子どもが荒れる原因と心を整える親の心得
子どもが荒れる時、そこには子どもなりの理由があります。どうすれば、健やかに育つのでしょうか。
※本稿は『PHPのびのび子育て』 2015年10月号より一部抜粋・編集したものです。
宮里六郎(熊本学園大学社会福祉学部名誉教授)
熊本学園大学社会福祉学部教授。1955年、鹿児島県生まれ。中央大学卒業後、東京学芸大学大学院修士課程修了。著書に『「荒れる子」「キレル子」と保育・子育て』『「子どもを真ん中に」を疑う』(以上、かもがわ出版)など。
安心感が充電できないと、子どもは荒れるのです
ここ数年、保育の現場では荒れたり、キレたりする子が増えています。
ある5歳の男の子は、保育士に向かって「ぶっ殺してやる。絶対に殺す。包丁持ってきて首を切る。あっち行け、山の上の誰もいないところへ行け」などと、幼児とは思えない乱暴な言葉づかいで、蹴る、ひっかく、たたく、つばをかけるのです。
しかも荒れてキレると同時に、異様なまでにベッタリと甘えてくるのです。
甘やかされたから我慢できなくて荒れているのではありません。受けとめてもらえそうな時はベッタリと甘え、受けとめてもらえなかったら反転して荒れるのです。
この理由のひとつには社会全体が、過保護という「甘やかし」をおそれるあまり、「安心感」を充電する「甘えさせ」までしなくなったからではないかと、私は考えます。
次から、荒れた子の事例をあげて、その原因や背景を考えてみます。
事例から見る心が荒れた子のキモチ
ここからの事例は、保育園で起きたほんの数例です。子どもが荒れる時、その背景にあるキモチをくみ取ってください。
保育園で友だちに乱暴するかいくん
(※写真はイメージです)
子どもは子どもなりに親を思い、わがままを我慢していますが、時には爆発したかのように荒れる姿を見せることもあります。
5歳のかいくんは、毎日保育園で夕飯を食べたあと、夜の8時にお母さんが迎えにきます。そのかいくんが、ある朝、ささいなことから友だちのようくんを殴ってしまいました。
いつもお迎えが早いようくんが、家からおもちゃを持ってきて見せびらかしたのが、かいくんとしては許せなかったようなのです(『子どもが心のかっとうを超えるとき』・平松知子著・ひとなる書房刊の事例より)。
園長先生が「お母さんもさ……」と状況を説明しようとした途端、「お母さんは仕事をがんばっているんじゃ。お母さんは悪くないんじゃーっ」と力をこめて叫びます。
最初の「お母さんは仕事をがんばっているんじゃー」は、わかってるけれども我慢できなかったんだ、そんなぼくの気持ちもわかってよ、という思いがあったのではないでしょうか。次の言葉を遮って「お母さんは悪くないんじゃーっ」と叫んだのは、自分がようくんを殴ったのをお母さんのせいにされたくないという、お母さんを思う心の叫びです。