親がガミガミ言うと、子どもはその後どうなる?

立石美津子(子育て本著者・講演家)
2023.10.13 10:56 2023.02.13 11:20

【3】言葉が育たなくなる

4歳を過ぎているのに「ほら、そろそろ、トイレに行きなさい!」と、子どもが行動する前に先走って注意する。「ママ、おしっこ!」「ママ、ジュース!」につい条件反射で行動してしまう。

こうなると、子どもはきちんと話さなくても周りの人間は察してくれると思うようになります。そして、幼稚園や学校でも先生に、「先生、おしっこ!」と叫ぶようになります。

園の先生は何を言わんとしているかわかっても、あえて「先生はおしっこではないですよ。おしっこがどうしたのですか?」と答えるようにしています。すると、「先生、トイレに行ってもいいですか」と言えるようになります。このようにすることで、相手に伝わるきちんとした文章で話せるようになり、言葉が増えていくのです。

子どもが行動する前に、こちらの都合でガミガミと注意するのをやめましょう。そして、「ママ、ジュース!」と言われても、「ママはジュースじゃないわよ。ジュースがどうしたの?」と聞き返し、「ジュースが飲みたい」と話すように教えていきましょう。

【4】自己肯定感がなくなる

遠くを見る子ども

子どもが生まれた瞬間は、「元気で生きていればそれでいい」と高望みはしなかったのに、”比べる病”に冒されて「あれもできない、これも不足だ」とないものねだりをしてしまいます。親からダメ出しされて、子どもは「よし! 頑張ろう」とは残念ながらなりません。

それどころか、一番理解してもらいたい親から、「どうしてみんなはできるのに、あなたはできないの」と言葉をかけ続けられることにより、「どうせ私(僕)はダメなんだ」と自己否定するようになってしまいます。
こうなると、子ども自身が”自分を受け入れられない、自分を好きになれない”状態になります。

子ども自身にも「常に人より優れていなくてはならない」という価値観が沁みつき、自己肯定感が低く、何を手に入れても満足できず、幸せを感じられない子になってしまうのです。

長い人生では、さまざまな試練が降りかかってきます。でも、「自分は大丈夫」という自己肯定感さえあれば、あきらめずに乗り越えることができます。

ガミガミ言わないために大切なこと

男の子と女性

あなたは子どもの小さな成長に、ちゃんと気づけていますか?

「いい子に育てたい」という思いで、周りの子やきょうだいと比較する”比べる病”に冒され、「あれもできない、これも不足だ」と感じると、どうしても叱る回数が多くなってしまいます。

「個性を大事にしましょう」と言われつつ、実際には平均体重、平均身長にはじまり、小学校に入学すればクラスの平均点と比べてどうかと評価する。また、今も平均年収、平均寿命など周りと比べられながら親自身も生きてきているので、そうなるのも仕方がないのかもしれませんね。

でも、我が子を他の子と比べると、成長は見えてきません。他の子と比べるための物差しは捨てて、我が子の過去と今を比べましょう。過去とは昨日と今日、1週間前と今、半年前と今、2年前と今でも構いません。たとえば、

●落ち着きがない子でも、半年前は病院の待合室でじっと座っていることができなかったけれども、今は5分くらいは座っていられる。
●偏食の子でも、赤ちゃんの頃はミルクしか飲んでいなかったのに、今は種類は少ないが、いろいろなものを食べている。
●昨日は弟の玩具を奪って泣かせていたが、今日は自分のお気に入りの玩具を貸してあげている。
●半年前は使った玩具を一切片づけなかったけれど、今は半分くらいは自分で片づけている。

などです。そして、それをちゃんと口にして、「1人で片づけられるようになって頑張っているね」などとほめましょう。子どもはダメ出しされるより意欲が出て、親の望んでいる行動をきっとしてくれます。

過度な要求をしない

あなたは何年生きていますか? 子どもはた人間として尊重し、人生の先輩として、ガミガミ言うのではなく「教える」姿勢をもちましょう。

●他の子と比べず、我が子の今と過去を比べる
●ダメ出しせずに、子どもの小さな成長をほめる
●子どもを尊重し、先輩として「教える」姿勢をもつ

立石美津子

立石美津子

著述家

20年間学習塾を経営、現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士

『一人でできる子が育つテキトーかあさんのすすめ』
『はずれ先生にあたったとき読む本』
『子どもも親も幸せになる発達障害の子の育て方』
『動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな』
など著書多数

『発達障害に生まれて(ノンフィクション)日本医学ジャーナリスト協会賞大賞受賞作』のモデル
オフィシャルブログ https://ameblo.jp/tateishi-mitsuko/