男の子はママの理解を超越した生物

清水克彦

「男の子は手がかかる」といった話を耳にすることがあります。男の子の行動を理解することは難しいのでしょうか? そもそも母と息子は、近いようで実は遠い存在なのだと、政治・教育ジャーナリストの清水克彦氏は指摘します。

※本稿は『男の子が力強く育つママの習慣』(PHP文庫)より一部抜粋・編集したものです。

男の子はママの理解を超越した生物

ママにとって男の子を育てることは、突き詰めれば、自分とは違う生物とどこかで折り合いをつけながら、自立を促していく営みと言えるのではないかと思います。

「ドイツの劇作家、グラッペの言葉にこのようなものがあります。

「男が本当に好きなものは二つ。危険と遊びである」(ドイツの哲学者、ニーチェ)

「すべての女性は彼女の母親に似るようになる。それが女の悲劇だ。男は彼の母親のままにはならない。それが男の悲劇だ」(イギリスの劇作家、ワイルド)

これらの格言でもわかるように、女性と男性では大きく異なります。それは母親と息子という関係においても同じで、女性であるママにとって、男の子の行動そのものが奇怪に映るのは仕方がないことです。

女の子は、多くの場合、慎重です。ある行動をとることによって、その先にどんなことが待っているかを考えながら動きます。

たとえば、庭先できれいな蝶を見かけたとしても、「ひょっとしたら手を刺したりするのではないか」とか、「触ったら手を洗わなければいけなくなるのではないか」などと考え、すぐには触れようとしません。

ジャングルジムの上から飛び降りてみたいと考えても、「うまく降りられないとけがをするのではないか」とか、「他の子がやっているのを見てからにしよう」などといった心理が働いて、結局は、棒をつたわって降りてきたりします。

しかし、男の子には、「手が汚れるのでは?」とか「他の子の様子を見てからにしよう」といった発想はありません。蝶を捕まえたいから捕まえようとし、飛び降りたらどうなるか試してみたいから飛び降りるわけです。

そこは女の子とは決定的に違いますし、女の子の時代を生きて母親となったママともまったく異なります。

「上の女の子はこうじゃなかったし、私も小さい頃はこんなことはしなかった」

こうした経験や世界観は男の子には通用しません。ママが男の子を育てるうえで苦戦を強いられるのがしつけです。

しかし、幼児期や学童期の前半までは、大いに愛情を注ぎ、男の子が男の子らしくあることを受容していればOKです。しつけなど二の次で大丈夫です。

もちろん、いつまでも好き放題やらせておいてもいいというわけではありません。小学校に入学し、低学年から中学年に差しかかる頃になると、基本的なことは教え込んでおく必要に迫られます。次の5か条を見てください。

【男の子のしつけ方5か条】

・ガミガミと抑えつけても効果なし
・10回言ってダメなら11回言おう
・「今、ここで」を大切に
・「叱る」よりママの「お願い」が効果大
・できなかったことを叱るより、できたことをほめよう

電車やバスなど公共の場で騒いだ、脱いだ靴を散らかしっぱなしにしているなどの場合、「騒ぐのをやめなさい!」「ほらっ、靴!」などと親の力で抑えつけようとしても効果がありません。そのときは従ってもまた同じことをするのが男の子です。

一番の近道は「繰り返し言う」ことです。10回注意してもやめなければ11回言い、11回言ってもダメなら12回言いましょう。

「繰り返し言う」は「叱る」に勝ります。「なぜそうしてはいけないか」を説明しながら、穏やかに諭せば、そのうちできるようになります。

次の「今、ここで」もポイントです。男の子は「今」を楽しみながら生きています。そんな男の子に、「前にも何回も注意したよね?」や「これができないと将来困るよ」は理解できません。電車で騒いだ瞬間や靴を脱ぎ散らかした瞬間にきちんと注意することが大事です。

このほか、男の子には、「こうしてくれるとママは助かるんだけどな」といったお願い型、電車で騒がなかったときや靴を揃えた瞬間にほめるといった方法が効果的です。

【著者紹介】清水克彦(政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師)
1962年、愛媛県生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了。京都大学大学院博士課程在学中。文化放送の報道デスクを務めながら、執筆や講演を行なう。著書に、最新刊『男の子が力強く育つママの習慣』(PHP研究所)など多数。

男の子が力強く育つママの習慣(PHP文庫)
「孤独」を邪魔しない、「ほめる」より「一緒に喜ぶ」。ママにはわからない男の子の世界に触れつつ、力強く育つための方法を紹介。