「10歳の壁」「13歳の壁」は逆転のチャンス! 子どもを伸ばす親の上手な接し方

清水克彦

10歳、13歳は勉強でつまづきやすい年齢。上手に乗り切り、壁を乗り越えチャンスに変えるためのコツをご紹介します。

※本稿は『頭のいい子が育つ10歳からの習慣』(PHP文庫)より一部抜粋・編集したものです。

「10歳の壁」と「13歳の壁」で親子関係は変化する

子育てには「10歳の壁」と「13歳の壁」があると言われます。

このうち、「10歳の壁」とは、小学4年生あたりから教科内容が難しくなり、算数などは慣れない文章題の増加によって、これまで計算は得意だった子がいきなりつまずいてしまう、そんな時期を意味します。

また、小学3年生にあたる9歳までは、年齢を言う際、「8つ、9つ」と「つ」の文字がつきましたが、10歳からはこの「つ」が取れます。

児童期から思春期へと向かうこの時期は、子どもが心身ともに大きく変わる過渡期ともいえる時期です。本当はまだ一緒にいたいのに、「パパと一緒じゃいや」とか「ママ、来ないで」などと言うようになって、親子関係が微妙に変化する現象が起きやすい時期でもあります。

一方、「13歳の壁」とは、小学校から中学校に進んだあと、新しい環境に適応できず、ますます難しくなる数学や本格化する英語の授業にもついていけなくなって、結果、勉強嫌いになったり不登校になる子が増えるという現象を指します。

文部科学省が、義務教育9年間の学制を見直し、現行の「6・3制」を弾力的に編成できる小中一貫校化の検討を進めている理由の1つは、こうした問題を解消したいと考えているからです。

さて、この「10歳の壁」と「13歳の壁」、その前後も含めますと、小学3年生から4年生、また、中学1年生から2年生あたりが要注意、ということになります。ただ、逆を言えば、これら2つの壁が立ちはだかる時期は、これまで勉強面で結果が出ていなかった子どもにとって、先行する優秀な同級生に追いつき逆転する絶好のチャンスと言うこともできるでしょう。

10歳の壁は、爽快感を体感させる

まず「10歳の壁」です。9歳までの脳は、驚くほど速く大量の知識を吸収し記憶します。動植物の名前を覚えたり、九九や漢字を丸暗記したりするには最適の年齢です。

それが10歳以降になると、丸暗記能力はしだいに低下し、逆に知識と知識を組み合わせて思考したり、経験を加味して物事を見たりするように変わっていきます。

詳しくはあとで述べますが、これまで結果が出ていない子どもの場合は、小学3年生までの基礎をもう一度、繰り返して勉強しておくことをおすすめします。

この段階ですと、まだ腕に覚えがあるパパやママなら算数や国語を教えることは可能ですし、夏休みや春休みを利用して塾などで基礎固めをさせるのも手かもしれません。勉強は、わかるようになると面白くなり、わからなくなると途端に苦痛に感じるものです。

算数で言えば、正確に速く計算するというだけでなく、紙に書かれた立体を見て断面図が想像できるかどうか、時間はかかっても、実際に冷蔵庫に入っている豆腐や野菜などを使って親子で遊び感覚でやってみる、あるいは、図形の面積を問う問題で、どのように考えればいいかとか、他に解き方はないかなど、親子で考えてみるのもいいでしょう。

国語の作文などもそうですが、頭の中で試行錯誤する面白さ、「あっ、これだ」とひらめいたときの爽快感を体感させておきたいものです。

パパやママは、子どもが答えを速く正確に出すこと、短い時間に文章をまとめることを望むのではなく、時間がかかっても、「あっ、そうか」と自分でわかること、そして、頭の中で、書き出しからまとめまで「ああだ、こうだ」と考えるプロセスを大切にしていただけたらと思います。

13歳の壁は、大人の子育て作戦

一方、「13歳の壁」は、大人の子育て作戦で乗り切りましょう。環境が変われば、新しい先生や友だちとの出会いがあります。部活動も本格化し、新鮮なことも多い反面、人間関係でモメたりするマイナス面も生じやすいものです。

そういう時期は、子どもの気持ちが安定し、安心して生活できるよう、これまで以上に会話を増やしたり、子どもの表情を観察するよう心がけてください。ただ、もう子どもを子ども扱いしないことが重要です。

「これからは、パパと男同士の会話をしよう。恋愛のことだって、ママに内緒で、パパの体験談を交えて相談に乗るから」

「おつき合いする人は多いほうがいいかもね。『恋多き女』と呼ばれたって、そっちのほうがいい男を見極められるじゃない? ママはそう思うな」

このように、恋愛話でも進路のことでも、子どもを大人扱いして、パパとママが同じ位置に立って会話をすることがコツです。

勉強面で言えば、第3の師匠を登場させていい時期です。どの塾で学ばせるか、家庭教師や個別指導塾がいいのか、子どもの適性を考えながら、親以外の誰かの下で鍛えてもらう機会を持たせるといいでしょう。

【著者紹介】清水克彦(政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師)
1962年、愛媛県生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。京都大学大学院博士課程在学中。文化放送の報道デスクを務めながら、執筆や講演を行なう。著書に、最新刊『男の子が力強く育つママの習慣』(PHP研究所)など多数。

頭のいい子が育つ10歳からの習慣 (PHP文庫)
「10歳はもう手遅れ」は大間違い! あとからグングン伸びるための生活習慣、生きる力と特技の磨き方、受験との向き合い方などを紹介。