英語の幼児教育は両刃の剣? カリスマ講師が考える最適年齢とは

関正生(「スタディサプリ」人気No.1英語講師)
2023.10.11 11:14 2023.02.01 19:18

勉強する子ども

2018年より小学校の英語教育改革がスタート。これからの時代、さらなるグローバル化は必至ですし、小さなお子さんを持つ保護者の方々は子どもたちの英語力を伸ばしてあげたいと考えていることでしょう。

ですが、「とにかく早く始めたほうがいいの?」「留学はしなければいけない?」など疑問や悩みは尽きないもの。そんな疑問をズバリ解決すべく、「神授業」でおなじみのカリスマ講師・関正生氏に聞きました。

※本記事は『子どもの英語力は家で伸ばす 本物の英語が身につく最強の家庭学習法』(かんき出版)より一部を抜粋編集したものです。

親の三大疑問に厳選してお答えします

子どもには英語力をつけてほしい、保護者のみなさんのほとんどがそう願っているのではないでしょうか。

ですが、情報はたくさんあふれているものの、どうすれば英語力をつけられるのか結局のところわからない、という声も多く聞かれます。
いよいよスタートした小学校の教育改革についても不安と期待の両方をお持ちでしょう。

長年、英語を教え続けてきた私も、これまでに実に多くのお子さんや保護者の方々から質問を受けてきました。
その中でもズバ抜けて多い親の‟三大疑問“は、次のようなものです。

・早い時期から始めることが大切?
・留学はやっぱり必要?
・受験英語と実用英語は違う?

「長いこと疑問に思いつつ、誰にも答えてもらえなかった疑問」ばかりではないでしょうか。

今回は、これらの疑問に私なりにずばりお答えしたいと思います。

大切なのはスタート年齢ではなく、スタート後の取り組み
「やっぱり早期教育が大事? 何歳からはじめるべき?」

答えはNOです。無理に早い時期から始める必要はありません。

私は早期英語・幼児英語の専門家ではありません。しかし、現在では小学生(高学年)・中学生・高校生・大学生・社会人・シニアにまで実に数多くの人々に縦横無尽に使える本物の英語を教えています。

予備校で英語を教えていると、「この子は英語できるなあ」「英語のセンス、抜群だなあ」という生徒もいます。そういった子に話を聞いてみると、ほとんどが早期英語を体験していない子どもなのです。

実は私も、英語の勉強を始めたのは、中1の授業からです。
特別な英語教育などは受けておらずまったく普通の公立の中学生であり、現在からすればだいぶ遅いスタートということになります。

逆に、「小学校から英会話を習っていたり、海外に住んでいたりしたから、中学生くらいまでは得意だったけど、その後に坂を転がり落ちるように英語ができなくなった」という生徒はたくさんいます。これは私の20年以上、何万人もの人に英語を教えてきた経験から断言できます。

「でも、早く始めることはメリットこそあれ、デメリットはないでしょう?」と思うかもしれません。ですが、一概にそうとは言い切れないのです。

幼児用の英語教材は、日常的に英語に触れさせることで「英語への親しみ」ができることを強調しますが、これは「諸刃の剣」です。
慣れ親しみすぎて「飢え」がなくなり、英語への好奇心が薄れる可能性も十分あるからです。

たとえば、すぐに食事を出すのではなく、お腹をペコペコにさせてからの方が食事はおいしいもの。英語も同じように「おもしろそう」「やってみたい」と憧れる時期がしばらくあったほうがいいと私は考えています。

私自身も、小4のときに英語に興味を持ったものの中1になるまで英語を勉強することはなかったため、その分、英語への憧れは募り、英語の授業は非常に燃えました。

ですから、早期教育は必須ではありません。大事なのは、スタート時期よりもスタートしてからの取り組み方だと言えるでしょう。

留学すれば英語が必ず身につくわけではない

「留学しないと英語はペラペラになりませんか?」

これもNOです。留学しなくても英語はできますし、逆に留学してもできない人だっています。この問いに対しては、私には確固たるポリシーがあります。

私がNOと言い切る自信があるのは、私自身の経験からきています。中高と普通に英語を勉強し、大学受験で英語に困ることはありませんでした。
また、1ヶ月の短期留学の経験もないどころか、28歳まで海外旅行もしたことがなく、完全に日本だけで英語を習得したわけです。

世間にもこういった人はたくさんいます。超有名企業や外資系企業の第一線で活躍する人にたくさん会いましたが、「英語も仕事もできる」という人の大半は、留学を経験していません。
あくまでこれは私の主観が入るものの(そもそも客観的なデータなど出しようがありませんが)、これも1つの大事な情報だと思います。

ここまで読んで、「いや、私の知り合いは留学して英語がペラペラ」という人もいるでしょう。しかしそのペラペラが、実は小学生レベルの内容ということもよくあります。

また、相手の外国人がかなりレベルを下げてくれていることもあるのです(職業柄、カフェなどで英語が聞こえると、つい聞き耳を立ててしまいます)。

どうも、多くの人は留学経験者を甘く見積もりすぎている気がしますが、「あれだけ時間とお金をかけてその程度?」というのが私の本音です。

もちろん、時間・お金に余裕があり、治安などに不安がなければ留学するのもいいでしょう。ただし、留学すれば英語が必ず身につくわけではない、ということも知っておくべきだと思います。

受験英語は実践で使える。ただし丸暗記英語は使えない

「受験英語と実用英語は違うのでは?」

いえいえ、受験英語は実践で大いに役立つと言えます。ただし、丸暗記で乗り切ると、「受験英語は使えない」と文句を言うことになるのです。

過去数十年の全国の大学入試問題をほとんど解き、もちろん現在も研究し続けている立場から断言しますが、受験英語は役に立ちます。

「重箱の隅をつつく問題ばかり」「古臭い英文が出る」などと批判する人は、現在の入試問題を見ていません。
「ネイティブでも解けない問題がある」というのも、きちんと問題が解けないネイティブの方に問題があるのではないか、と疑いたくなります(もちろんたまには悪問もありますが)。

学生時代に徹底的に単語・文法・長文読解力を鍛えることは将来の成功のカギとなります。特に大きいのが、文法と長文読解の力です。

大人になって英会話を始めるとき、学生のときに勉強させられた英文法が、伸び悩みを解消してくれることは頻繁にあります。

また、長文読解の力は、大量の英文メールを読み込むときはもちろん、リスニングにも役立つのです。

リスニングができない原因の1つに、「そもそもスクリプト(リスニングで話される英文の原稿)を読んでもわからない」ということが驚くほどよくあります。英文を速く確実に読める力は、リスニングで英文を聞いた瞬間に意味を理解する力として、絶対に必要なのです。

安心して、そして全力で受験勉強に取り組んでください。

ですが、1つだけ注意点があります。それは「いくら受験勉強しても、それが丸暗記英語では、役に立たない」ということです。

「丸暗記」した英語は、受験が終わってから「丸忘れ」します。受験勉強を丸暗記で乗り切ると、その後必ず伸び悩むものです。

「受験英語は使えない」という声がありますが、それは「将来使えるような取り組み方をしていないから」なのです。

今後ますます受験英語軽視の風潮は高まっていくでしょう。大学入試自体も緩くなっていくでしょう。
今後の入試はリスニングやスピーキングが重視されるようになっていくので大変だと思う人が多いのですが、その結果、文法の深い知識がないがしろにされ、難しい英文に取り組む機会も減るはずです。

そんな中でも、世間の雑音(英文法や長文は古臭い、リスニングやスピーキングこそ英語だ、という雑音)に負けず、しっかりとした文法力・読解力を磨くかどうかが、将来本当に役立つ英語が身につくかどうかの違いになると、私は考えています。

子どもの英語力は家で伸ばす 本物の英語が身につく最強の家庭学習法
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リクルート「スタディサプリ」で、1年間で40万人を「丸暗記英語」から解放している大人気講師、関正生先生による渾身の一冊。

関正生

関正生

1975年7月3日 東京生まれ。埼玉県立浦和高校、慶応義塾大学文学部(英米文学専攻)卒業。TOEICテスト990点満点取得。現在、リクルート運営のオンライン予備校「スタディサプリ」、TOEIC対策「スタディサプリEnglish」にて英語の授業を担当。予備校デビュー1年目から出講校舎すべてで、常に最多の受講者数・最速の締め切り講座数を記録。
著書に145万部突破の『世界一わかりやすい授業』など多数。