「10歳になって言うことを聞かなくなる男の子」との上手な付き合い方
10歳を過ぎた男の子は、お母さんの言うことをなかなか素直に聞いてくれません。ひとりで頑張りすぎず、「任せ」ワザを上手に使いましょう!
※本稿は若松亜紀著『10歳からの男の子は「聞く」より「待つ」でうまくいく』(PHP研究所)より、抜粋・編集したものです。
若松亜紀(陽だまりサロンオーナー)
秋田大学教育学部卒業後、私立の幼稚園に7年間勤務。閉園により退職。その後、出産、子育てを経て2005年、自宅に子育てサロンをオープン。著書に『子どもが輝く幸せな子育て』(ほんの木)、『もう怒らない!これだけで子どもが変わる魔法の“ひと言”」(学陽書房)、共著に『「ほめ方」「叱り方」「しつけ方」に悩んだら読む本』(PHP研究所)などがある。
頼るのも才能!「任せ」ワザ
「も~! 脱いだ服は片づけてよ!」
「いい加減、さっさと動いたらどうなの!」
「便座のふたは閉めてよね、金運が逃げるっしょおぉぉ!」
朝から晩まで、毛穴からシューシュー蒸気が出るほど叫ぶ日々。カルシウム、足りてますか?
いったいオーバー10ボーイズは、なぜにこれほど母ちゃんを奮い立たせてくれるのでしょう。大口開かせてくれるんでしょう。顔動かして、シワ防げってことでしょうか。
そんなあなたにオススメなのが、ここでご紹介する「任せ」ワザです。あなた一人が、がんばらなくていいんです。信用できる誰かさんに、子どもをポンと「任せて待つ」。それだけです。
そしてその人に「脱いだら洗濯機」「ふた閉めろ」など、いつも言ってるあれこれを伝えてもらいましょう。私が小学5年生の頃、こんなことがありました。場面は運動会です。先生にそっと耳打ちされました。
「あの子たちに『そこに座っちゃいけないよ』って言ってきて」
見ると4年生の男の子が数人、とび箱に座っています。なんで先生、自分で言わないのかな~と思いつつ、その子たちに近づいて言いました。
「そこに座っちゃいけないよ」(←棒読み)
するとハッとした顔をして、「うん」とあっさり降りたのです。その後先生はにやりとして言いました。
「な?年上の言うことは聞くんだよ」
いやいや、先生のほうが目いっぱい年上でしょう!と突っ込む代わりに、自分なりに考えました。
ちょい年上の人から言われると効く。普段あまり接点のない人のほうが効く。
きれいなお姉さんの言うことは効く。そう結論づけました(←ホントかい!)。
「他人には 優しく会話 する息子」という川柳があります。母ちゃんには見せない顔を、人には見せるようです。だからたまには、誰かに言ってもらいましょ。あなたが手っ取り早く「任せ」られるのは、どなたですか?「だんなです」という声が聞こえたので、まずはだんなさんから。
パパの余裕があるときに、このようにお願いしてください。
「今日は半日、子どもを頼むわ。うり坊も大きくなって、私じゃ手に負えなくなってきたのよ。これからは、男親のあなたに話を聞いてもらえると助かるわ」
引き受けてもらえるかどうかは、そのときのスタンスにかかっています。 あくまでも「あなたが頼りなの」という心持ちで話してください、決して「あんたも親だろっ」といった高圧的な態度ではなく。わが家では10歳を過ぎてから、父&息子ペアの行動が急速に増えました。
釣りに行く、ツーリングする、スキーに行く、野球観戦するなどです。服や靴の買い物も、母の出番はめっきり減りました。「お母さんと行くと、あれは高い、これはチャラいってうるさいんだもん」とか。男の子のいるママ友だちも言います。
「お風呂はもう私とは入らない、お父さんと入る。あ、弟とは入るけど」
「私には言わないけど、だんなには好きな子のこと話してるみたい」
「『お母さんは囗うるさいからキライ。お父さんがいい』って、はっきり言われた」
どんどん”オトコ化”してくるお年頃。男同士だからこそ、わかり合える、理解し合える部分が増えるのでしょう。うちではたっぷり時間を共有したあと、「トイレのふた閉めろよ、公害だぞ、おまえの」とか、さらりと言うそうです。心配ならばもうひと押し、「言ってくれた?」とメールするとバッチリです。
また、おじいちゃん、おばあちゃんに「任せる」と、期待以上の働きをしてくれます。こちらからお願いしたことのほかに、「偉人のお話」や「心の話」などもしてくれるからです。親が言うと「ケッ」みたいな顔をされるその手の話も、じいちゃん、ばあちゃんは別なようです。
さすがは年の功です。祖父母は孫に甘いところもあります、日にアイスを3個も食べさせちゃったりします。けれどそうして100%受け入れてくれるから、子どもも聞き入れ態勢充分なのでしょう。私はこんな依頼もします。
・これから起り得ることを想像し、
・言ってほしいことを「先に」頼む。
お小遣いをくれそうなときは、「『勉強に使うものを買いなさい』って言って」と耳打ちします。進学祝い・入学祝いやお年玉など、大きいお金をくれるときは、「『半分は貯金しろ』って言って」とささやきます。
子どもが見ていて伝えにくければ、メモしてこっそり渡します。もうね、「貯金するよ」と言っても「ぼくのだ、ドロボー」ですもん。渡す際に言ってもらえると助かります、「ばあちゃんに言われたでしょ?」ですみますから。
同じ手で、「早く寝なさい」や「道具の手入れはしっかりせぃ」もいけました。祖父母が難しいなら?いとこや親戚、ご近所さんや気の合うママ友・パパ友を総動員、子育て応援団になってもらいましょう。
こちらは有料ですが、習い事の先生や師匠、コーチにも任せられます。キャンプ教室やカヌーなど、日だけの習い事、体験でもかまいません。
このときのポイントは、「子どもが」あこがれる人を選ぶことです、「あなたが」あこがれるお兄さんではなく。 すると”聞き入れ率”がど~んとはね上がります。
10歳を過ぎると、先生への批判や好き嫌いを言い出すでしょう?それは”人を見る目”ができつつある証拠。そのぶん、好きな大人を見つけられたラッキーです。喜んでその人に教わろうとします、だってそんな大人になりたいんですもの。
男の子が好きなのは、「強い」「速い」「かっこいい!」。新幹線も戦隊物もこれを満たしているからヒーローで、これを満たしているからマネします。だからそんな要素がひとつでもある大人がいたらめっけもの、スーッと言葉が浸透します。
え?「人に任せるのは気が引ける」ですと? 頼られるって嬉しいですよ。あなたもそうでしょ? 頼るのも才能! 頼った人の数だけ、太くでっかく育ちます!
10歳からの男の子は「聞く」より「待つ」でうまくいく(PHP研究所)
オーバー10ボーイズ真っ盛りの私の息子・ダイやその友人家族、また、幼稚園教諭、子育てサロン主宰者として関わったたくさんの親御さんのお話を伺い、リアル感満載で書き上げたもの。実生活ですぐに役立つ内容を、ぱつんぱつんに詰め込んでいます。あなたもゼッタイ、「聞く」より「待つ」でうまくいく!