英語が苦手な親が、英語が得意な子を育てるための「4つの要素」

船津洋(児童英語研究所代表取締役所長)
2023.10.11 11:15 2023.02.01 19:20

英語を勉強する子と親

今年から、いよいよ小学校での英語教育が本格化。このように英語教育の重要性がますます高まる中、子どもにもっと小さいなうちから英語教育を受けさせたいという保護者も増えているだろう。親自身が英語を苦手としているのであれば、なおさらその思いも強くなるだろう。

だが、子どもが英語の得意な子として育っていために、「とりあえず英会話スクールに入れればいい」のだろうか。30年以上にわたって幼児から小学生の英語教育に携わり、多くのバイリンガルを育ててきた船津洋氏に幼児の英語教育について聞いた。

※本稿は船津 洋著『10万組の親子が学んだ 子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)より、一部を抜粋編集したものです。

アウトプットよりもインプットが先

言語学や脳科学の観点で見ても、やはり英語学習は早く始めれば始めるほど有利です。そして、そこにデメリットはほとんどありません。

ただ、「英語を覚えるには、まず英会話だろう」といきなり英会話スクールに子どもを入れるのはちょっと”待った”をかけたいところです。

「英語をアウトプットしないから英語が身につかない」と考え、実際に英語を話す機会を求めて英会話教室へ通うことは一見論理的な行動に思えます。

しかし、ここには大切なことが抜け落ちています。英語を身につけるには、まず英語を「受信」、つまり聞いて理解できるようになることが必要です。話すのはその後の課題です。

幼児は言葉を身につける際に、まずママやパパからのメッセージを受信できるようになります。その後、少しずつ発信が始まります。このように、順序としては、まずは受信(インプット)、その後に発信(アウトプット)の順なのです。

30年以上にわたって主に幼児から小学生の英語教育に携わり、言語学を学ぶ中で、「日本人の英語ができない理由」を探り続けた結果、私は1つの結論に到達しました。

それは、英語ができる人とできない人の違いは受信力、つまり「インプット」に成功しているか否かという、このたった一点に収まるということです。

ネイティブでない私たちが英語を「受信」できるようになるためには、留学生のように、1000時間とか2000時間の大量の英語にさらされることが必要です。

しかし英会話レッスンとは、主に限られた言い回しの学習をする「アウトプット」の練習ですし、週数時間程度の英会話では入力の量が決定的に入力の量が足りません。

またネイティブ講師とのレッスンでは、理解できれば “Yeah”, “No”, と応えれば事足りて、深みのある会話になりません。相手の英語を理解できなくても “maybe”, “I don’t know” と言っておけば、その場はそれで済んでしまうのです。

このように一見英会話が成立しているように見えて、表面的な言葉のやりとりに終始しているケースが少なくありません。英会話は出力にはなりますが、英語を身につけるための十分な入力は別に必要となります。

日本で英語圏のような環境を作るには

優先すべきは「発信力」よりも「受信力」。言語学でも、良質で大量の「インプット」こそが、言語獲得の最善の方法だと考えられています。

運良く幼児期に英語教育をスタートできるなら、英語圏に生まれた赤ちゃんが周囲の英語を耳にしながら英語を身につけていくような、あるいは留学生が英語漬けになることで英語を身につけるような、そんな環境を日本に居ながらにして人工的に作ってあげることが有効です。

そのためにもっとも効率的なのが、英語の音声を家庭内でBGMとしてかけ流す方法です(ちなみに、これは幼児期から小学校の低学年に適した方法で、中学年以降には向いていません)。

意味を教えたり、発音を無理に真似させてはいけません。意識した勉強では無く無意識の獲得を促すのです。意味を教えたり、発音を無理に真似させる必要はありません。まず大切なのは、ネイティブな英語の音声を自然にかけて生活の一部にし、それを「聞き流すこと」なのです。

集中して聞くのも悪くはありませんが、幼児期の母語言語獲得になぞらえると、赤ん坊は常に集中して周囲の会話を聞いているのではありません。彼らは、周囲の音声を意識せずに聞き流しているのです。

かけ流しの時間は、核家族に生まれた第一子が耳にする母語の音声量が大まかに言って1日90分相当の量なので、1日トータルで90分ほどでいいでしょう。ボリュームは控えめで、耳を傾ければ内容が聞こえるが、賑やかだと少し聞きにくい、そんな程度で十分です。

では、かけ流す音声の内容はどのようなものが良いのでしょうか。

やはりこれも赤ちゃんが育つ家庭環境から考えて、母親や父親と子どもが生活の中で自然に会話しているような「家庭内の英会話」の音声教材が最適です。

さまざまな英語教材がありますが、たとえば、インターネットなどで「Sesame street(セサミストリート)」などのアニメを検索し、音声だけかけ流すというのもいいでしょう。このアニメは家庭内会話がふんだんなので、かけ流しに適しています。

子どもは繰り返し見聞きするのが大好きですから、一定期間は繰り返しの入力がいいでしょう。しかし、一定期間を過ぎて脳が情報を吸収すると飽きてしまい、関心を示さなくなります。

子どもの脳はつねに新しい情報に関心を示すので、一定期間を過ぎると情報としてはマスターしてしまって関心を示さなくなりますし子どもは新しいものにも興味を示すので、1か月程度を目安に、新しい教材に入れかえるパターンを家庭内に作り出すといいでしょう。

船津洋

船津洋

1965年生まれ。東京都出身。株式会社児童英語研究所代表取締役所長。上智大学外国語学部英語学科卒業(言語学専攻)。右脳教育の第一人者・七田眞氏に師事し、同氏が設立した児童英語研究所に入社。以来30年以上にわたり、幼児教室や通信教育などの教務を通じて子どもの英語教育と発達研究に携わる。特に、自身が開発した「パルキッズ」は音声を入り口にした英語インプット教材として、6万本を超えるヒット商品となった。
著書に10万部超えのベストセラーとなった『たった「80単語」!読むだけで「英語脳」になる本』(三笠書房)のほか、『どんな子でもバイリンガルに育つ魔法のメソッド』(総合法令出版)、『ローマ字で読むな!』『英語の絶対音感トレーニング』(以上フォレスト出版)など多数。