら、飲みに行くかネタを書こう。芸人の本業にもっと時間を割こう。

振り返れば、今まで何時間ゲームに費やしてきたのか。あの時間を読書や勉強に回していれば、どれほど有意義だっただろうか。そんな僕の後悔から、うちの子は『ゲーム禁止』になったのです。

ゲームが家にやってきた


イラスト:レイザーラモンHG

娘の誕生日が近くなったある日。家に帰ったら「パパに話あるんちゃうん?」と、嫁が娘に促しました。

僕は嫌な予感がしました。僕の足元にちょこんと正座し、かしこまった姿の娘を見て、その予感は確信に変わりました。

「誕生日、Wii Uが欲しいねんけど……あかん?」

僕は「えー」「うーん」と言いながら、どうやって断ろうか考えました。その間にも娘は、

「Wii Uはな、みんなでできるねん」
「パパも一緒にできるしママと3人でもできるねん」
「お友達のお家でやった時めっちゃ楽しかってん」

と、僕へのプレゼン用に考えたであろうWii Uの良さを、矢継ぎ早にまくしたててきます。

嫁からも「パパにちゃんとお願いしたら?」と言われていたんでしょう。子供の口からは普段あんまり聞かない「お願いします」というセリフも飛び出し、僕は大変困りました。

「ちょっと、調べてみようか」

あくまで断る口実を探すために、パソコンでWii Uを検索しました。本体価格が2万円を超えているのを見て、僕は勝利を確信しました。

「幼稚園の子のプレゼントで、2万円は高いなぁ」

本来であれば、その一言でこの話は終わり……のはずが、娘はすっくと立ち上がり玄関にダッシュしました。娘は郵便ポスト形の大きな貯金箱を抱えて戻ってくると、僕の目の前でそれをひっくり返しました。

その貯金箱は本来嫁がインテリア目的で買った置物で、嫁のお義父さんが冗談で「通行料や」と500円玉を入れてから娘が遊び感覚で使うようになったモノでした。

僕もたまに「ここ通るならお金入れてください」と娘に言われていましたが、お義父さんお義母さんは家に来る度に通行料を払わされていたんでしょう。2人がいかによく家に来てくれていたのかがわかるほど、大量の小銭があたり一面に散らばりました。

「お金足らへんかったら、これ全部使っていいよ」

娘は「お前、地球救うんか」と思うくらい決意に満ちた目で、真っ直ぐ僕を見つめてきました。

その頃はバイトもやめていたので、金銭的な問題はありませんでした。これが天体望遠鏡だったら、5万円でも買い与えていたことでしょう。でも、ゲームは大反対。大反対だけど、娘の決意は固い。

僕は助けを求めて、嫁をチラッと見ました。嫁は「あんたら2人で話し合え」と言いたげな顔していました。

娘はアルマゲドンのスペースシャトルの乗組員みたいな顔でこちらを見上げています。頭の中でエアロスミスが聞こえてきて……。

僕は娘の誕生日にWii Uを買いました。

そんなこんなで我が家は子供用のゲーム機が普通にある家庭になりました。そして息子が生まれました。ゲームをやる娘や僕を見て育ったおかげで、自ずと息子もゲーム好きになりました。

 

子供の将来にゲームは必要ない

ただ、僕の中には一抹の不安がありました。このままの流れで行くと、いつか息子がゲームに没頭しすぎる日が来るかもしれない、と。

その時、我が家には『ゲームは平日1時間だけ』という厳しいルールがありました。休みの日に息子がゲームをしようものなら「晴れてんねんから公園行っといで」と嫁が言い、僕もその光景を当然のものとして見守っていました。

ゲームは反対。この姿勢を崩さないことが、子供の将来のためになる。そう信じて疑わなかったのです。

【著者紹介】小籔千豊(こやぶ・かずとよ)
吉本興業所属のお笑い芸人。1973年生まれ。吉本新喜劇の座長を15年以上にわたり務める傍ら、俳優やバンド活動など多方面で活躍する。フォートナイトというオンラインゲームにハマり、「フォートナイト下手くそおじさん」としてゲームYouTuber活動も始めた。「姫」はYouTube配信中の小籔さんの愛称として知られている。

ゲーム反対派の僕が2年で4000時間もゲームをするようになった理由(辰巳出版)
お笑い芸人の小籔千豊さんは、息子からのススメでオンラインゲーム『フォートナイト』を始めます。子どもに引き込まれ飛び込んだゲームを通じて、小籔家には「嬉しい変化」が起こったといいます。