幼少期の英語教育のデメリットはある? 幼稚園で「英検準2級」レベルをクリアする子も

船津洋(児童英語研究所代表取締役所長)
2023.10.11 11:05 2023.02.01 19:13

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小学校でも英語の授業が導入されている昨今だが、それ以前の幼少期に行う英語の早期教育については未だ賛否両論がある。実際のところ、早期教育の効果やデメリットがあるのかないのか気になる親は多いだろう。

そこで、30年以上にわたって幼児から小学生の英語教育に携わり、多くのバイリンガルを育ててきた船津洋氏に、子どもの早期教育の効果や悪影響について、そして子どもが正しく英語力を身につけるにあたってのポイントなどを聞いた。

※本稿は船津 洋著『10万組の親子が学んだ 子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)より、一部を抜粋編集したものです。

早期教育には悪影響やデメリットがある?

「小さい頃に英語を教えると日本語の発達に支障が出る?」

そんな質問を受けることがあります。

子どもの将来のため、早期教育による悪影響があるのかないのかを知りたい、また効果があるのかを知りたいと思う親御さんは多いでしょう。

結論から言いますと、よほど歪んだ環境を作らなければ、英語の早期教育による悪影響はありません。また、正しい学び方をすれば効果は大いにあります。

歪んだ環境というのは、たとえばバイリンガルでない両親がともに片言の英語で語りかけたり、英語漬けの環境を与える、あるいは、インターナショナルスクールに通わせて、あとは任せっきりといった環境です。

極端な例ですが、四六時中英語のビデオを流しっぱなし、母親も父親も片言の英語で話しかけ続けた結果、幼稚園に入園する段になって、英語どころか日本語すら身についていない、いわゆるセミリンガルになってしまったケースもあります。

ですから、日本語の発達を促す「日本語の入力」のためにも、ご両親は日本語で話しかけることを強くお勧めします。

国際結婚の夫婦である場合は、どちらかの言語(たとえば英語)のみでなく、せめて片方の親は日本語で話しかけるようにするといいでしょう。
ベースは日本語で話しかけ、プラスαで英語教育をすれば、日本語の発達に影響が出ることはありません。

また、昨今の日本人の日本語の能力、コミュニケーション能力や表現力の低さを英語教育に帰する人がいますが、それは英語教育ではなく、国語教育の問題です。

しっかりと日本語教育を行い、その上で英語教育を行えば、日本語に優れ、さらに英語ができるバイリンガルに育ちます。

幼少期に英語を身につけても忘れてしまう?

次に、早期教育の効果について考えてみましょう。

「小さいころに海外で育ったのに、すっかり英語を忘れてしまった」という帰国子女もいるため、「小さいころに英語を身につけてもムダ」という意見を目にすることがあります。

しかし、これについては、”読解力”を身につけることで、子どもの頃に身につけた英語力を維持できることがわかっています。

たとえば、こんな相談を受けたことがあります。そのご家庭では、幼少期に海外で生活をしていた姉弟がいました。2人ともバイリンガルに育っていました。

お姉ちゃんが小2、下の子がキンダー(幼稚園児)のときに日本に戻ってきたのですが、帰国から1年たっても姉の方は英語を話すことができたのに対し、弟の方はすっかり英語を忘れてしまっていました。これに似たような事例はいくつも耳にします。

一体、弟の英語に何が起きたのでしょう。

その答えは単純明快。両者における「読解力」の有無の差です。

帰国時、お姉ちゃんは小学生だったので、英語が読めました。一方の弟君はというと、キンダーだったので、まだ英語を読めなかったのです。そして、その「読解力」の有無が2人の「英語力」のサバイバルの差を決定づけてしまったのです。

下の子には気の毒ですが、ちょうど微妙な時期に帰国となってしまったのでしょう。

幼児期に身につけたことばは「音声」というぼんやりとした存在です。ところが文字という「音声を記号化するシステム」を理解すると、ぼんやりしていた音が文字記号へきっちりとカテゴライズされます。

つまり、音声言語が文字言語でも理解できるようになると、頭の中でしっかりと整理整頓されて、消えない英語力になるのです。それを支えるのが、読解力というわけです。

具体的に、どのくらいの読解力を持っていれば「消えない英語力」となるのでしょう。私は「英検準2級」レベルだと考えています。

幼児期に身につけた英語は、英検準2級レベルの読解力まで育ててしまう。ここまでが私が提唱する1つのゴールです。

幼少期から英語を学んでいても中学受験などで中断することがありますので、消えてしまわない英語力に育てるためにも、小学生の間に英検準2級を取得することを当面の目標にしておくといいでしょう。

日本でネイティブレベルの英語力を身につけるには?

たとえ海外暮らしをしなくても、日本にいながらネイティブのような英語力を身につけることは可能です。

正しい方法で吸収力のある幼少期に英語を身につけてきた子どもの中には、幼稚園のうちに「英検準2級」レベルをクリアする子もいます。これは、同年代のネイティブの英語話者よりはるかに優れた英語力です。

ネイティブより優れた英語力。幼児期の英語教育の威力はスゴいのです。

日本で英語を身につける際に、幼児でも大人でも大事なポイントとなるのは、とにかく最初の「大量インプット」です。

「リスニングで英語音声の大量入力」をし、「英語をある程度聞いて理解できる」ようになった後に、「リーディングで英語の読解力」を育てます。

この順番が非常に大切です。

考えてみると、従来の日本の英語教育は「大量の入力」を行わず、しかも本来英語を使いこなすには必要度が低い文法や和訳の学習に費やされていました。そのために、「中学・高校と6年間も英語を学んだのに、まったく身についていない」という人も多いのではないでしょうか。

さらに最近では、文法教育偏重への反省からか、ただでさえ「インプット」が少ないところに英会話という「アウトプット」の要素まで入ってくるのです。それも30人いる生徒1人ひとりに先生が割ける時間を考えれば、ほとんど「インプット」にはつながっていないことは自明でしょう。

いかに日本では、英語の「インプット」という考え方が欠けているかがわかると思います。

年齢ごとに適したインプット方法などについては拙著『10万組の親子が学んだ 子どもの英語「超効率」勉強法』にもまとめていますので、興味のあるかたはぜひ参考になさってください。

最後に、「小さいころに無理に勉強させるのはかわいそう」なのかどうかについても言及しておきましょう。

私たちは、「無理に勉強して」日本語を覚えたでしょうか? 日常的に交わされる会話などを聞いて覚え、自然に理解してきたのではないでしょうか。

英語もこれと同じで、幼少期であれば本人の意思や努力は必要なく、英語のかけ流しや暗唱などで自然に身につけることができます。小さければ小さいほど、苦労をせずに外国語を身につけることができるのです。

幼児期は、非常に優れた「言語獲得能力」を持っています。この黄金期を逃す手はありません。ぜひ、正しい英語の早期教育の機会をみなさんのお子さんにも与えてあげてください。

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船津洋

船津洋

1965年生まれ。東京都出身。株式会社児童英語研究所代表取締役所長。上智大学外国語学部英語学科卒業(言語学専攻)。右脳教育の第一人者・七田眞氏に師事し、同氏が設立した児童英語研究所に入社。以来30年以上にわたり、幼児教室や通信教育などの教務を通じて子どもの英語教育と発達研究に携わる。特に、自身が開発した「パルキッズ」は音声を入り口にした英語インプット教材として、6万本を超えるヒット商品となった。
著書に10万部超えのベストセラーとなった『たった「80単語」!読むだけで「英語脳」になる本』(三笠書房)のほか、『どんな子でもバイリンガルに育つ魔法のメソッド』(総合法令出版)、『ローマ字で読むな!』『英語の絶対音感トレーニング』(以上フォレスト出版)など多数。