「英語が得意な子」の親が家庭でしていること

関正生(「スタディサプリ」人気No.1英語講師)

<<中高生から社会人まで実にたくさんの日本人に英語を教えてきた人気講師・関 正生氏によると、子どもの英語教育のうえで最も大切なことは、”英語を嫌いにさせないこと”だそうです。
ですが、「英語を好きになりなさい」と言って好きになるものではありませんし、無理に押し付ければ逆に嫌いになってしまうことも。

では、子どもに英語を覚えさせたいならどうすればいいでしょうか? 家庭で保護者ができる効果的な働きかけを教えてもらいます。>>

※本記事は『子どもの英語力は家で伸ばす 本物の英語が身につく最強の家庭学習法』(かんき出版)より一部を抜粋編集したものです。

子どもの言う「つまらない」の真の意味は?

最初は英語学習を楽しそうにしていた子どもでも、単調なパターンや暗記が増えてきて、少し飽きてきたり壁を感じたりすることもあるようです。子どもが英語を「つまらない」と言ったときに保護者ができることとはなんでしょう。

子どもは勉強に対してマイナスの感情をすべて「つまらない」という一言でまとめがちです。ですからその子の「つまらない」が一体「何を原因としているのか?」「どうつまらないのか?」を考えてみることが大事です。

間違っても「つまらない」という言葉に反応して、「楽しむ姿勢が大事」などと言ったり、「面白い教材ならいいのか」と短絡的に考えたりしてはいけません。

たとえるなら、病院で患者が「なんかだるい」と言っているのと同じです。みなさんが医者だとすると、お腹の不調なのか、頭痛なのか、疲れなのかなどを判断して、適切な薬を処方しないとなりません。実は単なるストレスなのに、胃薬を処方してしまっては治るものも治りませんよね。

さて、子どもが「つまらない」と言うときは、英語に対するモチベーションが下がったときです。その大きな原因としては、以下の2つがあります。

原因(1) やったのに上達しない
原因(2) 教材が面白くない

では、それぞれに対してどう対処すべきかお伝えしましょう。 

結果が出るまでに時間がかかると腹をくくるには

「なかなかできるようにならない」という悩みは、子どもだけでなく大人にも当てはまりますよね。なぜか誰しも「そこそこの時間で結果が出る」と考えがちなのですが、残念ながらそれは完全な幻想です。

そもそも言語の習得には膨大な時間がかかるのです。この事実を肝に銘じているかどうかが非常に重要です。

「結果が出るのに時間がかかる」と最初から腹をくくっていることで、「キレにくくなる」からです。では、どうやって子どもに納得させればいいのでしょうか。間違っても頭ごなしに「時間がかかる」とだけ連呼してはいけません。

大人なら、「禁酒やダイエットと同じ」とたとえることができますが、子どもはそうではありません。そこでもしお子さんに習い事などの経験があれば、ぜひそれを利用して、リアルに、かつ具体的に説明してあげてください。

ピアノでも、最初はまったく指が動かず、たどたどしく弾いていたはずです。サッカーでも、リフティングは2回しかできなかったはずです。それが10回できるようになるまで、どれだけの練習と時間が必要だったのかを思い出させてください。

もっと身近なことでもOKです。ゲームでボスを倒すまでにどれだけの時間を要したか、何回チャレンジしたかという話でも、「あ、そうか」となるものです。

世の中のあらゆることが、習得するのに時間がかかるものなのだということを、その子にとって一番リアルに感じられることで伝えてあげてください。

また、子育てを経験したみなさんならご存知だと思いますが、赤ちゃんが日本語を覚えて話すまでには、大変な奮闘があります。親が話す言葉を真剣に聞き、表情を観察し、「ママ・パパ」が言えるまでに1年を要し、その後も「2語文が出る」までかなりの時間がかかる。

さらに幼稚園、小学校に入った後も、ひとつひとつ日本語を覚えては、使い方を間違え、恥をかき、周囲の大人に笑われながら、日本語を身につけてきたのです。

そもそも母語と外国語の習得プロセスは学問レベルで異なるのですが、それを置いておいても、日本人が日本語を習得するまでに膨大な時間を使い、無数の失敗を繰り返していることを考えれば、英語の習得にも「時間がかかるのが当たり前」なのです。

なかなか身につかないのは、おかしなことではなく、当たり前のこと。これを納得しているかしていないかで、英語学習への取り組み方は大きく違ってくるでしょう。

ただし、このことを教える際には、「今できるようになったこと」も再確認させてあげてください。それだけでも十分な時間と努力を費やしたことを、言葉だけでなく、カレンダーを見ながら、文字に書いて認識させてあげると納得してもらいやすいでしょう。

教材が面白くない場合の3つのアプローチ

次に、教材が面白くない、という問題を考えてみましょう。

教科書の内容に面白いものはあまり期待できませんよね。大型書店には「日本の漫画の英訳版」があるので、まずはそれを試してみてください。かなりの数の漫画が英訳されていますから、必ずお子さんの好きなマンガがあるはずです。

ただし、このマンガの英訳版でうまくいくのは4人に1人くらいです。なぜかというと、マンガの英訳とはいえ、使われている英語がかなり難しいこと、そしてそのマンガを日本語でも読める以上、あえて英語で読もうとは思えない子も多いからです。

とはいえ、試してみる価値はあります。少し割高ですが、あくまで「本の範囲の値段」なので、まずは1冊だけ一緒に書店で選んでみてください。

マンガが響かなければ、アプローチを変えます。特に停滞期に入っているために「つまらない」というお子さんには、英語を始めるきっかけとなったこと・最初に目標にしたことを思い出させてあげることが大事です。

人間は「初心を忘れる」生き物です。定期的に思い出させてあげるのは親の大事な役目です。最初のころの気持ちを思い出してヤル気になるのは大人も子供も同じです。

その際注意すべきことは、「説教っぽく話さないこと」と「具体的に思い出させてあげること」です。楽しい思い出話のノリで初心を思い出させてあげてください。

これでも効果がないときは、子どものヒーロー・ヒロインを利用します。従来から、福沢諭吉や新渡戸稲造などの苦労話はよく使われていますが、残念ながら小中学生にはあまりウケません。

ところが今は、多くの有名人が英語を使っていたり、勉強中だったりしますので、その事実を教えてあげるのです。できればネットで動画を探して、一緒に見てみましょう。

たとえば、サッカーの本田圭佑選手が英語を話している動画を見せてあげてください。特に「ACミランでの入団記者会見」では、明確かつユーモアも交えて記者の笑いも誘い、世界に出る日本人として素晴らしい姿を見せてくれています。

他にも、テニスの錦織圭選手や、フィギュアスケートの選手、メジャーリーガーなど、最近の子どものヒーロー・ヒロインは英語を使っています。

スポーツ選手以外でも、アイドルや俳優で英語の勉強をしている人は増えています(私のところにも芸能関係者から指導の依頼がくるくらいです)。憧れの人が英語を話す姿には、必ず感銘を受けるはずです。

気になったらすぐに辞書を引く習慣をつけるために

さて、もうひとつ保護者の方々が家でできる物理的な工夫をご紹介しましょう。それは、家中に辞書を置くことです。

そもそも、人間の脳はモノを忘れるようにできています。ですから、勉強においても、覚えたことを忘れてしまうのは当然のこと。お子さんが忘れても絶対に責めない、そして「それが当たり前だから、また覚えよう」という自然な姿勢で接してあげてください。

忘れるのが当たり前だからこそ、何度も辞書を引くことが大事になります。その時に気を付けてほしいことは「すぐ引く」ということです。「え、なんだろう?」と思った瞬間が一番脳に入りやすいからです。

そのためには、必ず手の届くところに辞書を置いてください。1部屋に必ず1冊置いてほしいのです。「え、隣の部屋に取りに行けばいいじゃん」と思っても、そこに行くまでに目に入った別のモノに興味を奪われてしまうのが子どもなのです。

勉強部屋はもちろんですが、ここで大事なのは、リビングに置くことです。テレビを見ているときに気になった言葉をすぐに調べる習慣は、お子さんの語彙力だけでなく、「勉強に対する瞬発力」を鍛えます。

ちなみに、紙の辞書と電子辞書、どちらがいいかという質問もよく受けますが、結論としてはどちらでもかまいません。「辞書を引くこと」自体が大事なので、こだわる必要はありません。

私個人は大人には電子辞書を勧めていますが、小中学生の間は紙の辞書がいいと思います。
各部屋に置くために何冊も必要ですし、いずれ電子辞書は必ず使うでしょうから、今のうちでないと紙の辞書のメリットを体感できないですし、紙の辞書は選択肢が豊富だからです。

同じ辞書を何冊もそろえるか、はたまた色々な辞書を使うかはお子さんの好みでかまいません。

「すぐ調べる」というと、スマホが浮かぶかもしれませんが、私は大反対です。やはりスマホは別の誘惑が多すぎます。調べたついでにちょっとゲームのつもりが、気が付くと1時間経過……といったようなことが大人でもあると思います。

「勉強中にスマホに触らない」というのは、今後、中学・高校に入ってからとても大きな財産になりますので、このケジメだけは死守することをお勧めします。


子どもの英語力は家で伸ばす 本物の英語が身につく最強の家庭学習法
リクルート「スタディサプリ」で、1年間で40万人を「丸暗記英語」から解放している大人気講師、関正生先生による渾身の一冊。